おばちゃんたちの間で、韓流ブームとやらが起きて久しい。自分はほとんど興味がないので詳しくないけど、当初「冬ソナ」ブームだけだったのが飛び火して、「イ・ビョンホン」だの「ピ」だの「ペー」(違うか)だのが来日するたびに、空港におばちゃんたちが集結してワ~キャ~してる。
好きなものに熱狂するのは誰でもすることだし、それが韓国のスターだろうが、ハリウッドの俳優だろうが、大ベテラン女優と浮名を流す役者さんだろうが構わないと個人的には思っているので、特にどうとも思わないのだが、事が身内にまで及ぶと、様々な事情が絡んで笑顔ではいられなくなる。
実家にいる母親からメールが届いた。
『東京チャンネルイ・ビョンホンビデオ夜10時』
何かの暗号か? と一瞬考えたが、冷静になって読むと、「東京チャンネル、イ・ビョンホン、ビデオ、夜10時」と読める。東京チャンネルというのだけよくわからなかったが、それもMXテレビのことだと判明した。生憎そのときは舞台の公演中で既に外出中、10時にはどう頑張っても家にたどり着けなかったので、「今日は無理」との返信を送る。さ、小屋に入ろう、と思ったら即座に母親から返信が。
『なんで!!!???』
…いや、何でと言われても…。とりあえず外出中で、番組がはじまる時間には家に帰れないことをメールで送る。これで納得してくれるだろう。さあ、今度こそ小屋に…と思ったら、間髪入れず母親からメール。
『今日は早く帰りなさい!』
…命令ですか、軍曹殿。
小学生以来の母親の言葉に、当然懐かしさなど感じる暇もなく、とにかく外せない用事で、確実に10時まではかかる(もろもろ済ませて小屋を出るのが10時の予定だったので)と懇切丁寧に綴り、申し訳ないけど今回は云々…とあやまりの言葉も添えて、メールを送る。やれやれ、息子がこれだけ状況を説明して、無理だと断れば、さすがに引き下がってくれるだろう。さあ、小屋に行かなければ…と足を一歩踏み出した途端に、刹那のタイミングで悪魔のメール。
『なら彼女に頼んで!!!』
…やつは千葉県民だよ。
長いこと神奈川から出たことのない母親は、東京と千葉は同じところくらいに思っているらしい。余談だが、実家を出てから、両親は一度もウチに来たことがない。別に不仲というわけではなく、「新宿に着いたら、総武線という黄色い線が入った電車に乗ればいいから」と説明する自分に、「新宿にそんな電車はない!!」と頑なに母親が主張し続けているためだ。あるものをない、と言っていて、新宿に行ったことがあるはずの親父も母親に同調しているのだから、二人は一生我が家に来ることはないであろう。それはともかく、そういうわけで東京と千葉は別のとこで、彼女の住んでいるところからMXテレビは観られないんだと説明して(観られるところもあるらしいけど)、これでさすがに理解しただろうと思い、もう、何が何でも小屋に入るぞ、と決意してドアノブに手をかけたところで、もう何度目か数える気もないがメールが届く。
『だったらやっぱり早く帰りなさい!!』
…だから無理だということは説明したはずですが。
結局、直接電話をかけて根気よく説明し、やっとのことで理解を得たのだけど、そのために20分ほども雑談に付き合わされるハメになってしまい、小屋を目の前にして、思わぬ足踏みをくってしまった。母親によると、イ・ビョンホンが大好きらしく、彼の登場するものなら、何でもいいからコレクションしたいらしい。彼女はこういうのも何だけどミーハー気質のある人で、10年くらい前にはケビン・コスナーがいいとか言っていたり、最近では氷川きよしがいいとか言っていた。実害がなかったので、好きにすればいいんじゃないかと思っていたのだけど…実害が及ぶとため息しか出ないな。
母親の目下行きたい場所は新大久保だそうだ。たしかにあそこは韓国の店がたくさんあるけど…東京へわざわざ出てきて新大久保か。親父はそんな母親の熱狂ぶりに一言。
「時代が変わったんだよ」
すでにあきらめの境地ですか、父上。
