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★素材抜粋 100万人を破滅させた大銀行の犯罪

2007年05月29日 | 読書
素材抜粋 2001/11/22


100万人を破滅させた大銀行の犯罪

椎名麻紗枝(弁護士・「銀行の貸し手責任を問う会」事務局長)著
『100万人を破滅させた大銀行の犯罪』 
 講談社 2001年



 バブル期に、金余り現象の中で融資先獲得に躍起となった銀行から、相続税対策を名目に、変額保険、不動産投資などの提案融資を押し付けられた多数の個人が、その後のバブル崩壊で銀行の提案した返済スキームが破綻するや、銀行に彼らが長年働いて取得した自宅をはじめ、すべての財産を根こそぎ奪い取られようとしているのに、国は何ら救済しようとはしていない。自らバブルを煽り、バブルに狂奔して経営危機を招いた銀行に対しては、国民の血税で経営危機を救っているのに、だ。

 この銀行の提案融資に利用されたのが、80年代後半より大手都銀から売り出された不動産担保の「大型フリーローン」であった。大型フリーローンは、従来、銀行の融資の鉄則とされていた「融資使途の確認」「過剰融資の排除」が取り払われ、不動産の担保さえあれば、資金使途も年収も問わないというものである。銀行は、大型フリーローンにより株投資、不動産共同投資、ゴルフ会員権など、投機目的にみさかいない融資を行った。

 サラ金では、貸金業規制法第13条で過剰融資が禁止されているのに、銀行にはこれを規制する法律がない。

 87年12月発行の『情報活用による融資渉外』(金融財政事情研究会編)は、大手都市銀行の融資渉外担当者の執筆によるものであるが、この冊子には、リテールバンキング(小口金融)業務拡充のためのさまざまな提案融資の実践マニュアルが書かれている。
 まず巻頭には、<今求められているのは、〔融資創造の仕掛け人〕とも呼ぶべき〔提案型融資セールス〕を展開できる渉外担当者だろう>と書かれている。そのえうえで、提案融資が成功するためには相続税対策が有効であるとして、融資渉外担当者は税についての知識を習得することが大事であると書かれている。
 このように、銀行は、庶民の相続税に対する不安感につけ入り、大型フリーローンを相続税対策、あるいは節税対策を売り物にした変額保険や不動産共同投資などとセットにして大量に販売しようという意図を、当初から持っていたのである。

 野中さんから相談を受けた91年当時は、わが国では、「貸し手責任」という言葉自体なじみのない、いやそんな言葉自体あるという認識すらない状態であった。「お金を融資したら、借りた側にのみ返す義務が残るだけで、銀行には何一つ責任はない」という論理が少しも疑いをもたれていなかった。しかし、アメリカを例に取れば、銀行の貸し手責任(レンダーライアビリティ)は、自明のこととして社会的に認知されていて、ある金融商品について、高度の金融知識を持っておらずその商品について理解できない人には売ってはいけないことになっている。

 過剰融資については、ノンバンクについてであるが、94年3月16日に釧路簡易裁判所が、「過剰与信と認められる債務についてその返済請求を認めない」とする注目すべき判決を出している。

 楠本くに代『金融機関の貸し手責任と消費者保護ーレンダー・ライアビリティ』(東洋経済新報社)

 銀行被害者の多くは、大手銀行から、リスクの説明はいっさいないまま、相続税対策に最適であるとだまされ、融資を受けて、株式の売買をはじめ、変額保険や不動産小口化商品などを購入させられたのだ。返済できない銀行被害者の多くは、銀行から担保に取られた自宅を売却して返済するか、もし任意に売却しないのであれば競売すると脅され、住む家をとられたら自殺するしかない、という状態に追い込まれている。銀行被害の恐るべき実態はほとんど知られておらず、私たちの味方はあまりに少なく、敵はあまりにも強大だった。

 今回の予備的調査は、憲法第62条に定められた議院の国政調査権にもとづくものであり、金融監督庁、大蔵省の行政機関は、国権の最高機関の行う国政調査に対しては、最大限応えなければならない憲法上の義務があるのに、回答を事実上拒否しているばかりか、嘘の回答をしているのである。

