」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
・:*:・'☆,・:*:・'★,・:*:・'☆,・:*:・'★,・:*:・'☆,・:*:・
・:*:・'★法的思考力を身につけて、★・:*:・'
・:*:・'★絶対合格行政書士!★・:*:・'
・:*:・'☆,・:*:・'★,・:*:・'☆,・:*:・'★,・:*:・'☆,・:*:・
」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
第26号
法的思考力をきっちりと身につけて、
2007年度行政書士試験の絶対合格を目指し
ましょう!
」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
◆もくじ
◇今日のコラム◇
◇今回の記述式例題◇
◇民法703条◇
◇転用物訴権◇
◇模範解答例◇
」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━★
★◇☆◇★ 今 日 の コ ラ ム ★◇☆◇★
★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━★
皆様、いかがお過ごしでしょうか。
本メルマガも500名を超える多くの方々にご登録いただき、誠にあ
りがとうございます。
執筆陣一同、今後とも、より一層内容の充実に努めていきたいもの
と存じますので何卒宜しくお願い申し上げます。
以下の本メルマガ姉妹ブログも、ご好評頂いており、合わせて感謝
申し上げます。
http://blog.livedoor.jp/houtekisikou2007/
(ブログ版「行政書士試験!法的思考力を身につけて、絶対合格!」)
このブログでも、憲法基礎理論や各種試験過去問解説等の情報の提供
をしておりますので、是非ご覧頂いただき、お楽しみいただければ幸い
にございます。
また、上記ブログの向かって左サイドバーLinksの部分より、判例
検索システムや法令データ提供システムにリンクしておりますので、
受験情報等の収集のみならず、法令や判例検索へのキーサイトとして
ご利用頂ければとも存じます。
さて、今回は、より一層の実践的法的思考力を養うために、以下の
民法の記述式問題を考えていきたいと思います。
★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━★
★◇☆◇★今回の記述式問題★◇☆◇★
★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━★
(民法記述式問題例題)
「AがBとの間の請負契約に基づき、Cが所有し、BがCから賃借してい
る建物(マンション)の一室のリフォーム工事をしたところ、その後Bが
無資力になったため、AのBに対する請負代金債権の全部又は一部が無価
値である場合に、これと民法703条の不当利得要件に加えて、さらにどの
ような要件のもとであれば、AがCに不当利得の返還を請求することがで
きるか。判例に照らし、40字程度で記述しなさい。」
(例題終わり)
今回も民法(不当利得)からの出題です。
一般に「転用物訴権」といわれる問題につき今回は取り上げておりま
す。
転用物訴権とは、
(以下、「民法 (2) 債権各論 内田貴著2002年 第17刷 東京大学出版
p540」より引用)
「契約上の給付が契約の相手方のみならず第三者の利益となった場合に、
給付をした契約当事者がその第三者に利得の返還を請求する権利」
(引用終わり)
のことをいうとされています。
さて、問題を見て、まずすべきことは、いつものとおり、複数の登場人
物間の関係を明らかにするために関係図を作成することです。
上記例題の関係図を下記に図示しておきますのでこれを参考にしながら
お考えいただければと思います。
(関係図)
賃借人B(中間者)←賃貸借契約→賃貸人C(受益者)
↑
建物リフォーム請負契約
↓
請負人A(給付者)
どのような要件のもとであれば、AはCに不当利得返還請求が
できるか?
