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チュエボーなチューボーのクラシック中ブログ

人生の半分を過去に生きることがクラシック音楽好きのサダメなんでしょうか?

ショスタコーヴィチ弦楽四重奏曲第8番(やっぱりおそロシア)

2014-03-26 23:02:19 | 何様クラシック

ショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲第8番は15曲ある四重奏曲のド真ん中でしかも最高傑作との評判ですよね。


でも一方、交響曲第5番と一緒で、肩の力入りすぎ、作り込まれすぎって感じで、いつもの直感的モーツァルトライクな天才インスピレーション炸裂しまくりの音楽とは言えないのでは?って勝手に一段ランク下の曲と思っていました。

ところが何度も何気に聴いているうち、むしろ、いつもは巧みに隠していた作曲者の本心が一番表面化しちゃた音楽に聞こえ始めました。最終楽章ラルゴの88小節のあいだなんて、タコ弱音を吐いてしくしく泣きっぱなし。かわいそう。

こんなふうに作曲者個人の思いを暴露した作品であるとの評価がある一方、「ファシズムと戦争の犠牲者の思い出」に捧げられているんですが、今まで別に不思議に思っていませんでした。



全音楽譜出版社のスコアの解説には「四重奏曲の仕事は映画『五日五夜』の音楽(のちに作品111として発表)と平衡してドレスデンで(?)すすめられた。作品の主題は作曲者の証言によると、映画を撮影した印象や、町の人たちがファシズムと戦争の時代について語っていた話をもとに生まれたものである」とあるし、音楽之友社作曲家別名曲解説ライブラリーにもやはり「映画のなかの戦争の物語に感動してこの曲を着想し、3日間で作曲を完成した」とあります。

この『五日五夜』という映画、第二次世界大戦中のドレスデン爆撃の最中に、苦労して美術品を救い出す様を描いたもの(音楽之友社作曲家・人と作品シリーズ223ページ)らしいのですが、この四重奏曲はそんな安っぽいものと関係あるって感じが全くしないし、なにしろDSCH音型ドバドバ出まくりなのに変な話ですよね?


『わが父ショスタコーヴィチ』に重要なことが書いてありました。

娘ガリーナの言葉:「あれは1960年、ジューコフスカの別荘のことでした。父が二階から降りてくると、椅子に腰をおろして言ったのです。『僕自身を記念する作品を、たった今書き上げたよ。』..(中略)..《第8番》は演奏されるとすぐ、たいへんな評判を呼びました。するとたちまち、献辞を変更しろといういつもの圧力が始まったのです。父は譲歩せざるを得ませんでした。」

ショスタコーヴィチ、ウソ言わされてるんやん。本人も「ファシズムの犠牲者」なら結局は矛盾してないのかもしれないけど、ほんま、おそロシア!


シェーンベルク グレの歌

2013-12-27 23:42:55 | 何様クラシック

クラシック好きな人が、一番好きな曲って何?って聞かれたら十数秒考えた挙句、『グレの歌』って答える人は案外多いのでは?ボクもIMSLPに総譜が公開されてるにも拘わらずスコアを5,500円も出して買ってしまいました。全然理解できないけどオーケストラが巨大でオトクっぽいし、何よりあまりにも音楽が魅力的すぎるんで。



グレの歌は、王様が怖い奥さんに不倫がバレて相手が殺されたんで神様を呪ったらバチが当たって幽霊になってさまようも最後は救済されるって話なんですが、マーラーの復活もグレに比べたらハイドンの交響曲のようですね。

後期ロマン派を軽く飛び越えてるっていうか、まだ植物しか存在しない原始地球の新鮮な空気を吸ってるような気分になります。

一度だけ実演に接したときは開演前オーケストラ・合唱側の席の多さにこれからどんな音が鳴るんだろ?ってドキドキしました。最初から最後まで泣かされたり笑わされたり感情を揺さぶられるって意味で一番好きな音楽なのですが、他方、作曲者の、無調とか12音とかヘンになる前の口当たりのいい音楽を悲しいかな恥ずかしくて「好き」って世間様に正直に言えない部分がありますね~。

でも、グレ好きをカミングアウトして万が一バカにされた場合にはシェーンベルクに個人的に対位法を学んだエゴン・ヴェレス(Egon Wellesz, 1885-1974)が「グレの歌を理解することはシェーンベルクの後期の全作品を理解する鍵だ」と言っていたことをネタに反撃すればいいだけのことです!

