僕に音楽を教えてくれた人たち。(後篇)

2011-12-11 13:11:45 | 異人伝

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前回のあらすじ:結局、誰も音楽を教えてくれなかった。僕は音楽をできる状態に居続けることしか、してこなかった。後篇にも登場人物が3人いる。彼らもまた、何かを教える人たちではないことを想像するのは、難しいことではない。前回はダラダラと長かったので今回はシュッと書こうと思う。
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井上純夫さんという人が雫石に住んでいる。漆器の職人さんだけど、バイオリン(彼らはフィドルと言っている)を始め、ギター、マンドリン、バンジョーなど弦楽器ならなんでも弾ける人じゃないかと思う。純夫さんがやっているのはオールドタイムという音楽で、木の音がバシバシ響くダンスミュージックと言えばいいのか?コードも1個か2個でシンプルな縦にのれる音楽。
音楽仲間が来た時に呼んで貰える。知らないおじさんたちの脇で、僕はとりあえずコードを探った。でも。ギターは大抵AかE、偶にG、ぐらいでこと足りた。ズンジャカズンジャカのリズムがなかなか取れないけど、おじさんたちは気持ち良さそうに弾いている。偶にベースランの大外しの時だけ、バンジョー弾きの冷たい視線が飛んでくるけど(余計なこと、すんな!って感じで)、純夫さんは分かってるんだか分かっていないんだか、うんうん頷き笑顔で弾き続けている。終わり所が分からなくなって、何時間にも渡って同じ曲が続き、気が付いたら朝、ってこともあるらしい。強面の冷たい視線を投げかけてくるバンジョー弾きの人が、何度か寝ながら弾いているのを見た。なんだか、凄く、感動した。純夫さんも、音楽を教えてくれる人ではない。「じゃあ、弾いて、適当に入るから!」いつも、こんな感じ。「えっとね、多分・・・A、ま、適当に!」      いつも、こんな感じ。
この間、黒澤笑子さんの個展開催中に、キクチさんとN2‐STUDIOで音楽をやった。7月だかにバンドを解散してから、一度もギターを触っていないって言ってた。「バンドとか、ロックとか、パンクとか、そういうのじゃなくて音楽をやりたい・・・」と、そう力弱くでもなく言っていたので、じゃあ!と、N2をお借りしてやることにした。僕みたいなミュジシャンでもない、精々、愛好家とやるのに、早起きしてギター2本の弦をバシッと張り替えて来てくれて、「この人は、良い人だ・・・」と、思った。(僕のギターは1カ月前に張ったきりだったから・・・)
KORGのカオシレーターで、適当に120bpmぐらいでシンプルにビートを鳴らして、それに初めて触るストラトが乗っかった。やっぱり、僕はギザギザのリフを上から叩くように弾いて、キクチさんが自由に入ってくる、という形になったのは、僕の腕前の所為。でも、僕はこういうザクザクした音楽が、好きだ。 ノンビートで、ダラダラやっていると、いつの間にか踊り手さんが視界の隅から入ってきた。   自由なダンス、ギザギザしたリフレクション、リラックスしたソロ、突然入ってくる過去に向かう陽一さんの呟き。 
次々と取り換えられる楽器、こういうカタチが好きだ。あと、偶然だけれど、PUMAのスニーカーはカッコイイ。
2人まで、出た。3人目はシンセ奏者のイノウエくん。なんか、この人とやっている時が楽しい。キュッとコンパクトな音楽ができる。特になんでもないのだけれど、IKEAの家具を中国人がコピーしたような音楽ができる。それはそれで、最高だ。詳しいことは、紙面の都合上CUT。
まだ、何人か居るような気がする。技術的なことではなく、そのスピリット!と言うか、そういうのを教えてくれた人。
でも、結局は誰にも教わらないで、ただただ音楽の傍に居続けてきた。だから、全然上手にならない。全然、弾かないし。けれども、退屈にならない。余白の多いまま、決して余白に迫らないまま、音楽を続けている。「こういう風に弾けたらいいなあ・・・」と思うことが、忘れた頃にできるようになっている。ゆっくりと旅をしているようだ、と思う時がある。好きな音や景色が、少しずつ増えていく。
だから、結局は皆、わざと教えなかったのでは・・・!?と、思えてしまう。
そうだったら、教わらなくて良かった、そう、思うようにしている。

 


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