どうしようもなく渇いてひび割れたくちびるに
あまりにも拙いきみのくちづけがこびりつく
そのとき紙を破くみたいな音がした
おれはこぼれることのないなみだを胸骨の内側にたれ流した
それは漏らした小便のように爪先までながれていったんだ
かなしみと呼ぶにはあまりにも
いたみが確かにともない過ぎていた
愛というまゆつばな感情がなぜだかとてもリアルで
くちびるが離れたときにひとつのたいせつな約束が死んだ
おれは長剣を飲み込む奇術をずっと思い出していた
小便のようななみだでのどもとまで濡れていた
おれたちはちょっとした奇跡だったのに
神隠しみたいにまばたきに消えてしまった
きみよ、風がつめた過ぎるような気がしないか
あたらしいダウンと
プレゼントしたコートを着込んでいるのに
ついいましがた、トーストとコーヒーを夢中で流し込んだばかりだったのに
いつかには
ミッドナイトブルーのカーテンがインディゴブルーになるまで
互いに溶けあうことができていたはずなのに
おなじことばがちがう次元に流れてゆく、真実はどこにもいなくなってしまった
剣を飲み込むことに飽きた奇術師
二度と抜き取ることはなかった
その血だまりで
おれたちの
奇跡が
静かに
窒息して沈んでいった
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