フランスの名指揮者、ジャン・マルティノン(Jean Martinon, 1910-1976)は1953年に初来日してNHK交響楽団を指揮しました。
そのときの画像がアサヒカメラ1954年3月号に掲載されています。
撮影したのは写真家の船山克氏(1923-2012)。
「日比谷公会堂でN響を指揮するマルチノンを撮ることになって、さてどこから撮ろうかと考えた。観客席、配電室、あるいは舞台の袖といったところは、今までに使いつくされていて面白くない。N響の有馬氏に無理に頼みこんで、舞台の一番後のピアノの陰に入れてもらった。ストラヴィンスキーの「ペトルシカ」のピアノのパートを弾いていたお嬢さんは、さぞ迷惑だったことだろう。(中略)日本光学の新製品、ニッコール105ミリF2.5のレンズをニコンにつけて、私の指は夢中で彼の動きを追いかけた。かなり無謀な撮影だったけれども、観客席に背を向けた指揮者ではなくて、オーケストラの側から、マルチノンの真剣な表情や姿を捉えることができたのは、私の大変な喜びだった。」
ピアノを弾いていた「お嬢さん」というのはどなたのことでしょうか。高良芳枝さん?
上の写真の左にはチェロの大村卯七さんが写っています。
大村さんの「ぼうふりものがたり」ではマルティノンの素晴らしい人間性について書かれています。N響のメンバーからは人一倍の人気を集めていたようですね。
↑ 10月17日と18日のN響第351回定期演奏会のいずれかの日の撮影(沼辺信一様、情報をありがとうございました)。
N響のホームページの「演奏会記録」、手許にある当時のプログラム冊子によれば、1953年の来日時マルティノンがストラヴンスキーの三大バレエを指揮したのは、10月17日と18日の第351回定期演奏会、会場は(記事にもあるとおり)日比谷公会堂でした。写真撮影はそのいずれかの日です。
このときの(当時としては信じがたい)高水準の凄演については先人たちから評判を聞かされていますが、残念ながらライヴ音源は現存しないらしい。NHKのアーカイヴに録音の存在が確認されるのは、10月12日収録の《牧神の午後への前奏曲》と《スペイン狂詩曲》(会場不詳)、10月13日収録の《幻想交響曲》(日比谷公会堂)、10月28日収録のベートーヴェン《ヴァイオリン協奏曲》(独奏/アイザック・スターン、日比谷公会堂)。《牧神》以外はキングレコードからCD化されています。
最近、ブログの更新がなかなかできない中でコメントをいただき大変うれしいです。
> 手許にある当時のプログラム冊子
プログラムをお持ちなんですね!すごい。
三大バレエを「凄宴」とは。。マルティノンの指揮の素晴らしさもさることながら、それに食らいついて行った当時のN響の実力も相当なものだったんでしょうね。ハルサイはどんなんだったんだか。。録音がないのは残念です。
> 《牧神》以外はキングレコードからCD化されています。
そうですか!自分はそれらを聴いたことがないし古いライブ録音が大好きなので探してみます。
今年もよろしくお願いいたします。
> ストラヴィンスキー https://youtu.be/p5R39jyYVFA
いま初めて聴いているところです。驚きました。
1963年マルティノン2度目の来日時、開館3年目の東京文化会館での演奏なのですね。
YouTubeの音源は数年前にFMで放送されたものなのでしょうか。
クリアーな録音。しかもステレオ!あらためてじっくり聴いてみようと思います。