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厚生年金基金事務長奮闘記-9

2010年08月10日 | 厚生年金基金
②業務機械化

ABC基金では、設立から15年ほど業務の分類、ファイリングの体系化、業務進行票の導入等々の基金業務の品質改善・業務改善を都度実施してきましたが、人手や電卓程度のツ-ルではこれ以上の効率化は望めない状態になっていました。

昭和50年代後半にはワ-プロが出回り、その驚異的な能力に事務屋は驚嘆したものであります。その当時は、母体企業の人事課とか総務課等に1、2台導入されたばかりで、とても基金事務所で購入など出来ない状態でした。

そこで、筆者は、昼休みに人事課とか総務課等におしかけてワ-プロを貸してもらい、操作を習い、文書作成を他の部署で行っていた時期があります。

同じ頃、コンピュ-タ-の普及も目覚ましく、母体企業でも大型コンピュ-タ-が導入され、会社業務の電算化がスタ-トしていました。

基金業務の機械化については、多岐にわたる業務の平準化・省力化が人手では困難であり限界があるのと、人工提供のル-チン業務の過多に伴う事務所の沈滞ム-ド、超長期の年金記録の管理・保全への危惧等々から避けて通れないと考えましたが、
それ以上に、現状スタッフで現状工数で日々多忙を極めていれば、先行投資部分の研究・調査が出来ないため事務所に次の展開を仕掛けることも出来ないまま終わってしまうことを一層恐れなければなりませんでした。



外資系とは単に外資というよりも、プロフェッショナルなサ-ビスを提供できる
金融機関と言ったほうがよいかもしれません。

松井正裕:日経広告手帖増刊・日経金融新聞特集'97-Ⅰ
座談会「外為法改正からみるビッグバン」



ワ-プロも購入出来ない状態で、まして高額なコンピュ-タ-など夢のまた夢でした時代が暫く続き、そういう中で母体企業に基金のシステム開発を依頼しつづけても、母体企業は営業優先で基金の要請など聞く耳を持たなかったのが実態でした。

逆に、母体企業にシステム開発を依頼出来なかったのが今では幸いしています。というのも、基金のコンピュ-タ-・システムはソフトプログラムがひとつのステ-ジというか、
一つの世界を構成していて母体企業や健保組合等のソフトに比べて格段に「重いソフト」(例えば、加入員記録は40年間、年金支給記録は20年間、都合60年間の超長期のヒストリ-をカバ-、年金裁定の複雑精緻な計算式、度重なる法律改正への都度のソフト修正等)になっているため、とてもとても母体企業のゼネラリスト逹の手にはおえませんシステムです。

それを認識していないまま、安易に依頼を考えていた当方が愚かでした。考えて見れば、依頼の内実は年金基金システム担当者のスペシャリストを長期間専従させよ、という母体企業にとっては過大この上ない要求でしたのです。

それなら、基金独自でコンピュ-タ-を手に入れようということで調査・研究を始めましたのは昭和57、58年頃でありましたでしょうか。その結果が、先に述べました4っの手法を組み合わせたオフィス・コンピュ-タ-入手方式です。



*ABC厚生年金基金のOA導入方式
①経費低減のため、健康保険組合とのCPU(OAの中央記憶装置)共同使用
②経費平準化のため、5年リ-スで支払い
③経費削減のため、リ-ス料は利差益から捻出
④長期間の継続的な記録管理の質を確保するため、メ-カ-直の業者を採用



今でこそ、パソコンの出現によりハ-ド部分のコストダウン激変により入手しやすくなりましが、年間人件費3人分程のコンピュ-タ-買い取りコスト(ハ-ド1,000万円・ソフト500万円)は、職員1、2人しかいない事務所に新たに3人採用するようなもので過大コストそのものでした。

このような基金のインフラ整備のドタバタは世間一般からすれば取り立てて言うほどのことでもないでしょうが、小さな基金事務所が行政サイドと母体企業サイドに対して自主性・自己責任を確立していく過程での一里塚としては一度は通過しなければなりませんドタバタでしたのでしょう。

さて、利差益を使っての基金業務の機械化についてでありますが、厚生年金法上、機械化の経費は利差益と言うより年金経理の運用収益の一部を業務会計に繰り入れて支払うことが出来ることになっています。

昨今では、これも運用収益の低迷で難しくなってきていますが、ABC基金では昭和60年度から基金業務のOA化に伴い年金経理から業務会計への繰り入れを行ってきました。

毎年、予算書作成のとき、年金経理からの繰入金を業務会計に行い「機械処理経費」という勘定科目を立て、下記のように予算化しました。




この予算も事前に地方官僚のヒアリングの網の目を通り抜けなければ申請出来ないことになっていますが、職を渡り歩く地方官僚のその時々の担当官の判断によって左右されることもあります。

地方官僚の判断基準は、法律・通知等の<六法全書>であり、何よりも重要視されるのが<整合性>であり、中には度量の広い、巾のある地方官僚もおられますが一般的にはどうしても保守的にならざるを得ないようであります。

 一方で、基金事務所に配置替えになったゼネラリスト逹(新任の役職員)が一番途惑うのは何をするにも規約・規程に準拠することと、詳細は通知・法律の中という蜘蛛の巣に絡め取られることであります。護送船団方式で運営されている社会保険行政の一端に民間人が触れましたときの素直な感想でしょう。

