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題名の妙

原題がそのままタイトルになることが多い映画だが、その昔は邦題を工夫するのが普通だった。水野晴郎氏の発案と言われる『007危機一発』は余りにも有名で、学生がまともに危機一髪と書けなくなり社会問題にすらなった。

強いて約せば『お尋ね者・・・生死に関わらず(賞金あり)』になるであろう、Wanted Dead or Aliveを『拳銃無宿』とやったのは中々のアイデアだと思うが、The Eagle Has Landed!に『鷲は舞い降りた』では余りにも芸がないような気がする。兼ね合いが難しそうだ。

人気のある作品だけが期間限定で配給される映画では無理があるが、話題になっている間ベストセラー本は読まない主義を貫いてきたぼーずである。400万部(ホントかね?)のベストセラー『バカの壁』も会社にあった奴を斜め読みしただけだ。・・・もうそろそろ読んでもいいかも(笑)。それなのに、これには負けた・・・題して『おっぱいとトラクター』。

原題はA Short History of Tractors in Ukrainian。本来の『ウクライナ語版トラクター小史』(青木純子氏訳)という堅そうな題名をどうやったらこんなタイトルに出来るのか?原題は著者マリーナ=レヴィツカ氏の父上が実際に書いた論文名を流用したそうだ。おかげで小説の発売当初、本が農業関係書籍に仕分けされたという笑えるエピソードが後書きに書いてあった。それを避ける為だろうか?我が国ではかくのごとき秀逸な邦題となった。

この本は大戦後、共産化した母国からイギリスに移住したウクライナ人家族の物語である。母親が亡くなってしばらくした頃、80歳を超えた父親が36歳のグラマラスな女性と結婚すると言い出した。女性は一家と同じウクライナ人だが、主人公と姉は永住ヴィザと生活費を得るための結婚と考え、あの手この手で父親の結婚をやめさそうと企む。

家族間のドタバタに加わり、周りの人間がこの騒動に巻き込まれてゆく過程がたまらなく面白い。小説の中でも父親が執筆中という事になっている、トラクターの歴史が物語の中にちりばめられ、トラクターから戦車が誕生したなどというトリビアがいい味を出している。

文庫本としては結構ボリュームのある方だが、面白さの故か1日で読み切ってしまった。笑わせてやろうという臭さが無いのに読んでいる内に笑ってしまうという本なのだ。もちろんこれは作品そのものが魅力的であり面白いのだが、訳者の力量にも瞠目すべきだと思う。この先、訳者青木氏のファンにもなりそうな予感がする。
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