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かつてのMBA(経営修士)学びレポート

プロジェクト型学習

2009-03-17 01:31:09 | 大学教育・学び
プロジェクト型学習 PBL(project based learning)

以前に、PBLでも問題基盤型学習(problem based learning)について書いたが、今回は プロジェクト型学習 PBL(project based learning)について書いてみます。

2009年2月にプロジェクト型教育(学習)に取り組んでいる京都産業大学と同志社大学のそれぞれのシンポジウムに参加した。京都産業大学は経済産業省で提唱している「社会人基礎力」を育成するための補助事業であり、同志社大学は文部科学省「現代GP」の補助事業という違いから、プロジェクト型教育の出発点と進め方で異なる点はあったが、教育目標としているところは同じである。与えられたテーマに対して学生がグループで調査・研究を行い、解決策や提案・企画をまとめていくというプロセスを通して、その結果として、チーム協働力、課題解決力を身に付けようというものだ。

シンポジウムでは先生方から大学での取り組みについて講演をされた後、PBLを履修した学生からも発表があった。学生の発表はとても興味深かった。プレゼンの仕方の素晴らしさもあったが、履修を終えての感想として、次のコメントがあった。「企画や提案をした時や、誰かに説明したり発表した時は、どうしたら納得してもらえるか?と、まずは相手のことを考える経験ができた。」「僕たちはメールで情報交換ばかりしていて、グループで本音を言い合うことがなかったけど、討議するという経験ができたのは良かった。」「課題の答えを出すことに意識がいっていたけれども、それよりも自分を知ることができたことが大きかった。自分に足りない点、成長したところに気づけた。」「リーダを任されたけど、うまくいかない時は逃げ出したくなった。自分の力の無さを感じた。」
この最後の2つのコメントは、PBLがメタ認知の効果があることを示していると言えるだろう。

今回は、プロジェクト型学習(または教育ともいう)とは何か?についてその定義と目的について考えてみたい。
三重大学の教育学部ではPBLのガイドラインとして以下の3項目をあげている。(※)
① 学習者の主体的な学習を促している。
② ある問題を解決する、もしくはあるプロジェクトを完成させるといった「問題解決事態」の中で学習を進める。
③ 集団での問題解決活動が含まれている。
※(三重大学教育学部PBL 教育研究プロジェクトより)

つまり、「学生がグループで主体的に課題に取組み、課題解決をする学習形態である。」「主体的」であるとは、テーマは与えられるが、自分たちでどのように取り組むかを計画し、調査・研究・活動・分析・まとめ・発表という「活動」が不可欠だ。活動しなければ成果が得られない。講義を聞いていれば知識が入ってくるわけではない。静的な学習ではなく、「動的」である。

次に、プロジェクト型学習の「プロジェクト」とは何か?について考えてみたい。
「プロジェクト」は企業や行政で盛んに行われている活動であるが、以下の特徴がある。
1. 期限が決まっている。
情報システム構築であれ、企画提案であれ、スケジュールのデッドラインは決まっている。デッドラインを超えると、それを前提にして組まれている業務が全て狂うことになってしまう。契約違反になり、損害賠償請求の対象にもなりえる。約束の期限内で完了することが求められる。 

2. 「成果物」を創造しなければならない。
プロジェクトの目標は「成果物」である。成果物には「有形物」、例えば、商品やデザイン開発、パンフレット、DVDを作ることが考えられる。また、企画書、提案書、報告書などの「文書」である場合もある。形の無い「無形物」も目標になる。例えば、子供向けの教育プログラムを開発し、そのプログラムを子供たちに提供するといったことや、町内の商店街を活性化するための催し物を計画し実行するといったことも考えられる。いずれにせよ、何かしらの「成果」が目標として設定され、それを期限内に達成しなければならない。

3. チーム・マネジメントが必要である。
グループで活動をするので、組織をマネジメントする必要がある。マネジメントの対象となるのは、「人」と「活動・進捗」と「成果」である。メンバーに役割りをアサインメントし、目標を共有し、細かな点を含めて、メンバー間の様々なことを調整しなければならない。リーダーシップとチームワーク、フォロワーシップが大切になってくる。そして、活動、進捗のコントロール。成果の見通しをつけて目標との乖離を埋めていく。面倒な問題も多く発生してくるので、1つ1つやっていくと手間がかかる。

4. リスク・マネジメントが必要である。
スケジュールが予定通りに進まないことや成果物の品質の目標と現状との乖離が大きくなりすぎて、リスクがクライシスにならないように、ヘッジとコントロールをしていくことも必要になってくるだろう。問題点をお互いに共有して、対策を打っていく軌道修正だ。

5. コミュニケーション力が不可欠。
私が大学生の頃は、大きな教室で先生が講義をし、それをノートにまとめることが大学での授業だった。後は、図書館で本を読んでまとめることであった。コミュニケーション力は大学の授業では必要なかった。サークルとかバイトでは必要であったが・・。

社会で行われているプロジェクトを大学教育の場で体験することで、プロジェクトで遭遇する多くの体験ができるだろう。プロジェクトマネジメントに必要な複雑で難しく面倒な問題を解決していく能力も身につくかもしれない。例え、身につかなくても、社会で求められる能力のイメージをもち、現状で不足しているものを認識し、努力のきっかけにすることであっても大きな意義をもつだろう。
ただし、プロジェクト型学習が単なる社会の真似事に終わってしまい、「やっただけ」にならないように、授業を設計し、運営する側の配慮も大切になってくる。このあたりは次回に考えてみたい。

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