その蜘蛛の巣たるフレ-ムワ-クを払い除けてニッチな部分に自主性を作り出して行くには最低5年はかかるでありましょう。

ばってん、その間にゼネラリストの余命は尽きて、次のゼネラリストにバトンが渡されますが、同じように次の人も学習している内に余命は尽きてしまいます。

基金事務所に風が吹き抜けるかのように人は入れ替わり、何時も、何時までも<学習>ばかりしているのが基金事務所一般の実態であり、ノウハウの蓄積とか慣習の更新がなされないまま歩留まりなしに日々が経過していきます。まるで、誰かの意図で故意に仕掛けられていでもいるかのように、基金の力は育成されないままです。





ⅠA型であれば、Ⅱ型経費の半分程度のコスト削減が計れます。しかし、コスト削減が民間発想では民間独特の偏狭な論理によって根回し段階で上司の受けが良いので最大の課題となりますが、基金事務所にとっての最大の問題はコスト削減の影に隠れている次のような問題こそ本来のタ-ゲットです。


①基金の法人格の自主・独立性を奪取できます。
②Ⅱ型やⅠB型では、総幹事会社の資産運用と数理業務の利益相反の場面での
情報操作を受けやすいのです。
③職員にインセンティブの付与が出来ます。
④基金全体のフレ-ムワ-クに対する批判の目が醸成されます。(例えば、総幹事
   制度、利益相反、業務委託費の総幹事会社へのキックバック、手数料体系の談合
   体質と成功報酬、本邦系金融機関の運用スキ-ムの拙劣さ、行政絡みの業者体制
   の癒着構造、官僚の護送船団体制による金融破壊等々)
⑤ⅠA型導入により、半官半民の基金事務所のプロ意識の確立がスタ-トします。



このようなことはゼネラリストであれば誰でも考え付くことではありますが、現実の基金の業務機械化場面では、機械を導入するかいなかの判断は最終的には常務理事判断になりますが、その常務理事がゼネラリストとしての最低限必要な経験と判断材料を持たぬまま判断をしなければならない事態が生じています。

ゼネラリストの世界でそれなりに功なり名遂げた常務理事であれば、保守的になるのが普通であり、いまさら冒険も危険も、さらになるべくでしたら新規事業は避けたいというのが本音でしょう。

<高価>な機械を導入して<効果>が出るのでしょうか、職員が使いこなすでしょうか、仮に手作業に戻す場合が生じたらその手順は確保されているのか、行政への対応は十分でしょうか、
このようなことを人に聞くのは出来がたい、新規に学習するのはしんどい、・・・・・等々、どうしても心情的には退行的にならざるを得ないでありましょう。

右肩経済のバブル感覚と言われても長いこと組織の中で叩かれ抜いて生き延びてきて、ここに来て更に切磋琢磨はないでしょう。しかし、ゼネラリストのリストラが吹き荒れている昨今、そうも行かないでありましょう。

「あそこの常務理事も首になったというし、何もしないわけにもいかなし・・・・・」、多くの常務理事の長嘆息が聞こえてくるようです。

時代は変わるのが定めであり、若い職員の特典は柔軟性です。基金の業務機械化には若い力が柔軟に対応していくことでしょう。常務理事は「道に立ちふさがる」のが勤めではなく、基盤を整備し水が流れやすいようにするのが勤めでしょう。

最近、基金の常務理事の資格要件「社会保険制度に精通していること」に「資産運用業務が適切にできる」ことが加えられて、資格要件を満たすような人材はゼネラリストにはいなくなってきていますが、
基金業務の機械化についてもパソコン等のハイスピ-ドに付いていけなくなっているのが現実です。そのうえ、「受託者責任」が新たにクロ-アップされて、責任の重さは一段と増しています。



③給付改善

<利差益を使っての給付改善>-このコンセプトが厚生年金基金制度の中心になるのは何時のことでしょうか。これこそ、基金制度の真骨頂です。

幸い数基金ではありますが、バブル経済絶頂のころ導入しその後の低利回り時代に維持出来がたくなり廃止した基金もあるが、これを実施・維持している基金があります。

そのような基金が行っている通常の給付改善方法は、インフレ目減り対策として下記のように行われています。


①積立金のうち、受給権者の拠出に係る部分の利差益を使用して3%以内の給付上乗
せをする。
②責任準備金の比率で、受給者分利差益と加入員分利差益に分け、受給者分利差益を
使用して受給者の給付を引き上げます。


厚生年金基金の積立金は通常総資産〇〇〇億円等と表示され明細内訳は分からないままになっています。つまり、区分経理はなされておらず持分表示がない状態になっています。これをあえて持分表示するには、便法として上記②のように責任準備金明細書等で想定するしかないでありましょう。





 このようにして、年金受給者分の責任準備金を特定して、この範囲内で慎重に上限を設けて行いましょうと設計されています。年度の年金受給者分責任準備金の比率で利差益を調整し、その範囲内で給付改善をしようというシンプルな考え方です。

一方に、今一つ財政調整方式とでもいうか、法律改正の時などに諸条件を組み合わせてフレ-ムワ-クそのものを変えてしまう給付改善も有りえると考えられます。



伝統的投資理論においては、周知のように個別銘柄の投資価値分析が主流であっ
た。現在においても多くの投資家はこの範疇に属する投資価値を分析しており、し
たがって悪い言い方をするなら、投資リスクをあまり視野に入れないばくち的な運
用をしている。

1994・9・10「週刊ダイヤモンド」・辰巳 憲一
-デリバティブを越える先端ハイテク投資技法-





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