(関係図終わり)
★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━★
★☆★民法703条★☆★
★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━★
本問に関わってくる民法の条文は以下です。
民法第703条
「法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために
他人に損失を及ぼした者(「受益者」という。)は、その利益の存する限
度において、これを返還する義務を負う。」
民法703条はいわゆる不当利得の返還義務に関する条文ですが、
この条文をもとに不当利得の要件を考えると以下のようになります。
1. 他人の財産又は労務によって利益を受けた。
2. そのために他人に損失を及ぼした。
3. 受益と損失との間に因果関係がある。
4. 法律上の原因がない。
Bが賃借していたCのマンションの一室は、Aの財産又は労務によって
確かに綺麗になっています。
(それによってCが利益を得たか否かはまた後で考えましょう。)
AはBが無資力となったために損失を被りかけています。
リフォーム契約をしたのは、ABですから、CはAに代金を支払う法律
上の原因ないし法律上の義務はありません。
このように見ると、本問事例は民法703条の要件に当てはまりそうな気も
するししないような気もするしという感じでしょうか・・。
本問につき最もポイントとなる点は、Aの財産又は労務によってCが利益
を得たかどうかだと思います。
無資力となったBとの賃貸借契約を解除してBを追い出した後のことを考
えると、Cの手元に残るのは、綺麗になったBに貸していた部屋ということ
になりますね。
リフォーム契約は、Bが勝手にAと締結したものであって、Cには関係な
いよ、だからCはAにリフォーム代金を払わないよということになれば、民
法703条上の不当利得の要件を満たすような気もします。
またそうした方が、AC間の関係における不公平感を払拭できるものだと
思います。
そうしなければ、Cは、部屋が綺麗になるわ、代金は払わなくていいわと
いうことになって濡れ手で粟状態であるのに対して、
Aは材料を負担し労務を提供して一所懸命リフォーム工事をしたにも関わら
ず、代金はBからもCからももらえない、
BやCが得しているのをただ指をくわえて見ているだけで、一方でAだけ大
損するということになり、不公平となるからです。
こんなことがまかり通る世の中では、がんばって真面目に働こうという気
がうせてきますね・・。
正当な努力した者は報われるという社会でないと世の中は必ず乱れますし、
経済も社会も発展しません。
ゆえに、不公平な制度は払拭し、公平な社会としなければならないわけで
す。
法というものの究極の目的はここにあり、そしてこれこそが正義というも
のであるのかもしれません。
★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━★
★☆★転用物訴権★☆★
★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━★
しかし、Cもいうほど得はしていない、逆に損しているということであれ
ばどうでしょうか?
誰が得して、誰が損して、誰が正当な努力をし、誰が努力をしていない
か、そして、公平なシステムとは何かとは、簡単には判断できず、詳細な
分析が必要となります。
ここら辺を、常識的感覚、直感的感覚や思いつきで簡単に判断してしま
うのが人間の悪いクセだと思うのですが^^;、少なくとも行政書士試験を
受けようと思っている方(ないし行政書士実務家)は、そのような態度で
はマズいということになります。
世で言われている常識を疑い、直感や思いつきで物事を適当に判断せず、
論理的に突き詰め、何がベストなシステムかを考えるという思考方法こそが
「法的思考様式」というものではないかと思います。
民法608条は、
「賃借人は、賃借物について賃貸人の負担に属する必要費を支出したときは、
賃貸人に対し、直ちにその償還を請求することができる。」
と規定しており、
Bのような賃借人は、賃貸人Cに対し、「部屋をリフォームしてあげたんだか
ら、大家さん、リフォーム代金払ってよね。」といえる権利(費用償還請求権)
があります。
Cの民法703条上の不当利得をあっさり認めて、
「だから、Cさん、Aさんにリフォーム代金払いなさいよ。」
としてしまうと、
CがAにリフォーム代金を払った後に、もし、CがBから費用償還請求権を
行使されると、
Cはリフォーム代金につき、二重に支払いをしなければならなくなってしま
います。
こうなると、今度は、ABは損しないけれども、Cだけ大損してしまうと
いう結果になり、これまた不公平となります。
また、BC間賃貸借契約において、費用償還請求権免除特約があったとし
ても、Bが、
「大家さん、部屋をリフォームしてあげたんだから、家賃まけてよね~。」
と言ってきたので、Cが何か月分かの家賃をまけてあげているような場合も、
不当利得だからいうことで、Aがさらにリフォーム代金の請求をCにするこ
とができるとなると、これまた、Cだけ損するということになります。
そこで判例(最判平7.9.19)は、
1.「Aが建物賃借人Bとの間の請負契約に基づき建物の修繕工事をしたとこ
ろ、その後Bが無資力になったため、AのBに対する請負代金債権の全部又
は一部が無価値である場合において、」
「当該建物の所有者Cが法律上の原因なくして当該修繕工事に要した財産及
び労務の提供に相当する利益を受けたということができるのは、」
2.「CとBとの間の賃貸借契約を全体としてみて、Cが対価関係なしに当該
利益を受けたときに限られるものと解するのが相当である。」
とする、民法703条に対する条文外要件を設定し、この問題(転用物訴権)
に関する調整を図りました。
