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はづきちさんのはまりもの

まだあったので日記帳になりました

はやのじ ぜぇーと! おーばーますたー 前編 (SS 番外編)

2008-08-09 22:54:34 | SS 番外編
後輩が転職した
規模は知らないが同じ業種だと言う
なら別にここでもいいじゃんと思ったが
奴曰く
「美希がいねぇならこんなとこいても無駄だ!給料でねぇし!」
…正直プロデューサーとしては
アイドルに手をつけてたことが(未満かも知れんがベタ惚れは間違いなさそうだ)
問題になりそうなものなのだが
本人達が幸せならそれでもいいかもしれない
どこかで自分のパートナーを見つけてゴールインしていくのだから
身近にいたなら万々歳だろう
…まあ、それが目的でこの業界に入った人なんて
男にしろ、女にしろ居ないとは思うが
目の前を胸の大きなおっとりお姉さんアイドル候補生が
通ったが気のせいだろう

「ちーす!」
「遅いとか言うレベルじゃねぇ、今何時だ?」
「あたしの腹時計では午前10時ぐらいだが」
そういってTシャツをペロンとめくり腹を出すサイドテール
これが俺の担当しているアイドル候補生「如月千速」
アイドル選択時のパラメータ風に紹介すると

歌 詳細不明(上手い気がする)
ダンス 詳細不明(カッポレはプロ級)
ビジュアル 詳細不明(黙っていれば高い)
性格 破壊神

全くわからない
SDガンダムカードダスの武者か?これ?

「てめぇの腹は壊れてる、今は午後の3時だ」
文句を言いながら服を直してやる
お腹を出して冷やしたら大変だ
「暑いからなー、アイス食べすぎには気をつけろ」
「お前だ、お前」

「で、今日は何なんだ?」
「なんかお前と一緒に来いって社長に呼ばれたんだ」
そう
今日は物凄く久々に社長に呼び出されたのだ
普段は伝言ですと小鳥さんからのお話ですむことばかりだったのだが…
なんだかんだで最高権力者
俺は少し震えている
「ふむ…仲人でも引き受けてくれるのかな?」
「誰の?」
「あたしとお前の」
あっけらかんと不吉な事を言う千速の口を伸ばしながら
向かう先は社長室
「失礼しまーす!」
「ひょう!しゃひょー!ちゃーす!」
「…よく来てくれた」

社長はなんかいつもより影がある
元々真っ黒なんだが、色素が増したと言うか
コントラストが濃いというか
いつもとは違う
深く椅子に腰を降ろした社長からは威圧感さえ感じられる
とりあえず千速を降ろし
お口にチャックのジェスチャーで黙らせ、並んで言葉を待った

「実はな…君にはここを辞めてもらう事にした」
たっぷり待ち、重々しく紡ぎだされた言葉はそれだった
ちなみに千速は張り詰めた緊張感に飽きたのか
なうろーでぃんぐと書かれた紙を社長に貼り付けていた
「…はぁ…って辞める!?」
「えっ!プロデューサー、クビなの!?」
同じく驚く千速
驚きのあまりガムテープで貼った紙を
思わず思いっきり引っ張って剥がしてしまったようだ
社長に貼ったガムテープ付の紙を、すねの
「おおぅ!」
黒い人の軽い悲鳴
「ど、どーなってんだよ!こいつそんなに悪くないだろっ!」
動揺のあまり次々にガムテープを社長に貼っては剥がす千速
「おおぅ!やめっ!痛っ!」
「なぁ!私に悪いとこがあったなら直すからさ!こいつを辞めさせないでくれよぅ!」
涙目でガムテープを貼っては剥がす、慣れたのかすばやい動きだ
「ぎゃ!ぎひぃ!ら、らめぇ!」
あ、社長も涙目
そんなおとぼけコント劇場を見ながら俺は思っていた
ああ、やっぱりな、と

よく考えりゃ俺は千速を担当してからプロデューサーらしい仕事をしていない
いつも千速に振り回されてばっかりだ
オーディション出た記憶が無いし
何でこいつがランクCなのかわからないし

そこに息も絶え絶えな社長の声が響いた
「ち、千速君、君もだ!」
「「はぁ!?」」
まさかアイドルまでクビだなんて!
俺の失敗にこいつまで巻き込みたくない
いや、こいつがクビになるなんて間違ってる
俺じゃダメかもしれないけど
こいつはいつかきっと光り輝くアイドルになってくれる!
くれるはず!
くれるといいな、ちょっと覚悟はしておけ
考える間も無く体が動き、ガムテープを社長に貼る
ビッ!(ガムテープを貼る音)
「そんな!俺は仕方が無いかもしれませんがこいつは残してやってください!」
ビリッ!(ガムテープを剥がす音)
懇願する
「あひゃぁぁ!」
「何言ってんだ!プロデューサーを残してやってくれよぅ!」ビッ!
ビリッ!
「いにゃぁぁぁぁ!!」
「俺の失敗にお前まで巻き込む必要は無い!」ビッ!
ビリッ!
「うひょぉぉぉ!!」
「お前がいない事務所なんて…居ても仕方ないんだよぅ!」ビッ!
ビリッ!
「えうっっっ!」
「…千速」ビッ!
「ぐすっ…プロデューサー…辞めちゃやだよぅ…」ビッ!
ビリッ!×2
「おひょぉぉぉぉぉ!!!」


「えー社長がボロボロになってしまったので、私からお伝えしますね」
ニッコリ小鳥さん、後ろにボロボロ社長
俺たちは正座
「ほら千速、顔出せ」
「うん…」
ハンカチで涙を拭いてやる
動揺していたとはいえ、辞めさせないでと懇願してくれた事は嬉しかった
お互いに子供みたいだったけど
「…えー、こほん!いいかしら?二人とも?」
「あ、はい、すいません」
「なぁ、ぴよちゃん…本当にあたし達クビなの?」
まだ少しぐずりながら千速が尋ねる
小鳥さんは少し困ったような笑い顔
「社長がそんな事言ったの?…全く…」
いたずらっ子を見るような目で社長を見る小鳥さん
視線の先の社長は息も絶え絶えで死にそうなのだが
「という事は俺たちクビじゃないんですか?」
思わず叫んでしまった

「所属を変えてもらうんです」
「所属を…765プロからどこかに出向という事ですか?」
ふむ、移動という事ならまだ納得がいく
担当アイドルも一緒というのは前代未聞だが
編集者が移動する際、担当していた漫画家を連れて行く様なものかも知れない
…あれ?
もしかして押し付けられた?
じっと押し付けられたものを見ると
「見つめるない、ばかん」
とか頬を染めてやがる
冷や汗の俺にさらに続ける小鳥さん
「いえ、あなた達にはフリーになってもらうのです!」
ビシッと決めポーズっぽい小鳥さん
「「フリー?」」
声を揃える俺と千速
「ええ!そしてあなた達の次の仕事先は!」
小鳥さんがパチンと指を鳴らすと
現れたのはダーツとルーレット
響きだすドラムロール
パジェロコールの観客
放たれるダーツ
社長に刺さるダーツ
黒から赤になる社長
REDorBLACKとか上手い事言う観客
もう一回放たれるダーツ
突き刺さるルーレットに書かれた文字は
「「「961プロ!!!」」」