 この予備的調査への回答で、金融監督庁が、金融機関の協力が得られなければ検査ができないとした態度に、はしなくも金融監督庁の金融検査に対する姿勢が現れていた。

実際の相続税額を何倍も上回る数字を言って、相続税の不安を煽るのは、銀行・生保の常套手段だ。

 (湖東)教授は、有効かつ明確な相続税対策は、土地評価額の引き下げ、基礎控除の引き上げ、税率構造の見直し等の法改正しかなく、個人的な対策、個人的な決め手等はほとんど祖家財しないと、指摘している。

 (変額保険裁判で自殺した事例が出たのを機に、自殺問題についての緊急アンケート。用紙の余白に寄せられた憤懣やるかたない思い)
 「三権分立などウソっぱち。裁判を含め、この世はすべて資本家のためにある」
 「裁判官は現状を知らなすぎる。銀行も反省がまったくない。この悔しさと恨みは忘れません」
 「裁判官は官僚的で事なかれ主義。日本の裁判は成熟していないような気がしてなりませんでした」
 「味方をしてくれると思った裁判所が大生保と大銀行の味方だったことを知り、悔しくてなりません」
 「(裁判官は)被害者の心の痛みより、自分の立身出世と退官後のことしか念頭にないのでしょうか」
 「裁判所は被告の経歴や地位を重視して(被害者の)主張を斥け、生保レディのウソの主張を見抜けず、判決を下した。裁判はまったく信頼できない」
被告を恫喝する裁判官

『裁判官は訴える! 私たちの大疑問』(講談社)

裁判所は、書類に押されている印鑑が本人のものでさえあれば、特段の反証のない限り、その文書は本人の意思にもとづいて作成されたものと推認されるという立場をとっている。
 これは、一般人の生活感覚に合うだろうか。

 最高裁が印影について推定を認める根拠は、「本人の印章を他人が勝手に使用することは通常ありえない」という日常生活上の経験則を基礎としているにすぎない。

 判決の多くは40年近くも前の最高裁判決を、いまだに踏襲しているのだ。

 したがって、イギリスのように、オンブズマンが提案した調停案に対して債務者の側が同意した場合には、金融機関のほうでそれを拒否できないという制度を導入するしかない。そうでない限り、大手ゼネコンや関連企業に対しては債権放棄をしながら、個人債務者に対しては身ぐるみはぐという、銀行の理不尽なやり方がまかりとおってしまうのだ。

 事件処理数で裁判官が評価され、昇給も決まるからだ。裁判官はおのずと、時間のかかる面倒な裁判は引き受けたがらなくなる。できるだけ時間をかけずに一件落着したがるのだ。

 (併合審理を裁判所が拒んだことに対して)
 方法は、一つしかなかった。私たち代理人が全部の事件から辞任して本人訴訟にすることだ。本人が代理人を依頼しないで自分で法廷に出て訴訟活動をすることになれば、いちばん困るのは裁判所だ。

 銀行との裁判での借り手の勝訴率は極端に低い。なぜ銀行だけが独り勝ちしているのか。その原因は、裁判所の体質と裁判の仕組みの問題とがある。

 最高裁による管理統制だ。

 この最高裁の態度自体、政治的である。今、銀行の不良債権の処理が国策とされる中で、最高裁も競売手続きの迅速化を援護しているのだ。

 銀行は、裁判官にとって、いわば天下り先の一つになっているというのだ。
 東京地裁の裁判官には、最高裁ばかり向いている上昇志向の強い裁判官が多いというのは、かねてから弁護士の間で言われていたことだ。

 同教授(松元恒雄一橋大学教授)は、先物取引、証券取引、銀行取引の金融被害のうち、裁判所が課する業者への注意義務は先物取引にいちばん厳しく、次に証券取引で、銀行取引に関しては非常に甘いことが特徴であると分析している。

 銀行員の証言をさしたる根拠もなく採用して、被害者本人の証言は「にわかに措信しがたい」という言葉で斥ける判決が多い。人間の嘘をつく心理がわからない裁判官は多いのである。証人の肩書きなどに幻惑されてしまうのだ。いくら社会的には立派に見える人でも、会社のためであれば、嘘をつくのもやむを得ないと考える者がいくらでもいることが分からないのだ。何のために裁判官になったのだろう、と考えてしまう。

 「認識がなかったことについては過失がない」
                    (最高裁2000年7月7日判決)

 大蔵省の上層部は腐っていても、若い人たちは、大蔵省がこのままでよいと考えているわけではないのではないか。

 その第一歩が、金融紛争処理解決機構の立法化だ。

 その方法の一つとして考えているのが、国家賠償訴訟である。   


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