上記要件2.については、具体的には、BC間の賃貸借契約の中で、Bの費
用償還請求権免除特約がない、あるいはリフォームしてくれたお礼に家賃を
まけてあげたというようなことがない場合のことを指すと考えればよいこと
でしょう。
つまり、上記条文外要件は、くだけた形で簡単にいうと、
1.Bがスッテンテン(無資力)になって、Aにリフォーム代金を払ってくれ
ず、
2.BC間賃貸借契約には費用償還請求権免除特約もなければ、CがBに対し
て家賃をまけてあげたということもない
という感じのことです。
民法703条及び上記1.2.の要件が満たされる場合に限って、転用物訴権は
認められます。
★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━★
★☆★模範解答例★☆★
★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━★
但し、本問は、上記要件1.については、問題文の方にあらかじめ要件(要
件事実)に該当する具体的事実として適示されており、「これと、民法703
条の不当利得要件に加えて」「さらにどのような要件」が必要かとなってい
るので、答案用紙に書かなければならない要件は上記2.の要件となります。
以上より、本問の結論として、模範解答例は以下のようになります。
「BC間契約を全体としてみて、Cが対価関係なしに利益を受けたのなら
AはCに請求ができる。」
なお、最高裁は、このような条文外要件を設定する理由として、
「けだし(なぜならという意味です)、CがBとの間の賃貸借契約において
何らかの形で当該利益に相応する出捐ないし負担をしたときは、Cの受けた
当該利益は法律上の原因に基づくものというべきであり、AがCに対して当
該利益につき不当利得としてその返還を請求することができるとするのは、
Cに二重の負担を強いる結果となるからである。」
と述べています。
判例の立場を「転用物訴権肯定説」といいますが、学説には、本事例のよ
うな場合、BC間の賃貸借契約がある以上、Cが利益に相応する出捐ないし
負担をしたしないに関わらず、Cの利益にはあくまでも法律上の原因がある
としてこの場合の不当利得請求ないし転用物訴権なるものを一切認めないと
いう説(転用物訴権否定説)があり、学説上はこちらの方(否定説)が通説
ないし有力説となっています。
この説は、契約上の債権を回収できないかもしれないというリスクはどの
契約にもつきものであり、Bが無資力となるかも知れないということは、契
約リスクとしてAが自ら引き受けるべきことであって、当該リスクを契約外
の第三者たるCに転嫁することは妥当ではない、
また、Bが無資力となった場合、Aは債権者代位権を行使してCに修理代金
を請求できるのだから、別に転用物訴権のような概念は必要ないだろう等と
いうことを理由としています。
しかし、債権者代位権の場合、債権者平等の原則に基づきAには優先弁済
権がないため、最終的な結論が具体的妥当性を欠く形になってしまいます。
これでは、先に述べたような実質的不公平を取り除くことができないため、
Aの優先弁済権を事実上保証する形になる判例の立場が妥当だとする、転用
物訴権肯定説からの反論もあります。
参考文献:
わかる行政書士予想問題集 法令編 平成19年版 (2007)
http://www.amazon.co.jp/dp/4789227189/ref=nosim/?tag=houtekisiko03-22
わかる行政書士法令編・要点整理 平成19年版 (2007)
http://www.amazon.co.jp/dp/4789227227/ref=nosim/?tag=houtekisiko03-22
民法 (2) 債権各論 内田 貴
http://www.amazon.co.jp/dp/4130323024/ref=nosim/?tag=houtekisiko03-22
伊藤真試験対策講座4 債権各論 伊藤 真
http://www.amazon.co.jp/dp/4335302606/ref=nosim/?tag=houtekisiko03-22
★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━★
」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
:*:・'☆,・:*:・'★,・:*:・'☆,・:*:・'★,・:*:・'☆,・:*:・''★,
・:*:・'★法的思考力を身につけて、★・:*:・'☆
・:*:・'★絶対合格行政書士!★・:*:・'☆
・:*:・'☆,・:*:・'★,・:*:・'☆,・:*:・'★,・:*:・'☆,・:*:・''
」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━★
http://www21.tok2.com/home/houtekisikou2007/knowledgesupply.htm
発行元:ナレッジ・サプライ
メールアドレス houtekisikou2007@aquarius.livedoor.com
ブログ http://blog.livedoor.jp/houtekisikou2007/
★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━★
--------------------------------------------------------
【注意】本メルマガの内容を無断で転写・複写・コピーすることをかたく
お断り致します。また、このメールマガジンの内容により損害を被った場
合でも、当方は一切の責任を負いません。予めご了承のほどお願い申し上
げます。
--------------------------------------------------------
下記をクリックお願いいたします。ランキングアップにご協力を!