「という事で961プロに行ってらっしゃい!!」
「「はぁぁぁぁー!?」」




















はい、「はやのじ」 第二部
ドッキリ!潜入!961プロ編!
カッコいいからZを付けてみた
某所掲示板に上げてない純正書下ろしですよー
リマスターじゃ無いぜ!
本当に色々ごめんなさい

現時点で情報が出ていない961プロ
某所では
社長がZAZELだったり、米大好きだったり
たかねさんが踏みキャラだったり
ひびきさんがアッパーバカだったり
情報が無いが故のカオス状態に陥ってるのですが
だからこそ出来る事もあるだろうと
元々変な設定でしかSS書いたこと無いし…ゴフンゲフン

変な千速だから混沌とした妄想961プロで動かしてみようと
情報が出てくるまでの短期間だとは思いますが
美希と一緒に千速も961に移籍したという設定です
千速Pも一緒に
依存症なのは千早と一緒



そうそう、お礼など
奇特な事にここをリンクとか貼ってくれてる方とかいらっしゃって
本当にありがとうございます!
ふとしたときに自分が気づくと楽しいので
こっそり貼ってくれると嬉しいです
リンクはフリーですので
どんどんやってくれたまえ!
イメレベは1ぐらいだけど…
純正SSサイトなのか自分でも疑問だしなぁ…
コメントも頂けると凄く嬉しいのですよ
書く原動力になりますし
甘いもの食べて幸せよですから


ちなみに横の「CATEGORY」をクリックしていただけると
SSの目次等、メニューが出てきます
ちょっとわかりにくいのでご注意を

…あ、もう50も書いてたのか…SS


はやのじ まっすぐ (SS 番外編)

2008-08-02 22:33:23 | SS 番外編

今日は2/25
なんて事のない普通の一日
事務所へと向かういつもの道で
突然銅鑼の音と思われる音が鳴り響いた
シャーン!シャーン!シャーン!
「な、なんだ!この横山三国志っぽい音は?」
驚きと共に突如、道の両端から騎馬隊が駆け出してくる
急展開に声も出せずおろおろしていると
ちょうど目の前の建物の屋根の上に
見知ったサイドテールが団扇を持って立っていた
「げげぇー!千速ー!」

「はい!おつかれさーん!」
「また誘ってくださいねー、千速さん」
「千速さんとの仕事はいつもスケール大きいよな」
騎馬隊の皆さんは楽しげに千速に声をかけ去っていく
俺はそんな大御所千速の頭を
グリグリしながら持ち上げているのだが
「痛くないのか?」
「慣れたね!」
薄い胸を目一杯張りながら大威張りで浮いている
「威張るなアホぅ」
全く…お仕置きを慣れるほど受けないで欲しい
あとイタズラにエキストラまで雇うな
こいつのイタズラは下手なテレビのドッキリより手が込んでいて困る
「で、今回は何なんだ?」
燻しがげに聞いてみる
前回は寝起きドッキリとか称して
朝起きたら、下着姿で寝息を立てる千速がいた
俺がオロオロしていると部屋の隅にはなぜか回ってるビデオカメラ
昨日まではなかったはずの枕もとのティッシュ
そして千速が握ってる睡眠薬
仕掛けたはずなのに熟睡して涎までたらしてる仕掛け人を
蹴って起こしてお説教
ちなみに千速の寝起きのセリフは「うあ…おはよう、ダーリン…」だった
「おはようハニー」と笑顔で返して布団を跳ね上げた

「いやな、プレゼント」
「は?」
「どうせ私のものになるんだから先に奪っておこうと思って」
奪っておくと言うのがまた常人では考え付かない思想だ
「プレゼントってもな…」
怪訝な顔で聞くと千速は持っていた団扇を口元に寄せにんまりと微笑んだ
「またまたー!焦らし上手だな!この床上手!」
「全く関係ない事を天下の往来で朝っぱらから喚くな」
「…あれ?ほんとうにないの?」
冷静に返した俺に対し
なんか急に不安めいた顔になった千速
プレゼント…プレゼント…
「なんかあったっけ?」
呟いた瞬間、団扇が顔にクリーンヒットした
「ば、ばかぁ!ばかぁ!プロデューサーのメガトロン級のばかぁ!」
「うげっ!なにすんだ!バカにバカと呼ばれる覚えは無いぞ…」
言葉が止まった
泣いている
目にたくさんたくさん涙を溜めて
あの千速が泣いていた
「もう知らねぇ!プロデューサーなんてオナホールで処理しちゃえばいいんだ!」
「その言い方は色々誤解を招く…ってまて!」
行ってしまった
道路には手紙の束らしきものが
「誕生日おめでとう!千速ちゃん! トーマス・エジソン」
「誕生日おめでとうございます!尊敬してます! ホイットニー・ヒューストン」
「おめでとう!演技もやってみない!? ロバート・デニーロ」
「敬愛する千速さんの誕生日を祝えるなんて夢みたいです! モハメド・アヴドゥル」
あきらかな嘘手紙
その中の一枚が目に付いた
「何て言ってくれるかにゃー、プロデューサーは…」
描きかけのメモみたいな手紙
俺の名前の嘘手紙を書こうとして止めたんだろう
貰えると思ったから
「早とちり…しやがって…ラストのはスタンド使いじゃねぇか…」
呟く俺の肩に手が置かれる
騎馬武者だった

765プロの裏で座ってる千速を見つけた
体育座りで地面に枝でなんか書いてる
後ろにそっと回りこんで読んでみる
プロデューサー 2/25 三時ちょうど 春香ちゃん祭りで死亡
「デスノートかよ!」
「うわっ!な、何しにきたんだよ!薄情物の冷血プロデューサー!」
足でゴシゴシ消しながら慌てて立ち上がる千速
目元が腫れてる
あれからも泣いてたんだろうな…
「…ごめんな…誕生日」
「ふんっ!別に気にしてないもんねー!」
わかりやすい、本当にこの娘は
感情が出安すぎるのだろう、嬉しい時は大笑いして、悲しい時は大泣きして
だから今だって失意を隠せないでいる
「なんか欲しいものあるか?それともどっか行こうか?」
後ろを向いたまま、頬を膨らませて千速は答える
「今更ご機嫌取りしても…」
怒ってる
いつもみたいにチャカしてこない
罪悪感と愛おしさ
おかしいな、後者は持ってたんだっけ?
後ろから覆いかぶさるように、千速を抱きしめて耳元で声をかけた
「ゴメンな…」
「わわっ!なっ!なっ!…ううー」
赤くなって黙り込んでしまう
可愛いな…妹とかのなだめ方ってこんな感じなんだろうか?
一人っ子の俺はそんな事を考えたりしていた
「どうしたら許してくれるかな?」
できるだけ優しい声で語りかける
「ず、ずるいぞ…この野郎」
耳まで真っ赤な千速
躊躇いがちに
「う…」とか「あ、」とか言いかけて黙るを繰り返し
「じゃあ…じゃあな…」
ボソボソと呟くような声で俯きながら
千速は決意したように言った