CD解説書でのラトルの言いぐさは
・「世界で最も大きい弦楽四重奏曲」
・「速いテンポの音楽の多くが、まるでアニメ音楽に聴こえる」...トムとジェリーの音楽担当のスコット・ブラッドリー(Scott Bradley, 1891-1977)はシェーンベルクの生徒
・「ダフニスのように演奏すれば良い線いくよ」。。。さすが。


それと若い作曲者に総譜を見せられたR.シュトラウスが「これ本当に君が書いたのか!?」って驚いたエピソードもいいですなあ。


弦だけでスコア18段になったり、グレってでっかいけどめっちゃ繊細なんですね。そうかと思えば最後のさいごに待ってましたとばかりのマザコン癒しの女声合唱の登場、そして恥ずかし気もなく眩しすぎる真っ白なハ長調のトニックでフィニッシュさせちゃうこの素晴らしき中二病な世界観につくづく惚れてまう。。シェーンベルクってきっと明るくて大らかでやさしいひとだったんだろうな。


このままグレずにグレ路線守っていたら、シェーンベルクの亡くなるときの言葉が「私は不幸だった」(ヘア・スタイルつながりの親友であるパブロ・カザルスの証言による)っていう可哀想なものにならないで済んだかも。

おとぎ話の王国への拉致度が高いケーゲルのCDが好きだけどライブ動画ではヤンソンスとバイエルン放送響のが気に入ってます。山鳩の藤村実穂子さんも自分のお母さんだったらいいのになー的に頼ってしまいたい名唱!

怖いのは、作曲者がこの音楽が聴衆にウケるのはわかっていたと発言(1913年2月23日、日曜日のフランツ・シュレーカー指揮によるウィーンでの初演は大成功)、つまりモーツァルトのパリ交響曲みたいにこれを聴く大衆の感情をいかにコントロールするかを計算しつつ作曲していたってことですね。

↑ 初演プログラムの表紙

 

↑ 「グレの歌」を演奏するウィーン・フィル(ブルーノ・ワルター指揮)。1935年1月29日ウィーン・コンツェルトハウス(『レコード音楽』昭和13年1月号)

(追記 2019年)念願かなって本番唄ってきました。若干アマチュア合唱団にも気を使って書いてくれている気配はあるものの、自分にはグレが嫌いになりそうなくらいむずかしかった。第九余裕超えのドS合唱パート。


ブルックナー vs ブラームス & 7番の自筆譜

2013-09-27 20:08:08 | 何様クラシック

第九合唱団のクラシック好きのおじさんたちに「ブルックナーは好きですか?」って質問してみたら


「若い頃はよく聴いた」って答えがなぜか多かったですね。


ボクなんかはジジィになっても聞き続けると思うんですが。。ガキなんでしょうか?


悩みがゼロになる瞬間をくれる、数少ない音楽だと思うんです。


 


ブルックナーってどんな人だったのか知りたくて何冊か本を読みましたが


田代櫂 著『アントン・ブルックナー 魂の山嶺』(春秋社)が特に作曲者に対する愛情に溢れていて好きです。いくつかの疑問も解けました。


 


疑問1 死体マニアでロリコン(?)の変なおじさんがなんでこんな神懸った曲を書けたのか?


→性格は『底深い謙虚さと、誇り高い自尊心の共存』(33ページ)。いろんなベクトルのキャラが同居してんすかね。田舎っぽい方言ときれいな標準語を使い分けていたらしいし。


それと、ブルックナーはオルガンのアドリブの天才でもあったんですね。。イメージとちゃう。


 


疑問2 ブラームスと仲が悪かったのは何故か?ワーグナー派か否かは別として2人の曲どちらも誠実さでは共通しとるやん!


→ブルックナーは南ドイツ人でカトリック、ブラームスは北ドイツ人でプロテスタントで性格が真逆(248ページ)。


 


『ブルックナーはブラームスの冷血さを嫌い、ブラームスはブルックナーの抹香臭さを嫌った。


周囲の者たちが二人を仲良くさせようとレストラン「赤いはりねずみ」のテーブルに同席させたが


気まずい雰囲気が流れる中、ブラームスがメニューを手に取って眺め始めた。


「薫製ポークの団子とキャベツ添え、これが私の好物だ」


ブルックナーがすかさず彼を振り返った。


「ほーらね先生、キャベツを添えた薫製ポーク、これがわしらの合意点ですて」


一座は和やかな大笑いとなったが、その後も二人の関係が好転することはなかった。』(255ページ)


 


→ 2人の天才の顔合わせ、臨場感があっていいですね!


