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かつてのMBA(経営修士)学びレポート

プロジェクト型学習 その2 教育目標

2009-04-29 17:04:16 | 大学教育・学び
プロジェクト型学習を考える その2「教育目標について」

前回に続き、プロジェクト型学習について書いてみます。今回は、教える側にとってのポイントを考えてみます。ただし、「教える」とは言っても、プロジェクト型学習は学生側が主体となって学んでいくものであるため、「ファシリテート」といったほうが的確かもしれません。

「教育」であれ「学習」であれ、「学び」には「目標」が必要である。教育目標、到達目標、学習目標といったいろんな言い方がされますが、要は「何を学ぶのか」を明確にしておくとうことです。学生とも共通の認識をもっておくことが重要と考えられます。

プロジェクト型学習の教育目標については、多くの大学での実践によって、概ね次のようにまとめました。
1. 問題発見、問題解決について学ぶ
さらに具体的に分類すると、
① 計画力、企画力
② コミュニケーション力、交渉力
③ 問題を整理する力、分析する力
④ コントロールする力:スケジュール、品質、予算または経費、リスクに対する管理力
⑤ 組織運営力:リーダーシップ、フォロワーシップ
⑥ 行動力、協調性、助け合い精神
  これらの力は、経済産業省が提唱する「社会人基礎力」、厚生労働省の「就職基礎能力」に通じるものと言えます。学校だけでなく、社会でも有用な力という意味で「普遍的」な力、「ジェネリック・スキル」ともほぼ同じと考えてよいと思います。企業の人材育成では、「ポータブルスキル」とか「ビジネススキル」という言い方もされます。

プロジェクト型学習では、与えられたテーマ・課題に取り組んでいくわけですが、決まりがあります。グループで取り組むこと、エンドの期限が決まっていること、成果を出さなければならないこと、学外の社会資源と連携・協力することが求められていること、こういった前提条件があるおかげで、上記の①から⑥は「やらざるを得ない」ことになります。つまり、プロジェクト型学習には、問題発見・解決力を発揮しなければ前に進まないように、「埋め込み」がされているということです。逆を言えば、問題発見・解決の力を発揮しなくても成果が出せるものはプロジェクト型学習の定義から外れると考えてよいのだと思います。

2. 学問について学ぶ
大学でプロジェクト型学習を行う意義として、「学問」について学ぶことがたいせつなことだと考えています。同じ「プロジェクト」でも、社会で取り組むプロジェクトは、そこには事業とか業務についてですので、企業の利益は外せませんし、社会の動向、消費者の感情といった「現実世界」をベースにする必要があります。理論よりも現実、理想よりも現実を優先する場合が出てきますし、企業が存続し続けるためには、当然のこととして受けとめられています。
しかし、大学で取り組むプロジェクト型学習は、学問について学ぶことが大切だと思います。この場合、学問には2つの要素があります。
1つは、特定の専門分野についてです。例えば、同志社大学のプロジェクト型学習として行われた「きものをプロデュースしてみよう」では、きもの離れの実態をマーケティングリサーチして調査することが行われていたようですし、京都産業大学でもマーケティングの理論を組み込んでいました。たとえば、他にどんな専門分野が考えられるのかを私なりに考えてみると、裁判官制度をテーマとすれば、法律の意義や解釈を学ぶことにつながり、環境問題であれば、政策学や工学(モノ作り)、農学を深く学ぶことになるだろう。調査をすれば、統計学を学ぶことにもなる。伝統産業の革新であれば、文化、歴史、マーケティングを学ぶことになる。専門分野には学問としての体系があり、多様な学説や学問成果があります。そういったものに触れることで、学問としての論理性、奥の深さ、視点の多様性を学ぶ機会になります。
2つめは、学問の基底をつらぬく理念である、「問いを立てる力」、「批判的思考力」、「オリジナリティ」を学ぶことだと思います。大きな教室で行われる知識伝達型教育では教員の話すことを理解することが目標でしたが、プロジェクト型学習は少人数で教員とのやりとりが緊密に行えるメリットを生かして、学問にとって大切な姿勢を学ばせることが可能だと思います。「伝統産業を活性化しよう」というテーマだとします。このテーマを展開していって、何が問題になっているのか? その問題はどうして起こっているのか? 何が問題か? 問題を解決するにはどうしたらいいのか? という「問い」です。伝統産業がそのもてる魅力にも関わらず、停滞・減退しているのなら、なぜこういう事態になったのか? 何が間違ったのか? という批判精神。原因分析と提案ではこれまでにないアイデアを形にする独創性。このようなファシリテートが可能ではないかと思います。

  次回は、プロジェクト型学習の授業設計について考えてみたいと思います。

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