「子供くれ!いや!それにいたる経緯をくれっ!」
「はっ!?」
「ええい!ヤラセろって言ってんだ!服脱げ!」
あんなにしおらしかった千速が一転、元のハチャメチャ少女に
「てめぇ!いつもと言ってる事かわんねぇじゃねぇか!
さっきまでの恥ずかしがり屋はどうした!?」
「そっちがいいってんならベットの上の2回戦目でやってやるから!」
「らめぇ!ズボンだめぇー!」
「へへへ!いいじゃねぇか!減るもんじゃないしよぉー!」

椿がポトリ…
する前になんとか逃げ出して俺の操は無事だった
髪はグチャグチャ、ベルトも取られたが
必殺チョップで軽く気絶した千速を事務所のソファーに寝かせる
「全く…早とちりなんだからな…」
そして奴のロッカーに
今日渡すつもりだったシルバーのリングを投げ込んで置いた
「朝、通勤中に襲われなきゃちゃんと手渡しで渡せたんだがな…」

なんか悔しいから一緒にポテコも入れといたら
翌日しっかり両手の指にポテコをはめて来る千速はやっぱりバカだなと思った
「…おい、指輪どうした?」
「…チェーン通して首から下げてる、大事なものだから」
ちょっと赤くなる千速の顔
その答えと表情に少しだけ嬉しくなってしまう俺なのだった











うん、これは
ちーちゃんの誕生日に書いたものですね
日付が残ってた

これにて千速のストックは終了となります
元は某所に書いて上げたものを改定してリミックスとしましたが
少しでも楽しんでくれた人がいてくれたなら幸いです
千早ですらねぇじゃん…これアイマス?というのはよくわかってます
だって千早じゃないもん

突発的に生まれた速い子(千速)
ふとすればその家庭環境や背負っているものから
暗くなりがちな千早のお話
そんな中、生み出された千速は
底抜けに明るい千早が見たくて某掲示板の皆が考えたものです

千早にはバリエーション豊かに生まれていく派生キャラが一杯います
サイコな血早や
美希と張り合うリレ千早
依存症ここに極まった犬千早
そんな中の一つである千速
そんな子(妄想)もいるんだという認識を持っていただいて
速い子を少しでも知ってもらえるなら幸せです
みんなのアイドルはみんなの心の中にいるのですから

いつも行く掲示板には既に貴音に足踏みキャラがついてたり
本当にPの妄想力は凄いなぁと感心させられるのですが
公式絵を見る限り
響さん…元気アホの子じゃないかと思うのですよ!
公式にいなかったアッパーテンションアホキャラ!
もし予想が大当たりなら
…速い子はいらな…ゴフンゴフン

とにかく楽しみ!
PSP版アイドルマスターSP!


…次どうしようかな…?


ファイル整理してたら出てきたから貼ってみる

2008-07-12 12:18:40 | SS 番外編

「残念だなぁ…」
子供の頃、誕生日とクリスマスが一緒なのは
パーティもプレゼントも一緒にされちゃうから嫌でした
もともとこの時期はみんな忙しそうだし
お友達を誘ってのパーティも出来た事無くて
家のパーティも楽しくなくは無いんだけど
お父さんのお弟子さんとか、お友達とか
男の方が多いからいつもちょっと怯えちゃって
貰ったプレゼントを抱えて寝る頃に
ああ、今日は誕生日だったんだーって

アイドルになって初めてのクリスマス
ちょっと前から話題を振ろう振ろうと思ってたんです
でもいざ前に出ると全然関係ないこと喋っちゃって
結局プロデューサーのクリスマスの予定は聞けませんでした
私は今日はオフだったけど
それだけ気になってしまって事務所に顔を出ました
ホワイトボードに書いてあるプロデューサーの名前の横の予定に
びっしり書かれたスケジュール
「そっか…」
元々こんな時期にプロデューサーが暇なはず無いし
もしスケジュールに休暇って書いてあっても
自分から誘うなんて…
わかっています、わかってました

「やっぱり…損だよね」
もしも誕生日がクリスマスと一緒じゃなかったら
クリスマスがたとえ一緒に過ごせなくても
誕生日は一緒に過ごせるかもしれない
勇気を出して誘える日を一日損してる
臆病な私にはなんて辛い事なんでしょう

ちょっと悲しくなってきて
目がうるっときてしまいました
「泣かない…強い子になるんだもん」
あの日公園でプロデューサーに吐いてしまった弱音
そんな私を暖かく受け止めてくれて
いつも私を大事にしてくれて
困った時にプロデューサーはいつも「大丈夫」って背中を押してくれる
弱気でダメダメな私を引っ張っていってくれる
「絶対勝てるぞ!」って言うプロデューサーの言葉に何度自信を貰っただろう
最初の頃は「私なんかに過度な期待をしないでください~」って思ったけど
真正面から私の肩を掴んで、瞳を見つめて
「雪歩なら大丈夫」って続けてくれる
プロデューサーは知ってるかな?
その時の私は顔も熱くなっちゃって、少しパニックになっちゃって
でも、でも凄く自信が沸いてくる事を

家のパーティでも考えるのはプロデューサーの事でした
「会いたいなぁ…」
会ったら何て言うのかな?
「お誕生日おめでとう!」かな
それとも「メリークリスマス!雪歩!」かな?
もしかしたら覚えてなくて「おっはよー!雪歩!」かもしれません
プロデューサーは忙しいし…
でもそうしたら私はむくれちゃうのかな
「今日はクリスマスで私の誕生日ですよぅ!」なんて
…言えないよね、本当に会っても
想像の中なら言いたい事も言えるんだけど…
相変わらずお父さんとお弟子さんたちはお酒が入って大騒ぎ
私はそれがちょっと怖くて個室で休んでいます
「プロデューサーは何してるのかなぁ…」
何回目の呟きでしょうか
ケーキを食べていても、プレゼントを見ていても
寂しいなと思うのは呟いてる人のせいなんでしょうか?
「はぁ…」

外に車の止まる音がして
お父さんのお友達がまた来たのかな?と思っていると
襖の陰に人の気配を感じました
「だ、誰ですか?」
影から出てきたのは…小鳥さん?
「しー、雪歩ちゃん、迎えに着たわよ」
「へっ?迎えに…?」
言ってる意味がよくわかりません
そもそもこの家は見張りの方とかセキュリティが凄く厳重で
部外者が入ってくるのはそれこそ無理の無理無理なはずなのですが…
私の手を引いて小鳥さんは壁のほうに向かいます
「あの…どうやって入ってきたんですか?」
「大人のお姉さんには秘密がいっぱいなのよ、雪歩ちゃん」
なにも答えになってません
でも懐から取り出した鍵縄付きロープがその答えのようです
「でもお父さんがなんていうか…」
「社長から話がいってるから大丈夫、大丈夫!」
私を背中に抱えて壁を越える小鳥さんはなんというか忍者みたいです
でも
「あ、あのぅ…お父さんに話がいってるなら玄関から出ればいいんじゃないですか?」
「…」
一瞬小鳥さんの動きが止まりました
「さあ!降りるわよ!」
あ、力技です
そのまま屋敷の外の道路に下りた私と小鳥さん
車に乗せられた私はなされるがままになっていました
軽いパニックになっているうちに車はとある公園へ
家の近くだから良く知っている場所だけど
こんな遅い時間に来た事は無かったから知らない場所みたいです
「さあ降りて、雪歩ちゃん」
「は、はいぃ」
車から降りたそこには
「メリークリスマス、そして誕生日おめでとう、雪歩」
「ぷ、プロデューサー!?」
ずっと考えていた人がいました