人気blogランキングへ
・:*:・'☆,・:*:・'★,・:*:・'☆,・:*:・'★,・:*:・'☆,・:*:・
・:*:・'★法的思考力を身につけて、★・:*:・'
・:*:・'★絶対合格行政書士!★・:*:・'
・:*:・'☆,・:*:・'★,・:*:・'☆,・:*:・'★,・:*:・'☆,・:*:・
」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
第26号
法的思考力をきっちりと身につけて、
2007年度行政書士試験の絶対合格を目指し
ましょう!
」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
◆もくじ
◇今日のコラム◇
◇今回の記述式例題◇
◇民法703条◇
◇転用物訴権◇
◇模範解答例◇
」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━★
★◇☆◇★ 今 日 の コ ラ ム ★◇☆◇★
★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━★
皆様、いかがお過ごしでしょうか。
本メルマガも500名を超える多くの方々にご登録いただき、誠にあ
りがとうございます。
執筆陣一同、今後とも、より一層内容の充実に努めていきたいもの
と存じますので何卒宜しくお願い申し上げます。
以下の本メルマガ姉妹ブログも、ご好評頂いており、合わせて感謝
申し上げます。
http://blog.livedoor.jp/houtekisikou2007/
(ブログ版「行政書士試験!法的思考力を身につけて、絶対合格!」)
このブログでも、憲法基礎理論や各種試験過去問解説等の情報の提供
をしておりますので、是非ご覧頂いただき、お楽しみいただければ幸い
にございます。
また、上記ブログの向かって左サイドバーLinksの部分より、判例
検索システムや法令データ提供システムにリンクしておりますので、
受験情報等の収集のみならず、法令や判例検索へのキーサイトとして
ご利用頂ければとも存じます。
さて、今回は、より一層の実践的法的思考力を養うために、以下の
民法の記述式問題を考えていきたいと思います。
★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━★
★◇☆◇★今回の記述式問題★◇☆◇★
★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━★
(民法記述式問題例題)
「AがBとの間の請負契約に基づき、Cが所有し、BがCから賃借してい
る建物(マンション)の一室のリフォーム工事をしたところ、その後Bが
無資力になったため、AのBに対する請負代金債権の全部又は一部が無価
値である場合に、これと民法703条の不当利得要件に加えて、さらにどの
ような要件のもとであれば、AがCに不当利得の返還を請求することがで
きるか。判例に照らし、40字程度で記述しなさい。」
(例題終わり)
今回も民法(不当利得)からの出題です。
一般に「転用物訴権」といわれる問題につき今回は取り上げておりま
す。
転用物訴権とは、
(以下、「民法 (2) 債権各論 内田貴著2002年 第17刷 東京大学出版
p540」より引用)
「契約上の給付が契約の相手方のみならず第三者の利益となった場合に、
給付をした契約当事者がその第三者に利得の返還を請求する権利」
(引用終わり)
のことをいうとされています。
さて、問題を見て、まずすべきことは、いつものとおり、複数の登場人
物間の関係を明らかにするために関係図を作成することです。
上記例題の関係図を下記に図示しておきますのでこれを参考にしながら
お考えいただければと思います。
(関係図)
賃借人B(中間者)←賃貸借契約→賃貸人C(受益者)
↑
建物リフォーム請負契約
↓
請負人A(給付者)
どのような要件のもとであれば、AはCに不当利得返還請求が
できるか?
