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かつてのMBA(経営修士)学びレポート

日本とアメリカの学生における学習の違い

2010-10-09 14:23:01 | 大学教育・学び
日本とアメリカの学生における学習の違い

作家の高村薫氏は、「企業も、あるいは国や私たち生活者も、少し先のことを考えて、今何をどうするべきかという発想ができなくなっており、それがいまや日本人の体質になりかけている。」と指摘し、
その背景にあるのが、社会に蔓延する「不安感」であり、その「不安感」が日本人を思考停止にしているのではないかといっています。

不安しかない未来を考えたくないという気持ちになるのは仕方ないことかもしれません。しかし、「仕方がない」と済ませていることがまさに思考停止そのものではないでしょうか。

新しい学習指導要領では教育目標として「生きる力」を育むことがいわれています。不安社会で生きる力を育むために、教育は何ができるのかを考えることが大切です。

教育によって習得する能力には多くのものがあります。
まずは、知識を覚え、その背景や理論を分かるといった「記憶力」や「理解力」、次に知識を使って問題を解く「活用力」、さらに、知識を自ら調べる「探求力」です。
これらの能力は、学習モデルとして、「行動主義」、「認知主義」、「学習転移」として、日本では初等・中等教育で習得し、世界の中でも日本人の水準は高いところにあるといえます。

しかし、大学受験までは猛烈に勉強してきた学生は大学入学後に、学習から遠ざかります。
総務省調査データ(2006年)をもとにして中教審が作成した資料に「学校段階別の学習時間」に、1日の平均学修時間データがあります。それによりますと、小学生:5時間17分、中学生:6時間30分、高校生:6時間23分、大学生:4時間04分となっています。 
大学生は授業時間が少なく、アルバイトやサークルなどの活動の多さも影響しているのでしょうが、最も少なくなっています。

アメリカのモンタナ大学で教授経験がある橘由加先生は、
「モンタナ大学の学生に過去10年間教えてみて、とにかく勉強量の多さとその真剣な勉強ぶりには驚かされた。アメリカの大学生の中には、週日平均睡眠時間が3~4時間で、1週間何百ページにもなる課題図書の購読をこなす学生も多い。学生たちのファッションは実にシンプルで、学内で化粧をしている女子学生はまれである。毎週金曜日の午後以外はひたすら勉強という感じである。」
と、「アメリカの大学教育の現状」(2004年)の中でいっているとおり、アメリカの学生との違いが見て取れます。

アメリカピッツバーグ大学の岡本昌裕先生によると、
「(アメリカは)小学校から高校までの教育 (特に公立学校) のレベルは決して高いとは言えない。
したがって特に高卒レベルの労働者の質は全体的には日本の方が高いだろう。筆者が問題にしているのは日本の大卒の労働者の質的レベルである。
アメリカの大学生は授業以外に一日に7.6時間も勉強している。これは平均値だから、アメリカ人学生といっても平均よりずっと下の人はあまり勉強はしていないことになるが、アメリカの大卒の半数は学生時代に授業以外でも一日に7.6時間以上勉強した人たちである。
日本の大卒で大学時代にそれほどの勉強をした人はごく一握りのはずである。アメリカの高校までの教育の実態やレベルの低い大学の実態だけを見て、自分達はアメリカ人より優秀だと思っている日本人が多いが勘違いもはなはだしい。
日本の大卒が大学で取得した専門的知識の平均的な量とアメリカの大卒のそれを比較したデータというのは見たことがないが、アメリカ人の方が上であるとしか思えない。
未来を担う若者が勉学に精進しない国が発展するはずがない。このままでは10年後には日本は相当程度衰退しているであろうし、その衰退は既に始まっている。」(「My Odyssey masahiro's website」2009年より)

学習時間は日本とアメリカの違いが明らかです。しかし、学習は時間だけではなく、質も重要です。日本の学生の学習の質はどうでしょうか。
2007年に東京大学が行った研究結果があります。
それによりますと、
「大学生の4人に3人は『自分で勉強するより、必要なことはすべて授業で扱ってほしい』と考え、授業内容では『最先端の研究』よりも『学問の基礎』を重視している学生の方が多いことが18日、東大研究グループによる調査で分かった。
授業と直接関係のないことを、独自に学ぶのは少数派であることも判明。高度な専門知識を自ら習得するという学生のイメージからは程遠く、受け身の傾向の強い現在の学生像が浮かび上がった。」

これだけで、日本の学生の学習スタイルを結論付けることは乱暴ではありますが、「受身的な」学習に至る背景も分かるような気がします。「受験」というテーマと「合格する」という明確な目標がある場合には、みんな頑張って勉強する。これがが多くの日本人の学習スタイルではないでしょうか。
目ざすものが明らかな時には勉強するが、目標が見えなくなると、とたんに勉強しなくなる。そんな学生像が想像できます。冒頭で紹介した高村氏指摘する「日本人の体質」に共通することです。

ここから、どのようにしていけばよいのか?
さてさて・・・、であります。

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