SS：Moonlight Shadows

　高校一年・四月
　北高前の坂道に、あたしの影一つ。
　ジョン・スミスは卒業して北高には居ないと思う。　けどジョンの言ってた言葉を信じるなら、あたしの求めてた不思議は何処かにある筈よね。
　

　高校一年・七月
　影は五つ、夕日に照らされて長く伸びてる。
　以前、キョンはSOS団の三人を宇宙人・未来人・超能力者って言ってたけど、それってジョンの言ってた事に近いわよね。　でも、異世界人についてジョンもキョンも言って無いし――まさか、ね。
　

　高校一年・十一月
　ある雨の日、街路灯に照らされた影二つ。　キョンと二人で下校する。
　何故か楽しい。　何でだろ？　解らない。
　

　高校二年・六月
　あたしの影一つ。
　キョンと下らない事で喧嘩した、つまんないの。　無駄に長い影がうっとおしい……腹が立つ。


　高校二年・七月
　影が二つ。　自動販売機で買ったジュースを飲みながらキョンと二人、帰る道。
　影踏みで重なった影、一つになった。
　……何故か離れたくない、そう思った夏の日。


　高校二年・十二月
　冬休み前、影二つ――寒いからと手を差し出して繋いだ手。
　まるで、つり橋みたいに映る影。 　


　高校三年・四月
　みくるちゃんが卒業して影が四つになって、少し淋しい帰り道。


　高校三年・九月
　影が四つ、あと半年もすればこの通学路ともお別れ。　せつない。


　高校三年・十二月
　クリスマス前、影二つ。　キョンと二人、月明かりに照らされて帰る道。
　コンビニで買った肉まんとピザまんを二人で半分づつ分け合って食べる。
　別れぎわ、キョンの口元についてたピザまんの欠片をキスで取ってみた
　――初めてのキスは、ピザの味……


　そう、気付いてた。　あたしはキョンが好き、って事に。　でも、まだ言えなかった。
　クリスマス・プレゼントにあげようと思ってた編みかけのセーターは、押入れにしまったまま。
　このまま春を迎えて、離れ離れになってしまうのかなぁ。


　高校三年・三月　卒業式。　
　大きな影、一つ。
　キョンと腕を組んで、並んで坂を下りてる。
　クリスマス・イブの告白。　決まった同じ進路、そして現在。
　北高を巣立っても、ずっと二人で。　この先の未来へと――
　


　
　
　　　＜Moonlight Shadows＞　～Fin～