(関係図終わり)
★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━★
★☆★民法703条★☆★
★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━★
本問に関わってくる民法の条文は以下です。
民法第703条
「法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために
他人に損失を及ぼした者(「受益者」という。)は、その利益の存する限
度において、これを返還する義務を負う。」
民法703条はいわゆる不当利得の返還義務に関する条文ですが、
この条文をもとに不当利得の要件を考えると以下のようになります。
1. 他人の財産又は労務によって利益を受けた。
2. そのために他人に損失を及ぼした。
3. 受益と損失との間に因果関係がある。
4. 法律上の原因がない。
Bが賃借していたCのマンションの一室は、Aの財産又は労務によって
確かに綺麗になっています。
(それによってCが利益を得たか否かはまた後で考えましょう。)
AはBが無資力となったために損失を被りかけています。
リフォーム契約をしたのは、ABですから、CはAに代金を支払う法律
上の原因ないし法律上の義務はありません。
このように見ると、本問事例は民法703条の要件に当てはまりそうな気も
するししないような気もするしという感じでしょうか・・。
本問につき最もポイントとなる点は、Aの財産又は労務によってCが利益
を得たかどうかだと思います。
無資力となったBとの賃貸借契約を解除してBを追い出した後のことを考
えると、Cの手元に残るのは、綺麗になったBに貸していた部屋ということ
になりますね。
リフォーム契約は、Bが勝手にAと締結したものであって、Cには関係な
いよ、だからCはAにリフォーム代金を払わないよということになれば、民
法703条上の不当利得の要件を満たすような気もします。
またそうした方が、AC間の関係における不公平感を払拭できるものだと
思います。
そうしなければ、Cは、部屋が綺麗になるわ、代金は払わなくていいわと
いうことになって濡れ手で粟状態であるのに対して、
Aは材料を負担し労務を提供して一所懸命リフォーム工事をしたにも関わら
ず、代金はBからもCからももらえない、
BやCが得しているのをただ指をくわえて見ているだけで、一方でAだけ大
損するということになり、不公平となるからです。
こんなことがまかり通る世の中では、がんばって真面目に働こうという気
がうせてきますね・・。
正当な努力した者は報われるという社会でないと世の中は必ず乱れますし、
経済も社会も発展しません。
ゆえに、不公平な制度は払拭し、公平な社会としなければならないわけで
す。
法というものの究極の目的はここにあり、そしてこれこそが正義というも
のであるのかもしれません。
★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━★
★☆★転用物訴権★☆★
★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━★
しかし、Cもいうほど得はしていない、逆に損しているということであれ
ばどうでしょうか?
誰が得して、誰が損して、誰が正当な努力をし、誰が努力をしていない
か、そして、公平なシステムとは何かとは、簡単には判断できず、詳細な
分析が必要となります。
ここら辺を、常識的感覚、直感的感覚や思いつきで簡単に判断してしま
うのが人間の悪いクセだと思うのですが^^;、少なくとも行政書士試験を
受けようと思っている方(ないし行政書士実務家)は、そのような態度で
はマズいということになります。
世で言われている常識を疑い、直感や思いつきで物事を適当に判断せず、
論理的に突き詰め、何がベストなシステムかを考えるという思考方法こそが
「法的思考様式」というものではないかと思います。
民法608条は、
「賃借人は、賃借物について賃貸人の負担に属する必要費を支出したときは、
賃貸人に対し、直ちにその償還を請求することができる。」
と規定しており、
Bのような賃借人は、賃貸人Cに対し、「部屋をリフォームしてあげたんだか
ら、大家さん、リフォーム代金払ってよね。」といえる権利(費用償還請求権)
があります。
Cの民法703条上の不当利得をあっさり認めて、
「だから、Cさん、Aさんにリフォーム代金払いなさいよ。」
としてしまうと、
CがAにリフォーム代金を払った後に、もし、CがBから費用償還請求権を
行使されると、
Cはリフォーム代金につき、二重に支払いをしなければならなくなってしま
います。
こうなると、今度は、ABは損しないけれども、Cだけ大損してしまうと
いう結果になり、これまた不公平となります。
また、BC間賃貸借契約において、費用償還請求権免除特約があったとし
ても、Bが、
「大家さん、部屋をリフォームしてあげたんだから、家賃まけてよね~。」
と言ってきたので、Cが何か月分かの家賃をまけてあげているような場合も、
不当利得だからいうことで、Aがさらにリフォーム代金の請求をCにするこ
とができるとなると、これまた、Cだけ損するということになります。
そこで判例(最判平7.9.19)は、
1.「Aが建物賃借人Bとの間の請負契約に基づき建物の修繕工事をしたとこ
ろ、その後Bが無資力になったため、AのBに対する請負代金債権の全部又
は一部が無価値である場合において、」
「当該建物の所有者Cが法律上の原因なくして当該修繕工事に要した財産及
び労務の提供に相当する利益を受けたということができるのは、」
2.「CとBとの間の賃貸借契約を全体としてみて、Cが対価関係なしに当該
利益を受けたときに限られるものと解するのが相当である。」
とする、民法703条に対する条文外要件を設定し、この問題(転用物訴権)
に関する調整を図りました。
上記要件2.については、具体的には、BC間の賃貸借契約の中で、Bの費