「え、えっと、おはようございますぅ、プロデューサー」
「ははっ、ここは事務所じゃないよ、雪歩」
ああっ、そうでした
あんなにシュミレーションしていたのにこの体たらく
ううっ…穴を掘って
チャッチャラーラ
その時私の携帯電話が震えました
そこには一通のメールが届いたというお知らせ
「えっと…12時になったら迎えに行くからそれまで自由に過ごしたまえ…社長?」
「雪歩にも同じメールか」
見るとプロデューサーも携帯を開いています
どうやら同じメールを社長が送ってくれたみたいです
でも
「12時って後15分しかないですよぅ…」
「本当だ…ドタバタしてたからなぁ…」
せっかく社長や小鳥さんがこんな機会を用意してくれたのに
プロデューサーにあげるプレゼントも何も用意してません
いえ、用意してなかったわけじゃないんですが
持って出れなかったんです…急だったから…
「ごめんなさい、プロデューサー…」
「なんで謝るんだい?」
「だって私、クリスマスなのに…」
しょげた私を見たプロデューサーは
自分の付けていたマフラーを外し私に巻いてくれました
「雪歩からプレゼントは貰ったよ」
「へっ?」
プロデューサーはちょっと照れくさそうに言いました
「雪歩に会えたから」
私はその一言で顔が焼けちゃうぐらい赤くなって
ドキドキして、熱くなって
そして…嬉しくて
涙が出てきちゃいました
「ううっ…あ、ありがとうございますぅ…」
「ああっ!泣かないで!」
すぐに泣かない強い子になりたいって思っていましたけれど
嬉しい時には泣いてもいいですよね?

プロデューサーのマフラーに顔をうずめていると
プロデューサーの匂いに包まれてるみたいで凄く安心して
首元だけじゃなくて心まで暖かくなっていく気がしました
「あとちょっとで12時だ」
「じゃあ少しだけお散歩しませんか?」
私は勇気を出せました
誘えました、プロデューサーを
ドキドキして見上げた顔は
にっこり笑って頷いてくれました
「マフラー私に渡しちゃって寒くないですか?プロデューサー?」
「大丈夫、大丈夫、それより雪歩はどうだい?」
そうは言っていますがやっぱり少し寒そうです
少し長い私に巻かれたマフラーを見て思いついた事があります
で、でもそれを提案するには…さっき以上の勇気が必要です
「ぷ、プロデューサー!あのっ!」
「雪歩、手袋はどうしたんだい?」
「は、はひっ?え、えっと付けてくるのを忘れてしまって…」
失敗です
出鼻を挫かれて私の勇気は縮みこまってしまいました
落ち込みかけた私の手を暖かい手が包み込みました
「ぷ、プロデューサー!?」
軽いパニックになってしまった私の声は多分素っ頓狂な声だったと思います
「えっと…どうかな?暖かい?」
見ればプロデューサーの顔も真っ赤で
繋いだ手は心臓の鼓動と呼応するように暖かくなって
私の勇気もまたよみがえってきて
「ぷ、プロデューサー!マフラー!まきませんかっ!?」
い、言えた
言えましたぁ!
「えっ?でもそれは雪歩に渡した…」
「い、一緒にですぅ!」

耳まで真っ赤な私とプロデューサーは
手を繋いで一本のマフラーで繋がって
寒いけど、全然寒くなくて
ずっとドキドキしながら歩いていました
二人して目を逢わせたらえへへって笑って
本当ずっと、ずっと歩いていたいなぁ
こんな素敵な時間をくれてありがとうございます
社長、小鳥さん
そしてサンタさん
誕生日とクリスマス
2つ合わせても足りないぐらい嬉しいプレゼント
もしかして同じ日だったからもらえたプレゼントなのかな
それならクリスマスが誕生日で良かったかも
初めてそう思えました

ありがとう
プロデューサー…


はやのじ ごうまいうぇい!! (SS番外編)

2008-07-06 22:34:02 | SS 番外編
今日も俺の仕事は開店休業
なぜなら正月明けから千速と連絡が取れない
まあもともと仕事なんて入ってなかったんだが…
1月の予定表にはでかでかと「牛乳が飲めるようになる」と書いてある

「しかし…やつがいないと静かなんだよな」
火の消えたような事務所
いつの間にか騒々しさにも慣れて
むしろそれがないと物足りないと思ってるのだろうか
全く自分の事ながらわからないものである
少し伸びをした時それは起こった

パリーン!!
ガラスの割れる音と共に辺りが真っ白になる
小鳥さんが叫ぶ声
「プロデューサーさん!照明弾です!目を閉じて!!」
「なんでそんな事わかるんですか!!」
目なんか元々開けていられない
視界奪われた俺は何者かに床に倒される
思いっきり頭を床に叩きつけられたが、意識はある
パニックだった頭、今の痛みで少々冷静になれたようだ
「くそっ!なんなんだ!」
組み伏せられ、おそらくマウントポジションを取られている
そして何か硬いものを突きつけられている
おそらく…銃
何かを押し付けられるまま、服に手をかけられた
こいつ、まさか小鳥さんにも同じ事してるんじゃないだろうな!
こんな状況でも俺は男だ
せめて小鳥さんだけでも逃がさなければ…
幸い目は閉じたままではあるが、視界は回復している
相手はそれを知らない
俺が有利な点はそこだけ…
顎を尖らせ心の中でざわざわと呟く

急な抵抗に相手がバランスを崩せば、逆マウントを取り銃を奪う
そしてそのまま暴漢を逆に人質にして、小鳥さんだけでも外へ
…よし、3,2…
頭の中のカウントの途中
なにやら犯人の動きがおかしい
カチャカチャ…この音はベルト?
ズボンを脱がされた?
ちょっ!それ以上は!それパン…
「いただきまーすぅぅぅぅぅぅ!」
「てめぇ!千速じゃねぇか!!!!」

即、逆マウントでお説教開始
「おい…手の込んだ新年のご挨拶だなぁ…」
「えーと…怒ってる?」
照明弾打ち込まれて、マウント取られて、銃突きつけられて怒らない人はいません
ちなみに銃だと思ったのは携帯電話だったらしい
見下ろすような体勢
普段はのらりくらりと逃げやがる千速に
今日こそはじっくり腰をすえてお説教だ
「いいか、少しはアイドルらしくしろ、というか常識を持て」
「常識っていう枠組みから放たれた時、人は成長するんじゃないのかい?」
「…正月は何してた?」
「お、気になる?千速ちゃんのプライベート気になっちゃう?このドエロ!?」
「素行調査だ」
「えーとね、現在は青の紐の奴」
「…?何の話だ?」
「今日の下着、ちなみに上はつけてないよ」
「上必要なほど無いだろう、お前は」