そんなブラームスがブルックナーの葬儀では教会に足を踏み入れず、関係者が中に入るようにうながしたが「もうじき私の柩を担ぐがいい」とつぶやいて立ち去った。それにもかかわらず柱の影で涙を流しているブラームスが目撃されている(318ページ)。


。。。なんつーツンデレ!ブラームスの音楽そのまんまやね。


ブラームスの書庫には膨大なコレクションがあり、楽譜もたくさんあったらしいのですが、その中にブルックナーの7番、8番、テ・デウムもあったそうですね。ちゃんと研究してたんだ!


 


ところで最近はネットでブルックナーの自筆譜も簡単に見れるようになったんですね。


中でも第7交響曲第1楽章エンディングのスケッチにはいたく感激しますた。


(ちなみに第1楽章冒頭主題の由来はブルックナーが見た、故人が口笛を吹く夢だったらしいです。(同著206ページ)。すげー)


....スケッチだけに、期待通りの素朴な見た目で、この楽譜からあんな音が鳴り響くとは....(いや、一致してんのかもしれんです。)


とにかく音を聞きながら見ると、「変なおじさん」からチョー偉大な音楽が生まれる歴史的瞬間を追体験できます!


 


(追記:2018年7月2日)


高原英理 『不機嫌な姫とブルックナー団』(講談社) 面白くて一気に読破。後半ウルウル。。ブルックナー、音楽も人間像も大好き!


お酒とクラシック?

2013-09-22 20:27:37 | 何様クラシック

怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒

第九合唱団メンバーのおじ様がお酒を飲んでから吉田秀和風に曰く
「酔っぱらい作曲家の曲は酔っぱらったときにお聴きなさい。酒好きの彼らは飲んだときに極上メロティーが頭に浮かんだはずだから、聴く側と脳波が同期したときにだけ本当の良さがわかるんだよ」

この人はコンサートにはいつもちょっとお酒を飲んでから行っているらしい。

ボクはアルコールパッチテストであんまり酒に強くないという結果が出てるから、ワイン好きのベートーベンとか、いつもベロベロだったブルックナーの音楽を理解できないわけ!?

アルコールなんて普通のものの助けなしに、普通にトランス状態に入れるからこその大作曲家だよね。


スティーヴ・ライヒ『18人の音楽家のための音楽』と11のコード

2013-09-10 18:10:10 | 何様クラシック

何年か前にNHKテレビでたまたまマリンバとかピアノがたくさん出てる変わった編成の音楽をやってるのが目にとまって、ちょっと聴いてたら耳を奪われてしまい慌てて途中から録画を始めたのがライヒ(Steve Reich, 1936-)の「18人の音楽家のための音楽」(Music for 18 Musicians)でした。


それから5,6枚CDを買い漁りましたが、やっぱり最初に見た東京でのライブ映像(アンサンブル・モデルン+作曲者自身の演奏)が一番好きです。ルルルルルルル♪とか

最初から高画質で見たいよー。もう再放送ないの?


60分があっという間!ホンマ掛け値なしの超名曲だす。何度聴いたかな?特に終盤は涙が出そうなくらいカッコええ!いや、泣いちゃった。この音楽は、一体何なんだ!?


「設計図」の11のコードが循環してる('Pulses'で全部登場後、11の'Section'でひとつずつ)だけっていうけど、それでなんで時空を超えて大宇宙を飛び回るような音楽になるのかなー?西洋音楽的な機能和声の進行が全く含まれていないそうですが、自分でちょっと音を出してみてもわからなかったです。。。それにしても臨時記号ナシとは

出典: 同曲のCD解説書 BMG Classics ‎09026-68672-2


こんど来日するときは絶対聴きに行きたいのでライヒ先生元気でいらしてください!

ところでテレビCMの音楽で「おっ、ライヒ?」って思っても結局全部パクリですね。。情けない


(追記)生ライヒ見てきました。めちゃお元気でした!