用償還請求権免除特約がない、あるいはリフォームしてくれたお礼に家賃を
まけてあげたというようなことがない場合のことを指すと考えればよいこと
でしょう。
つまり、上記条文外要件は、くだけた形で簡単にいうと、
1.Bがスッテンテン(無資力)になって、Aにリフォーム代金を払ってくれ
ず、
2.BC間賃貸借契約には費用償還請求権免除特約もなければ、CがBに対し
て家賃をまけてあげたということもない
という感じのことです。
民法703条及び上記1.2.の要件が満たされる場合に限って、転用物訴権は
認められます。
★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━★
★☆★模範解答例★☆★
★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━★
但し、本問は、上記要件1.については、問題文の方にあらかじめ要件(要
件事実)に該当する具体的事実として適示されており、「これと、民法703
条の不当利得要件に加えて」「さらにどのような要件」が必要かとなってい
るので、答案用紙に書かなければならない要件は上記2.の要件となります。
以上より、本問の結論として、模範解答例は以下のようになります。
「BC間契約を全体としてみて、Cが対価関係なしに利益を受けたのなら
AはCに請求ができる。」
なお、最高裁は、このような条文外要件を設定する理由として、
「けだし(なぜならという意味です)、CがBとの間の賃貸借契約において
何らかの形で当該利益に相応する出捐ないし負担をしたときは、Cの受けた
当該利益は法律上の原因に基づくものというべきであり、AがCに対して当
該利益につき不当利得としてその返還を請求することができるとするのは、
Cに二重の負担を強いる結果となるからである。」
と述べています。
判例の立場を「転用物訴権肯定説」といいますが、学説には、本事例のよ
うな場合、BC間の賃貸借契約がある以上、Cが利益に相応する出捐ないし
負担をしたしないに関わらず、Cの利益にはあくまでも法律上の原因がある
としてこの場合の不当利得請求ないし転用物訴権なるものを一切認めないと
いう説(転用物訴権否定説)があり、学説上はこちらの方(否定説)が通説
ないし有力説となっています。
この説は、契約上の債権を回収できないかもしれないというリスクはどの
契約にもつきものであり、Bが無資力となるかも知れないということは、契
約リスクとしてAが自ら引き受けるべきことであって、当該リスクを契約外
の第三者たるCに転嫁することは妥当ではない、
また、Bが無資力となった場合、Aは債権者代位権を行使してCに修理代金
を請求できるのだから、別に転用物訴権のような概念は必要ないだろう等と
いうことを理由としています。
しかし、債権者代位権の場合、債権者平等の原則に基づきAには優先弁済
権がないため、最終的な結論が具体的妥当性を欠く形になってしまいます。
これでは、先に述べたような実質的不公平を取り除くことができないため、
Aの優先弁済権を事実上保証する形になる判例の立場が妥当だとする、転用
物訴権肯定説からの反論もあります。
参考文献:
わかる行政書士予想問題集 法令編 平成19年版 (2007)
http://www.amazon.co.jp/dp/4789227189/ref=nosim/?tag=houtekisiko03-22
わかる行政書士法令編・要点整理 平成19年版 (2007)
http://www.amazon.co.jp/dp/4789227227/ref=nosim/?tag=houtekisiko03-22
民法 (2) 債権各論 内田 貴
http://www.amazon.co.jp/dp/4130323024/ref=nosim/?tag=houtekisiko03-22
伊藤真試験対策講座4 債権各論 伊藤 真
http://www.amazon.co.jp/dp/4335302606/ref=nosim/?tag=houtekisiko03-22
★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━★
」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
:*:・'☆,・:*:・'★,・:*:・'☆,・:*:・'★,・:*:・'☆,・:*:・''★,
・:*:・'★法的思考力を身につけて、★・:*:・'☆
・:*:・'★絶対合格行政書士!★・:*:・'☆
・:*:・'☆,・:*:・'★,・:*:・'☆,・:*:・'★,・:*:・'☆,・:*:・''
」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━★
http://www21.tok2.com/home/houtekisikou2007/knowledgesupply.htm
発行元:ナレッジ・サプライ
メールアドレス houtekisikou2007@aquarius.livedoor.com
ブログ http://blog.livedoor.jp/houtekisikou2007/
★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━★
--------------------------------------------------------
【注意】本メルマガの内容を無断で転写・複写・コピーすることをかたく
お断り致します。また、このメールマガジンの内容により損害を被った場
合でも、当方は一切の責任を負いません。予めご了承のほどお願い申し上
げます。
--------------------------------------------------------
下記をクリックお願いいたします。ランキングアップにご協力を!
人気blogランキングへ