「世間では上はつけないのがセクシー、わかりますね」
「…はい」
なぜ俺は逆に説教をされなければならないのか?
しかもマウントとったまま、ボコボコにされるとは
世の中ってのは不思議な事ばかりだね
「で、話戻して正月は何してたんだ?」
「芸能人はハワイだって言うから」
「ほほう、行ったのか」
「ハワイという三文字をひたすらSYODOUしてた」
…は?
「ほれ、今月の書道通信」
1月ビックリ特大号と書かれた雑誌の表紙には
ハワイと書かれた半紙を持って笑っている千速が写っていた
爆惨先生もビックリ!超ゴールデン筆賞と言う文字がでかでかと躍っている
「この賞すごいのか?」
「審査員の爺さんは5億年に1回しか出さないって言ってた」
この書道大会に権威は無いと見た
他の作品が「クレ556」とか「サザエぼん」とか書いてあるし
しかもそれぞれ銀賞とヤンバルクイナ特別賞取ってる
「よーし、そんなくだらない事のために新年の仕事全てパーにしたんだな」
「くだらないとはなんだ!賞品も貰ったんだぞ!」
「なにを?」
「鉛筆1ダース」
とりあえず頬を引っ張ってやる
「いひゃいいひゃい!やめれぇ!」
「うっさい、アイドルと関係ない事ばっか嬉々としてしやがって」

「ううー…おっ!」
急に千速の目が潤む
「やめてぇ…お願い…プロデューサー…」
口元に手なんて当ててる
俺はこいつのこの表情に弱い
意外性というか…こういう顔をされるとなんか強く出れないのだ
だが今日は心を鬼にする
「やめてたまるか」
今日こそはこの破天荒アイドルを
少し常識はずれアイドルぐらいまで進化させてやる
そうすれば少しは仕事もまともな仕事がくるようになるだろう
「だめぇ!…これ以上私のことをボロボロにしないで!」
「はっ?お前何を言って…」
嫌な予感がした
…芝居がかってる千速のこのセリフ
「誰かに聞かせる」ためにやってるのではないか?
もちろんそれはこの場にいるはずの人間
そういえば小鳥さんはどうした?
急な襲撃に応援を呼んできてくれたんじゃないのか?
となると…
あまり振り向きたくないが振り向くと
そこには
いつも真っ黒な偉そうな方と
いつも優しい事務員さん

「プロデューサー君…君は自分の担当アイドルにまたがってナニをしているのかね?」
ああ…完全に誤解されてる
みんなの目が凄く痛い
駄目だ、この状況は完全に積みっぽい
「これは警察ですかね…?」
小鳥さんが凄く決定的なことを言う
「ちがっ!ご、誤解なんですよ!」
「言い訳は男らしくないですよ…」
ジト目、そして縛られる
なんて手際のよさ
…俺もこれで犯罪者か…
「千速ちゃん、大丈夫?」
崩れた俺から離れた千速に小鳥さんが声をかける
「時にピヨちゃん、結婚って何歳から?」
「え…男は18、女は16からだったかしら…?」
なぜ、こんな時にそんな事をと、不思議な顔の小鳥さん
「あー!一年足りねぇ!今の無し!ノーカン!」
「「「「は?」」」

「いや、今年の目標「結婚」にしたんだ」
そう言って懐から半紙を取り出す千速
「手っ取り早くこいつでいいかって」
縄を解かれた俺を指差す
「きせいじじつを作っちゃえばいいのかなーと…どうしたの?みんな怖い顔して?」
ゲンコツをしようとする俺を小鳥さんが制した
「いい…?千速ちゃん」
「ん?」
「結婚っていうのはね、自由でなんというか救われてなくちゃダメなのよ」
なにやら孤独な感じで語りだす小鳥さん
「二人で、静かで、豊かで…」
「なんか難しいからいいや!おい!プロデューサー!」
うわぁ、すげぇ話の切り上げ方だ
すでに顔は小鳥さんではなく俺に向いているし
「なんだ?」
「お嫁さんにしてくれ!」
にっこり笑って求婚された
なんというか、こうストレートに来られると…
恥ずかしいやら、その嬉しいやら
「…来年の正月に気持ちが変わってなかったら考えてやる」
なに考えてるんだ、俺は
そんな俺の変な回答に、千速は屈託無い笑顔で答えた
「じゃあ決まりだ!あたしはずっとお前が好きだから!」
「…そーですか」
恥ずかしくってそっぽを向いたまま答えた

「誰か忘れちゃいないかね?諸君」
「あーいかんなぁ…こんな…いかん、いかん」
「小鳥君も、それ以上いけない」





はい、これは今年のお正月に書いたものです
もう半年前になるのか!
追加修正が興に乗ったので大幅に
元を自分がそんなに覚えてないともいえるんですが
はい
記憶力をどうにかしましょう




はやのじ おはよーあさごはん (SS番外編)

2008-06-22 01:55:42 | SS 番外編
「家が無くなった」
「あ?」
事務所で昼飯を食べていると突如かけられた声
主は千速だ
「無くなった…ってなんで?」
「私なりに歌のレッスンをしようと思ってロウソクに火をつけてな」
「ほうほう」
「炎を揺らさないように発声練習をしてたんだ」
方法は古いかもしれないがなかなか本格的な練習だ
「お前にしちゃ真面目な練習じゃないか」
「へへへ、照れるニャー、で揺れる炎を見つめてたらペットのバナナがな」
「へえ、ペットなんて飼ってたのか、可愛い名前じゃないか」
「あたしがつけたんだぜ!キャワイイんだよ!」
「猫か?犬か?」
「ゴリラ」
時間が止まった
オーケーオーケー冷静になろうぜ、俺
「何ゴリラ?」
「マウンテン、オス、4歳」
…冗談だよな
「で…そのバナナちゃんがどうしたんだ?」
「炎見たら本能が恐怖を感じたのか、大乱闘家庭内スマッシュゴリラーズ」
「…」
「倒れたロウソクで家がバーニング、崩れ去る炎の中バナナは笑ってた気がする…」
「…社長?」
さっきから黙って真っ黒な社長に真実を問い合わせようと声をかける
が、なんだか動いてない、この影
「あ、プロデューサーさん、ちょっと待ってくださいね」
そう言って小鳥さんは社長の背中のほうに回りこむ
キリキリキリと何かを巻く音と「うんしょうんしょ」とか小さく聞こえるが
それは聞こえないものとして扱おう
「…やあ!相変わらず仲がいいね!」
「よしっと…あ!社長!今起きたんですか?」
その三文芝居に何の意味があるのか本当にわからない
「人生ってのは遊びが必要なんだぜ、プロデューサーよ」
「打率10割の記録的遊び人に言われても説得力無いぞ」

