Blog ©ヒナ ─半径5メートルの毎日から見渡す世界

ラテンアメリカでの日々(1999〜)、さいたま市(2014〜北浦和:2021〜緑区)での日記を書いています。

ちょっとダイソーに聞いてみたいんだが・・・

2021年06月19日 | 日本で暮らすなかでの日記

 

ナカタは2020年の暮れに、都内からこのさいたま市の外れの田園地帯、藪の隙間に埼玉スタジアムが見えるところに引っ越してきた。最寄り駅は東京メトロの「南北線」は浦和美園駅(埼玉高速鉄道の乗り入れ)だが、ここいらは新興住宅街なので、古くからのゴチャゴチャ店の入り組んだディープスポットなんぞはない。クソでかいAEONがあるくらいで、コロナ禍も相まってやることといえば百均ショップDAISOで変わった調理器具や便利グッズを買っては簡単レシピや家の周りにネコ回廊を作るくらいしかない。

さてこのDAISO。三月の半ばからキャンペーンをやり始めた。「だんぜん!ワクワクキャンペーン」──三〇〇円買うごとに1枚シールが貰える。それを台紙にペタペタ貼っていく。「ヤマザキ春のパン祭り」システムだ。二八枚(8800円の購入)でちっちゃなフルーツナイフが。MAXの三五枚で三徳包丁か先の尖ったシェフナイフが欲しければ三五枚(10500円)が必要だ。

 

 いま書いている本は、岩手県北部の戦後開拓地が舞台なのだが、猛烈な勢いで岩手を訪れ、盛岡に滞在しているとき、いつものホテルに居れば三食は裏のコンビニだった。丁度、大好きな「リラックマ」のお皿が、シールを貯めると貰えるとのことで、バカみたいに毎日おでんを二、三品よけいに買って集めていたが、あと数枚で帰京し挫折したことがある。『リラックマとカオルさん』が観たくてNetflixに入ったくらいだから、あのお皿は本当に欲しかった。

 こんな挫折はもう懲り懲りだと、今度はガチでAEONで買い物してトイレに行きたくても、三階のDAISOに行ってあれやこれやと「買い忘れていた買い物」をねつ造した。考えなくても(300円でシール1枚なので)DAISOの買い物では、三の倍数で品物を買い物カゴに入れるようになった。時には頑張って、乾燥ワカメや乾燥ヒジキを6点追加購入したこともある。帰途の手荷物も重くならないし、お買い得の量なのだが、これらにも賞味期限があることを知ったのは、ずっと後のことだった。

 いまは一軒家をシェアしていて、共同の業務用冷蔵庫の扉にシールの台紙をマグネット止めしているものだから、気付いたフラットメートも「ナカタさん、ここシール1枚おいておきますね」と協力してもらい。

 先週、念願の35枚が貯まった。雨だったが何の躊躇いもなくAEONに行く。景品交換の為だけに来店したと思われたらいやだなぁと、何の根拠も効果も無い体裁を繕い「マタタビ入りネコの爪とぎ」を一つ手にして、平日午後の誰も居ないレジに、これまた何の理由も必要も無い髪にワックスをつけ、お気に入りのZARAのオードトワレを匂わせた、職質されても何の不思議もない中年が並んだ。

 大阪の天神橋筋商店街をママチャリで疾走してそうなパーマをあてたレジのオバちゃんに、内部情報的雰囲気を過度に誇張したような小声と仕草で「これ、本当によく切れるんですよ」と、背筋が凍りそうな笑顔で言われながら──「では商品一点と合わせまして、550円です」。

 

「・・・」「は?!」

 

 『だんぜん!ワクワク・シールキャンペーン』の台紙の裏を二度見する。「シール35枚」の横の「+400円(税抜)」を、完全にみていなかったことに気付く。

 なんなのだ。計算すりゃ、1万以上も突っ込んだんだぞ。何日かかったと思ってんだ。こんなけ苦労したんだからシャキッっと「差し上げます」にしとけよ。

 1万歩譲ってもだ。「百均のダイソー」で全国区の代名詞になったくらいなんだから、100円で売れ、といいたい。もちろんダイソーには200円や300円の商品もあるし、500円で買ったBluetoothのスピーカーは文句ないコスパでいまでも愛用している。いまここに来るときに通った農道でも、『Do the Right Thing』(スパイク・リー監督)に出てくる黒人のように、ラップではないがBPM150くらいのトランスで騒がしてきたばかりだ。なのに何なんだ、この400円という絶妙に中途半端な値段は。ならば「シール40枚で無料」とかにして貰えんものだろうか。

 「断然ワクワクキャンペーン」から微妙に「ワクワク」が瓦解していく。

 

 

 家の冷蔵庫にはこの時の為にキャベツをホールで買ってある。昔、大工修行をしていた幼馴染みが突然ケツ割って駅前にお好み焼き屋をはじめたが、ナカタを含めた酒飲みがバイト帰りに必ず立ち寄り、勝手にサーバから生を継いでは飲んでいたのを見かねて、「キャベツ一個千切りしたら生中一杯」というシステムを作った。だからナカタはキャベツの千切りだけは専業主夫並である。ちなみにそのお好み焼き屋は、「キャベツを一個千切りにする」→「生中をもらう」→「飲んでアガる」→「他の客がゆっくり食べれなくなる」→「お好み焼きが注文されない」→「:│┃」の無限ループで、一クール持たずに閉店した。

 

 さて、千切りをはじめよう。開封したシェアメートが「あ、これ、刃こぼれしてますよ」。

 もう「ワクワク」の「ワ」の字が底を尽きる。ならばトコトンまで、とスマホを取り出して包丁を「Google Lens」で撮ってみる。WebのURLが出た。会社も同じだ。商品特定。リンクに飛ぶ。

・・・メルカリで1999円。「諭吉」は流石に出てこないと思ったが、「英世」でも二人は要らないなんて。何もまだ切ってないのに、込み上げるは「ワクワク」ではなく圧倒的な切なさ。

 

 とはいえ、もはや耐震用緩衝材や気持ち悪い洋服ダンスの芳香剤と化した乾燥ワカメや乾燥ヒジキ、摺りゴマや高野豆腐の賞味期限は、どうにか今年いっぱいはイケるみたいだし、この包丁も、切れ味は文句ないし、何よりも重心が絶妙で、ストンと握り柄を落とす感覚で完全に切れる。

 

 ただこのキャンペーンに一生懸命参加した意義を納得する為の、思考の切り口はまだ見つかっていない。

 

・・・クソみたいな「下げ」ですみません。



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