『ドナウ寿司』という、ゆらぎ。①

2009-01-08 17:02:51 | 異人伝
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 ハンガリーのブダペスト、僕が持っている大きな縮尺の地図は東欧をほぼカバーするが、当然、街の地図などはカバーしていない。半分だけ乗り方が分かったような地下鉄は余り多用することができない。例え、したところで、駅の読み方すら分からないから、そこに何があるかなんてもんは、雲の上だ。従って、仕方なく、歩くことにした。    そしたら…!?

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 遠くから「日本人ですか?」と、声をかけられた。困っている日本人であろう僕。そんな、足取りは軽いが、表情は鈍い、であろう日本人。実際に、大層、困っていた。

 大都市で何の手掛かりも無しに、安宿を探し当てることは、とても困難なことだ。建物が高いし、古い、通りは長い。視界にどんなお店があるのかを把握することすら、困難。そんな状況でも、中国や中央アジアであれば、大きなバックパックを背負っている人を見つけて、その人に訊けばいい。それっぽい人は、簡単に見つけることができる。アジア『以外』の顔を探せばいい!
 そして「何処に泊っているの?そこは、いくらざんす?」って、訊けばいいのだ。

 しかし、中国人と日本人を見分けることができない欧米の人らと同じように、こちらも、そっちの顔を見分けることができない!どいつに訊けばいいのか、まったく、分らない…。

 そんな中での、「日本人ですか?」

「そうですが、…なにか?」気取ったところで、どう見ても商社マンには見えない。だから、事情を説明。安宿を探していることを明かす。すでに、バレバレだったろうけど。「分からないけど、誰かが店に置いて行ったガイドブックがあるから、今から店に来る?」という返答。最初から一貫して、日本語に驚くこともなく、「行きます!」と発していた。

 バスを2回くらい乗り継ぎ、路地の路地を入って行くと、そこだけ『変な日本』な、場所に辿り着いた。入るなり、ガイドブックを僕に渡すと、おっちゃんは奥に入り仕込みを始めた。ガイドブックをペラペラめくり、インフォをメモ帳に書き写していると、突然『おでん』が出てきた。隣におっちゃんが同じメニューの前で座ったので、賄いエッセンスがあった、有り難くご飯と共に頂いた。ドナウで捕れた海老からとったと言う出汁は、さっぱりしていて、人参や大根にとっても良く合っていた。お洒落な味の、関西風おでんだった。

 おっちゃんは、こちらのホテルに招かれて来ハンガリーし、その後、とんでもない紆余曲折を経て独立をし、店を構えているんだ!といった話をしてくれた。僕は、丁度良いところで「へぇ、そりゃ、面白い!」と結論付け、記憶することを放棄したので、詳細はここに記すことはできない。表題に『ドナウ寿司』と書いたが、メニューに寿司があったがどうかさえ、定かではない。


 そんなことがあって、先日、急にそのことを思い出した。

 表題に『ゆらぎ』という言葉をつかったけど、その話は、次に譲ろうと思う。実は『ゆらぎ』の話をしたかったんだ。ということで、プロローグ的なところで、今回は、おしまい。




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