「ゴリラ大暴れで家全焼…おお、本当だ」
「人の不幸だって言うのに面白がったマスコミしか来ねぇし!」
いい角度で新聞の写真に載ってる目線を付けられた少女
写真の見出しは「ゴリラに乗り我々取材陣に襲い掛かる野生少女」と書かれてる
「これはイメージ…」
「プラスマイナスで打ち消して0だ!影響は無いぞ!」
ハキハキと答える社長
マジか
「しかし千速君は住むところが無くなってしまったのか…どうするか?」
プロデューサーとしてでは無く、常識人であるなら
住所不定の少女はアイドルになるよりもまず警察に届けるべきな気もする
「家は…狭いしなにより千速ちゃんと住む勇気はないわねぇ」
人差し指を顎に当て傾げる小鳥さん
全くの同意見だ、俺にも無い
「んあ、、あたしゃプロデューサーんち住むから別に困んないよ」
その時事務所に戦慄が走るっ!!
「今なんてっ!」
「まさかそこまで進んでいたのっ?」
「ウム!お待ちかねのアイドルランク報告だ」
一人は無視されるべきだ、黒いの
「なんで家にくるんだよ?家族は?」
「焼けた時にみんな燃え尽きた、私の家族はバナナと歌だけです」
「ゴリラは飼えないぞ、家はアパートだからな」
勝った!
ペットの問題というのはアパートの大家に頭が上がらない俺としては
とても使えるカードだ
だって大家が絶対許さないんだもん
家賃を滞納してるとかは全く関係なく
「じゃあ捨てれば住ませてくれんだな、おいバナナ、バイバイ!」
どこからとも無く現れたゴリラは
さびしそうに765プロからさっていった…△
「よし」
「よしじゃねぇよ!なんでそんなにあっさりしてるんだよ!」
「結構淡白な子だったから」
「そんなレベルか!魔物使いみたいな別れ方しやがって」
「そんな事よりペット問題解決ー!住ませろ!」

このやろう…
「家は凄く散らかってるぞ」
「女手がいないから汚くなるんだろ、あたしを住ませろって綺麗にしてやるから」
自信たっぷりに胸を張る千速
悲しくなるぐらいまっ平らなのだが
「掃除なんてできるのか?」
「窓からそぅい!」
「それは掃除じゃねぇ!」

「家は狭いから布団は一枚しかひけないぞ」
「なぁ、電気毛布とか欲しくないか?」
ん?何を唐突に聞いて来るんだ?
「まあ確かにあると便利だよな、暖かいし」
正直寒くなってきたので布団に入る時に暖かいといいなぁとか思ってるのだ
「なんと今なら無料であったかい抱き枕が手に入ります」
「ほう?」
「しかもおしゃべり機能や歌を歌う機能も!計算も3桁の足し算までなら楽勝です!」
「328+112=」
「インド人なら2秒で答えます、しかもプリティーフェイスの15年物!どうだ?」
「計算はどうした」
「私はインド人ではないので、ララァにでも聞いてやれ、賢いらしいぞ」
ダメだこいつは
「…飽きはしなそうだが…捕まりたくないし」
それを聞いた千速はニヤニヤしながら答える
「布団に入ったら抱き枕をどうしようと兄さんの自由じゃよー」
頭痛ぇ…

そんな中、いつもより静かな社長がここで口を開いた
「む、いいねぇ!どんどんやってくえたまえ!」
「ちょ!社長!」
「いけない!ボタン間違えちゃった!」
「小鳥さん?ボタンっていった?今?」
「よっしゃ!許可ゲットー!これからプロデューサーの家は愛欲の館だぁー!」
「人の家に変なあだ名付けるな!」
「まずは表札作りからだ!実はもう作ってあるから早速つけにいこーぜー!」
物凄いダッシュで出て行く千速
「ちょっとまて!こら!?」
慌てて追いかける俺
ああ…結局また、なし崩しにあいつのペースになってしまいそうだ…

ちなみに表札には如月、P、千速、バナナと書いてあった
「ただいまー」
「ただいまー」
「ウホッ」


というわけで…

はやのじ ないんおーつーぴーえむ (続き)


「だけどこの部屋落ち着くなー」
「全く勝手に色々持ち込みやがって…」
風呂から上がったばかりの俺に、テレビを見ながら千速が話しかけてきた
ちなみに千速には先に入ってもらった
一緒に入らなきゃ後ろが怖くてシャンプーできない!
とかぬかす千速をげんこで黙らせたのだが
入ってる途中も
「プロデューサー!お湯じゃなくて水が出た!」だの
「プロデューサー!今!全裸!生まれたままの姿!」だの
「プロデューサー!着替え忘れたー!主として下着ー!」だの
「プロデューサー!でたよー!体拭いてー!」だの
うるさいったりゃありゃしない
その上、俺が入ってる時は
「奥さん!米屋です!」
とか言って乱入しようとしてきやがるし
風呂は一日の疲れを癒してくれる場所のはずなのになぁ…
「疲れる風呂もあるよー」
「心を読むな、…その心は?」
「石鹸の国、泡のお風呂」
「女の子がそう言う事さらっと言うんじゃねぇ、しかもポテチ食いながら」

「やっぱりプロデューサーの匂いが落ち着くのかもなー」
「何言ってんだ、勝手にシャンプーまで持ち込みやがって」
俺の愛用のシャンプーは、こいつの手によって排水溝に流された
俺の知らないうちに
「しかし、いい香りだなこのシャンプー」
「…せっかく一緒に居るんだし…同じ香りがよかった」
「ん?なんか言ったか?」
「いや、風呂場で流れるナイルの清流、文明の開化遊びをやっていたら手が滑ってな」
「風呂場で遊ぶな15歳」
「いや、大人になっても風呂場で遊ぶじゃん?…一緒に遊ぶ?」
「ばーか」
なんか小声で言ってたような気がしたんだが
いつもの千速か

座椅子に座った俺の元に
トコトコと千速が近寄ってくる
「どうした?」
「プロデューサー!あぐらかけ!あぐら!」
良くわからないが言われたままにあぐらをかくと
千速が背中を向け俺のあぐらの上に、さも当然のように座り込んだ
「お、おい…」
「ここ指定席!あたしの指定席な!プロデューサー!」
凄く嬉しそうにこっちを見る千速をみてると…
「わかったよ…足痺れるまでな」
「おう!えへへへへ…ぷろでゅーさーぁー…」
お互い風呂上り
千速の体はぽかぽかして暖かいと思う
それになんか人肌って安心するかもしれない
ふぁぁ…
「おい、寒くないか?」
返事が無い
そのかわりにすぅ…すぅ…と静かな寝息が聞こえてきた
「…全く…今日は、はしゃぎ過ぎたんだな…」
寝てしまった千速を抱え寝室へ運ぶ
寝室のドアを開けると広がる光景
布団が2枚くっついて敷いていて、枕元にティッシュの箱が置いてある
そしてYESしか無い枕が2つ並んでいた
手の込んだ床支度にげんなりしながら、千速をそこに寝かせる
「お休み…千速」
その寝顔はあどけない子供の天使のような寝顔にも似ていて
「…にへへ…そこらめらよぉ…ぷろりゅうしゃー」
あどけなくない悪魔のような寝言を聞かなかったことにして居間に戻る
「今夜はソファで睡眠か…」
今日を思い返してみると、色々ありすぎるほどあった
そして千速は確かにやかましいやつだけど
一緒に住んでくれる人がいるってのは嬉しいことなのかもしれない
そんなことを考える俺の口元は少しほころんでいた