遠くを見つめる親父と、ため息しか出ない息子を尻目に、今日も母親は韓流スターに囲まれて幸せな日々を送るのだろう。女性が長生きするわけだよ、ホント。
…はあ。
好きなものに熱狂するのは誰でもすることだし、それが韓国のスターだろうが、ハリウッドの俳優だろうが、大ベテラン女優と浮名を流す役者さんだろうが構わないと個人的には思っているので、特にどうとも思わないのだが、事が身内にまで及ぶと、様々な事情が絡んで笑顔ではいられなくなる。
実家にいる母親からメールが届いた。
『東京チャンネルイ・ビョンホンビデオ夜10時』
何かの暗号か? と一瞬考えたが、冷静になって読むと、「東京チャンネル、イ・ビョンホン、ビデオ、夜10時」と読める。東京チャンネルというのだけよくわからなかったが、それもMXテレビのことだと判明した。生憎そのときは舞台の公演中で既に外出中、10時にはどう頑張っても家にたどり着けなかったので、「今日は無理」との返信を送る。さ、小屋に入ろう、と思ったら即座に母親から返信が。
『なんで!!!???』
…いや、何でと言われても…。とりあえず外出中で、番組がはじまる時間には家に帰れないことをメールで送る。これで納得してくれるだろう。さあ、今度こそ小屋に…と思ったら、間髪入れず母親からメール。
『今日は早く帰りなさい!』
…命令ですか、軍曹殿。
小学生以来の母親の言葉に、当然懐かしさなど感じる暇もなく、とにかく外せない用事で、確実に10時まではかかる(もろもろ済ませて小屋を出るのが10時の予定だったので)と懇切丁寧に綴り、申し訳ないけど今回は云々…とあやまりの言葉も添えて、メールを送る。やれやれ、息子がこれだけ状況を説明して、無理だと断れば、さすがに引き下がってくれるだろう。さあ、小屋に行かなければ…と足を一歩踏み出した途端に、刹那のタイミングで悪魔のメール。
『なら彼女に頼んで!!!』
…やつは千葉県民だよ。
長いこと神奈川から出たことのない母親は、東京と千葉は同じところくらいに思っているらしい。余談だが、実家を出てから、両親は一度もウチに来たことがない。別に不仲というわけではなく、「新宿に着いたら、総武線という黄色い線が入った電車に乗ればいいから」と説明する自分に、「新宿にそんな電車はない!!」と頑なに母親が主張し続けているためだ。あるものをない、と言っていて、新宿に行ったことがあるはずの親父も母親に同調しているのだから、二人は一生我が家に来ることはないであろう。それはともかく、そういうわけで東京と千葉は別のとこで、彼女の住んでいるところからMXテレビは観られないんだと説明して(観られるところもあるらしいけど)、これでさすがに理解しただろうと思い、もう、何が何でも小屋に入るぞ、と決意してドアノブに手をかけたところで、もう何度目か数える気もないがメールが届く。
『だったらやっぱり早く帰りなさい!!』
…だから無理だということは説明したはずですが。
結局、直接電話をかけて根気よく説明し、やっとのことで理解を得たのだけど、そのために20分ほども雑談に付き合わされるハメになってしまい、小屋を目の前にして、思わぬ足踏みをくってしまった。母親によると、イ・ビョンホンが大好きらしく、彼の登場するものなら、何でもいいからコレクションしたいらしい。彼女はこういうのも何だけどミーハー気質のある人で、10年くらい前にはケビン・コスナーがいいとか言っていたり、最近では氷川きよしがいいとか言っていた。実害がなかったので、好きにすればいいんじゃないかと思っていたのだけど…実害が及ぶとため息しか出ないな。
母親の目下行きたい場所は新大久保だそうだ。たしかにあそこは韓国の店がたくさんあるけど…東京へわざわざ出てきて新大久保か。親父はそんな母親の熱狂ぶりに一言。
「時代が変わったんだよ」
すでにあきらめの境地ですか、父上。
遠くを見つめる親父と、ため息しか出ない息子を尻目に、今日も母親は韓流スターに囲まれて幸せな日々を送るのだろう。女性が長生きするわけだよ、ホント。
…はあ。