或るアイルランドの漁村の港に小さな漁船が入ってきた。一人のアメリカ人旅行者が漁師たちの魚の鮮度を褒めて、それだけの漁にどれだけの時間がかかったのかと尋ねた。
「そんなにかからんさ」と彼らは一斉に答えた。
「どうしてもっと長く漁をしてもっと獲らなのかね」漁師たちは答えた。自分たちの必要を満たし家族を養うにはこれで十分なのだと。
「けど余った時間をどうして過ごすんだね」
「俺たちは遅くまで寝て、少し漁をして、子供たちと 遊び、女房と楽しむのさ。夕方からはダチに会って少し飲んだり、楽器を弾いて歌ったりするのさ。それで十分な生活さ」
旅行者は割り込んで言った。
「私はハーバードでMBAを取得したんで君たちの力になれるよ。君たちは毎日もっと長く漁をすべきだ。そうすれば余分な魚を売って稼いだ金でもっと大きな船を買えるじゃないか」
「でその後は?」
「大きな船で更に稼いで2隻目、3隻目と船を買っていってついにはトロール船団だって手に入る。そうすると魚を仲買人に売る代わりに加工工場と直接に交渉できるようになるし、終いには自分の工場だって持てるじゃないか。そしてこんなちっぽけな村を去って、ダブリンかロンドン、いやニューヨークにだって引っ越せる。そこから新しく自分たちの巨大企業を動かせるようになる」
「そこまで行くのにどのくらいかかるかね」
「20年、いや25年」と旅行者は答えた。
「でその後は?」
「その後だって?君たちよ、本当に面白いのはその時なんだよ」と旅行者は笑いながら続けた。
「君たちのビジネスが本当にビッグになれば、株を買ったり売ったりして数百万ドルを手にできるよ」
「えっ数百万ドル、ホンとかよ。でその後は?」と漁師たちは尋ねた。
「その後は引退して、海岸近くの小さな村に住み、遅くまで寝て、子供たちと遊び、少しだけ魚を獲り、ワイフとシエスタを楽しみ、そして夕方からは飲んで友人たちと寛げるじゃないか」
「先生お説ごもつともですが、それは今の俺たちとおんなじじゃないですか。25年も時間を浪費する理由は何なんだね」と彼らは尋ねた。
「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成22年(2010年)4月8日(木曜日)
通巻2933号より
4半世紀前のジョーク(原型)は
アメリカ人観光客がベトナムの奥地を歩いていると川辺でのんびり釣りをしているベトナム人がいたので、
お節介にも説教を垂れた。
「なにを昼間っからグウダラしてるんだ。もっと真面目に働いたらどうだ?」
「そしたらどうなる?」
『貯金してカネがたまり、楽が出来る』
「楽って?」
「のんびり昼寝して釣りが出来るのさ」
「ンならいまと変わらないじゃないか」。