沈没したロシア軍艦「モスクワ」の乗員は
どこへ？ “消えた水兵”の母親たちの叫び
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「息子は恐怖で泣いていた」
</picture>沈没したロシア海軍のミサイル巡洋艦「モスクワ」 Photo： DPA / Picture Alliance
沈没したロシア軍艦「モスクワ」をめぐり、ロシア国内で緊張が高まっている。ロシア国防省は「乗員はすべて退避できた」と発表しているが、水兵の家族たちから「うちの子は死亡した」「行方不明になっている」との声が上がっているのだ。
ロシアの黒海艦隊の旗艦であるモスクワは先週、ウクライナ軍の ミサイル攻撃を受けて沈没した。ただロシア政府は沈没は認めたものの、「激しい嵐」のせいで損傷し、積んでいた弾薬によって火災が起きたからだと主張している。
さらにロシア国防省は14日、乗員全員が退避できたと発表。ロシア当局はこれまで公には死者も負傷者も確認していないとしている。 ところが、一部の乗員の家族らは当局の発表とは矛盾する証言を、ロシアのメディアやSNSで訴えている。
とくにロシア兵の母親たちがSNSでつくったグループには、行方不明になった息子の写真や情報を求める投稿があふれている。 18日には、4人の水兵の家族がロシア最大のSNS「フコンタクテ」で写真を公開し、沈没のニュースが報じられて以降、連絡が取れないと訴えた。
「モスクワの水兵の捜索に加わってください！」
「兵士の家族の方々、皆さんの息子に聞いてみてください。
退避の際に、うちの息子を見ているかもしれません。
あるいは、皆さんの息子さんが今、
うちの息子と一緒に病院にいるかもしれません」
ある乗員の母親は、彼女の息子は生き残ることができたが、
その息子によれば、約40人が死亡し、大勢が負傷したという。
この母親は匿名で、ロシアの独立系新聞「ノーバヤ・ガゼータ」の欧州版にそう語った。同紙は彼女の息子がロシア海軍に所属しているのは事実だが、モスクワが沈没した時に乗船していたかどうかは確認できていないとしている。 母親は同紙に次のように語っている。
「息子は私に電話してきて、死者と負傷者、行方不明者もいると 言いました。彼は目にしたことの恐ろしさから泣いていた。全員が生存できたわけではないことは明らかです」
ロシアの独立系調査報道機関「Agentstvo」は、モスクワに乗船していたヴィタリ・ベジャースキーの死亡を確認したと報じた。ロシア国防省から、ベジャースキーのいとこに連絡が入ったのだという。彼は太平洋に面したロシアの小さな村出身の徴集兵だった。
若き徴集兵ばかりが犠牲に
ロシア国防省は先週末、モスクワの乗員を撮影したものだとする 動画を公開した。そこには100人余の水兵の姿が見てとれるが、沈没当時にいったい何人が乗船していたのかはわからない。ただ、過去のロシア国営通信の報道や国防省のリリースから判断すると、500～600人のあいだで変動していたと推定できる。
17日、ドミトリー・シュクレベツという父親が、徴集兵である息子のエゴールが行方不明者の1人であると、フコンタクテに投稿した。モスクワの指揮官から連絡を受けたのだという。
ロシア当局は「全員が退避したと言ったが、人を馬鹿にした見え透いた嘘だったんだ！」とシュクレベツは書き込んだ。「詳細を聞き出そうとしたら、指揮官らは私との連絡を絶った。口を閉ざすべきではないと思っているみんなに頼みたい。どうかこの私の訴えを拡散してほしい」
その後、シュクレベツのもとには、同じようにモスクワに乗船していた我が子が行方不明になっていると嘆く3家族から連絡があったという。
本紙ワシントン・ポストが露メディアの報道や家族の証言をもとに調べたところ、名前まで特定できた行方不明者は少なくとも7人、死者は3人だ（4月18日時点）。 その犠牲者の1人が、アンドレイ・ツィヴォフ（19）だ。
母親が英「BBC」ニュースのロシア語版に語ったところによれば、彼もまた若き徴集兵だった。 「徴集兵があの軍艦に乗っているわけがないと、（軍の兵站部から）言われました。どこかロシア国内の違う場所に駐屯しているはずだから心配ないと言われたのです」と、母親のユリアは言う。 だが、のちに軍部から電話があり、息子の死を告げられた。
ロシアの徴兵制は18～27歳の男性が対象で、任期は1年だ。ウラジーミル・プーチン大統領と国防省は、徴集兵がウクライナへ送られることはないと誓ってきた。 だが3月初めにウクライナ軍に捕まったロシア徴集兵の動画が公開されると、ロシア軍高官は認めざるを得ない状況に追い込まれた。いわく、一部の徴集兵を「間違って」ウクライナへ送ってしまったそうだ。
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