「ウホッ」
ゴリラがいなきゃもっといいんだが







今作は2部構成になってます
理由はなんか突発的な祭りで時間が間に合わなかったから…だっけ?
同居祭りという事らしいですよ
同居というよりはお泊り会なのですが
あれ?でも家を焼け出されてるぞ?
あれ?あれれ?
モルダーあなた疲れてるのよ

展開というかこれももう半年ほど前に書いたものなんですね
すっかり忘れてて困ったものです

ゴリラとか


はやのじ ひぃあうぃーごぉー (SS番外編)

2008-06-09 00:09:59 | SS 番外編
千速がデビューしてから約3ヶ月
不思議なレッスンや不思議な営業の結果
なぜかCランクになっていた
ランクアップのためのファン獲得はオーディションだけが全てでは無い
そう教えられた3ヶ月だったとも言えるだろう
特に解放のステージとも呼ばれる歴史的じけ…営業が
千速を一躍Cランクにのし上げたのだ

「おい!ファン数は二億人いるのになぜランクはCのままなんだ?」
「特別オーディションを取ってないからな」
「くそっ!国の解放だけじゃだめなのか?」
悔しがる千速は甲冑を着て馬に乗っている
赤黒く鈍い染みのついたステージ衣装
敵からは恐れられ、味方からは頼られるそれが偶像(アイドル)
「…そろそろ脱げ、こわいぞ」
「えっ…?そんな…こんな日の高いうちから…」
くねってる千速を軽くスルー
「社長?なんか良い特別オーディション無いですか?」
「戦闘力的な意味のレベルは16だがアイドルのレベルとしては-1だからねぇ…」
つぶやく黒い顔にますます陰りがかかる
なんてこった…聞いたことがないぞ、イメージレベル-1
「-1って世間の評判で言うとどんな感じなんですか?無名とか…ブレイク寸前とか…」
「やよいの父」
「畜生!最低じゃないか!」
壁に拳を叩きつける
そんな俺におずおずと千速が声をかけてきた
「あたしとしてはとりあえず胸のある人間は厳しい罰を与える法律を作ろうと思ってるんだが」
「いいかげんアイドルにもどれ、俺の仕事は独裁者育てる仕事じゃない」
そうだ、俺の仕事はトップアイドルを育てる夢のある仕事なはずだ
血なまぐさい戦場を、平成のジャンヌダルクと称えられる少女と駆け抜ける事ではない
そしてその後の施政法案を作ることでもないはずだ

「社長!今日の流行情報を教えてください!」
こうなったらなんでもいいから特別オーディションを受けるしかない
ランクB到達には3つ特別オーディションに受からなければならないのだ
これは最近変わったようだが俺の中では変わってない
「うむ!今日の流行情報だ!」
1位:巨乳
2位:大きい胸
3位:おっぱい
「うむ、流行二位と三位が入れ替わったようだな、注意したまえ!」
壁を拳で叩く
くそっ!世間の流行が全く合ってない!
どんな衣装に着替えても、どんなアクセをつけてもっ…
無理っ…これは無理っ!
「そんなに落ち込むなよ、プロデューサー」
千速が胸のことでキレないで落ち着いてるなんて…珍しいこともあるもんだ
「今すぐこの日本国改め千速ちゃん王国から、私より胸のある女性全員殺害してやるから…」
いかん、目が据わってる
「そうだ!今すぐだ!改革だ!きっと、私が一番!うぉぉぉぉぉ!」
「千速ー!そうなるとお前以外女性がいなくなってしまうぞ!」
「私が革命を終えて帰ってきて、もし私をまだ愛していたのなら
黄色いハンカチもしくはコード、つまりはビデオ端子をぶら下げて置いてくれぇぇぇぇぇ!」
夕日に向かって走っていく千速
その影を見つめながらプロデューサーは二度と会えないかもしれない愛しい人の無事を願うのだった…


「という思い出をルーキーズでは3発打つつもりなんだが」
「確実にオーディション終了してるな、全然初々しくないし」
せっかくあの千速も頑張って初特別オーディション
用意は多いにこした事がないので、こうしてミーティングをしているのだ
「しかしなんで本番では強いんだろうな?お前」
「千速ちゃんは誰かの頼りない指示でも10倍の効果にしてしまう天才だからな!」
そういって椅子に座るように俺の上に腰掛ける
最初は嗜めていたが最近は抵抗しなくなった、疲れるから
「やっぱりここが一番座りごこちいいや…」
「はいはい、そうですか」
まあ、なるようにしかならない、特にこいつの場合は
待ってろよ!ルーキーズ!



はやのじ  まいべすとふれんど (SS番外編)

2008-05-30 00:48:49 | SS 番外編
今日は遂にアイドルを売り込む
いわゆる営業という仕事なんだが…
夕日
窓から差し込む柔らかなオレンジの光は
少し幼さを残しながらも綺麗に整った少女の輪郭をまぶしく照らす
さて俺達はなぜ観覧車の中で差し向かいに座っているのだろうか?

「なあ千速?俺達はTV局に向かってたんだよな?」
「そうだよ」
「なんで観覧車のってるんだっけ?」
「…女の子に…そんな事言わせないで…」
手を口元に添えて、しなまで作って頬まで赤らめてやがる
ハチャメチャなくせにちょっとドキッとさせられたのがまたむかつく
「あそこのTV局行こうとしたらお前はなにした?」
ピーピーピー
目をそらして口笛
しらばっくれるのもここまでセオリー通りだと突っ込む力も半減だ
一つ一つ思い出すように口に出していく
「うわっ!でっけぇ!って言って後ずさったな、まず」
「そうだっけ?」
「それでそれ見て笑った、見るからに重役クラスに靴を投げつけたな」
「うむ、おかげで裸足のランナーだ」
そう言って足を見せる
靴下は…
「でそれ見て指差した見学ツアーの子供達を
靴下に石入れて振りまわして追い掛け回したろ」
「食べちゃうぞーって言いながらね!笑えた?」
「シャレにならんわ!このご時世に!」
本当に疲れた
暴れ回る千速を小脇に抱えて当ての無い全力ダッシュ
途中で
「プロデューサー!ラーメン喰いたい!」
だとか
「プロデューサー!あれみろ!すげぇ変な犬!」
だとか
「プロデューサー!飛行機雲!すげぇ!追いかけて!追いかけて!」
とか
「プロデューサー!ここでライブがあったんだがMB1買えなかった!」
とか
わがまま言い放題
しかもようやく追ってくる局員から逃げ切ったと思ったら
観覧車乗りたいと来たもんだ
長い全力ダッシュでヘトヘトだったし
ここで少しほとぼりが冷めるまで隠れるのもいいかもと思って飛び乗ったのだ
「けどおかげで靴も靴下も無くしちまったよなー」
と残念そうに足を…
「み、ミニスカートでそんなに足上げるな!見えるだろ!」
顔をボッと赤くする千速
やっぱりこいつは無防備すぎる
「へっ…おわっ!見るなバカ!」
「こ、こらっ!観覧車でそんなに暴れたらダメだ…揺れる揺れる!」
この高さでの大揺れはシャレになってない
のんびりした乗り物のはずが一気に絶叫マシーンだ
「揺れるとか言うな!胸の事言うな!」
「いってねぇー!」

