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秋の珍事

大人になって映画館で邦画を観る回数がめっきり減った。ドイツで寅さんを見たのが最後じゃないだろうか。理由は簡単、つまらん映画が多過ぎるから。アイドルを出すだけ、漫画の焼き直し、スケールが小さい。一番腹が立つのは泣かせてやろうという意図が透けて見える映画だ。ということでここ十数年は洋画専門といっていいだろう。

そんなぼーずが上記4拍子揃った映画を観に行ってしまった。題名は『おくりびと』ご覧になった方もいると思う。結論から言うと、とても面白かった。またコミックで先行はしているものの、脚本は映画用のオリジナルであり、映画の漫画化がコミック版というのが正しいようだ。本木雅弘 広末涼子という元アイドルもそこそこ上手く演じている上、山崎努、吉行和子、余貴美子らベテラン陣が脇をがっちり固めており、見応えのある作品だった。

また納棺師という、お世話になった事があっても、馴染みのない世界を描いたインパクトが大きい。もちろん外国にも似た商売はあるはずだが、欧米だと防腐処理がメインだそうだ。海外からの高い評価は、映画の描く納棺の儀式が、珍しい日本文化と捉えられた事によるのではないか。

館内で、廻りから嗚咽の声は聞こえたが、泣かせてやろうモードは余り感じられなく好感の持てる作品だった。で、お前は泣かなかったのかと問われると・・・へへへ。そこんとこはちょっとネタばれになるので、これから映画をご覧になろうという方はここで止めて頂きたい。

オーケストラのチェロ奏者という職を失った本木君が飛び込んだのが納棺師という葬儀屋の下請仕事。見習いにも慣れ、初めて任された仕事は若くきれいな女性の旅立ちを準備する事だった。習った通り手際よく、遺族に見えないよう着物をかけた遺体を湯灌【ゆかん:映画では消毒液を含ませた布で拭いていた】した時だ。突然彼の顔色が変わる。

なんと、女性には付いていない筈の物に気付いたのだ。それを耳打ちされた社長の山崎努は母親らしき人に『化粧は男性用、女性用、どちらにします』と小声で確かめる。そして遺族の希望通り、きれいに死に化粧を施し葬儀は終わる。

父親が帰ろうとする本木達に向かい、『自分は息子が女になってからというものあいつの顔をまともに見た事がなかった。それが今日になって初めて向かい合う事が出来た。とてもきれいだった。有難う』と悲しみを抑えながら訥々と語る。ここにはじーんときて、つい涙腺が緩んでしまった。

父親を演じたのは大谷亮介。自由劇場を皮切りに、自分の劇団東京壱組の座長で活躍した男だ。ぼーずとは中学、高校のツレである。サッカー小僧の元悪ガキに泣かされてしまったのは歳のせいだろうか。
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