結局休むはず(隠れるためでもある)の観覧車は
疲れるためだけのアトラクションだった
千速もぐったりと気分悪そうだ
「…大丈夫か?」
「あ、あー、大丈夫大丈夫…」
ベンチにて天を仰ぎながら力無く手を振るアイドル
なんか疲れたお父さんを連想させられる
「今日は散々だったなぁ…」
呟いた俺に千速からは意外な言葉が返ってきた
「うんにゃ、あたしは楽しかったな」
「あんな目にあったのにか?」
「プロデューサーと名所を走り回って観覧車にも乗って…」
少し間を明けてにかっと笑い
「デートみたいだったじゃんか!ラッキーだぞ!この千速ちゃんとデートだなんて!」
顔が少し紅く見えたのは夕日のせいか
「そうだな…じゃあ最後までそのラッキーを味わうとするか」
そう言うと俺は千速の手を掴んだ
ビックリしたようなきょとんとした目
「…そうだな…帰るまでは味あわせてやる…」
小さく呟いて目を伏せる千速
二人の影が伸びて一緒に帰る夕焼け道
言われればなかなか楽しかったかもしれない

後日

某有名TV局の偉い人が様々なプロダクションを直接回ってるという噂を聞いた
なんでも局をあげてバックアップするシンデレラを探しているのだとか
探し方も靴の合う女の子、童話シンデレラからヒントを得たと言う
大変にロマンティックな企画
これは選ばれれば一気にトップアイドルも夢じゃない!
本日我が765プロにやってくると連絡があったので
千速を売り込もうとスタンバイさせているのだが…
目の前に座られている方は
凄く…重役風です
「いや、じつはこの靴を履いていた少女を探しててね?」
「…は、はぁ」
「かなり無礼な事をしてくれてね…草の根分けても…と思ってるんだよ」
「千速ぁ!来るなぁー!」
「おいっす!如月千速でーす!得技は性的な嫌がらせと靴を室伏張りに投げる事でーす!」

パーフェクトコミュニケーション!


家族 (千早四畳半アフター特別編)

2008-05-07 00:15:18 | SS 番外編
目が覚める
今日も目覚まし時計に勝利
小さくガッツポーズ
示す時間は後1分で朝6時
我ながら早起きになったものだ
体を持ち上げ軽い伸び
軽い伸びは意識を覚醒させるための儀式みたいなもので
こればかりは変わらない
鳥が鳴いている
…うん、今日もいい天気

「おはようございます」
「あ、おはようー、千早ちゃん!」
ここで見るとエプロン姿の素敵な奥さん
小鳥さんが今日も清清しい笑顔で挨拶をくれる
「相変わらず早いわねぇ、もうちょっと寝ててもいいのに…」
「小鳥さんのご飯を食べ逃したくないですから」
「もう!嬉しい事言ってくれちゃって!」
照れて頬を手で包む小鳥さんはまるで少女の様
年齢など微塵も感じさせない…
「なにか思わなかった?千早ちゃん?」
「い、いえ…」
この辺りの鋭さも昔から変わらないところ
「それにしても千早ちゃん…やっぱりお姉ちゃんって呼んでくれないのね…」
ちょっと芝居かかった感じでフライパンを抱えながら小鳥さんが言う
「…呼び方なんてなかなか変えられません」
「えー、そうなのかなぁ」
残念そうに口を尖らせる小鳥さん
ああ、本当に若い
この人は
可愛い人って言うのはきっとこういう人を指すのだろう
そのままの姿勢で口を私の耳元に近づけ囁くように
「でもあの人のことは「お兄ちゃん」って呼んでるじゃない」
ボッと顔が熱くなった
「あ、あれは便宜上必要というか!急に転がり込んできたんだし!」
言葉が巧く出てこない、なにやら言い訳みたい
「そ、それに「お兄ちゃん」なんて呼んでいません!」
「えー、そんな事言ってもお姉さんは知ってるんですよ~」
本当に楽しそうな小鳥さん
にししって今にも笑いそうな顔してる
「い、言ってません!」
対照的に私の顔は赤くなるばかり
いつまで経っても小鳥さんにはかなわない
誕生日コンサートの時から負けっぱなしだ
「おー朝から元気だなー、二人とも」
「げんきーげんきー!」
ぬっと台所に現れた巨人
じゃなくて子供を肩車した良いお父さん
そしてこの家の主人、大黒柱、小鳥さんの旦那さん
そして私の…
「小鳥、千早、おはよう」
「はい、おはようございます」
「おはようございます、…「兄さん」」


千早四畳半 特別編
「家族」


休日の昼下がり
郊外の少し大きめな公園
私達はそこにいた
なんでもない休日のピクニック
突然のプロデューサーの素敵な提案だ
駆け出すはるかちゃん
私もそれに続く
プロデューサーと小鳥さんはそれを微笑んで見守っていてくれる
手を振ると返してくれる
白い日傘、ワンピースの小鳥さん
合わせる様な白いシャツのプロデューサー
それは空に浮かぶ雲みたい
私とはるかちゃんは鳥だろうか
雲に見守られ、蒼い空を飛び回る鳥みたいに駆ける


「小鳥…ありがとう」
目線は笑い追いかけっこをしてるはるかと千早に向けたまま呟く
「なにがですか?あなた?」
「お礼を言いたかったんだ、素敵なものを沢山くれた」
くすりと笑い小鳥は答えた
「私だっていっぱい貰いました」
「ああ」
「だからそのお礼は神様にしましょう」
「神様に?」
「私達にはるかという娘を授けてくれて、
私やあなたには素敵な妹、
はるかにはお姉さんをくれたんですよ」
「…本当に果報者だな…俺達は…」
「ええ、私達はこんなにも大切な人を持ってるんですもの…」
一人だった俺達は奇跡のような出会いを重ねて集まれた
無信心な俺も今日は神様にお礼を言いたくなった
素敵な奇跡をありがとう


「おかーさん!」
はるかちゃんが小鳥さんに走っていく
かわりに歩いてくるプロデューサー
「華やかだね、女性が3人揃うとさ」
「私なんて、華はありませんよ」
微笑みながら返す
こんな事も今ならできる
「目立つ花でなくても…皆、俺の大切な人だからね」
「…私もですか?」
「もちろんだとも」
煙草を咥えながら頷くプロデューサー
「でも私はプロデューサーの奥さんでもなければ、子供でもありません
転がり込んできた単なる居候です…迷惑だったんじゃないですか?」
少し困ったような笑顔
しょうがないなぁっていういつものプロデューサーの顔
「千早、俺はね、君が千早だから一緒に居たいんだ
便宜上、妹としてもらったけどなんだっていいんだよ
それはみんな一緒さ
千早が千早だから小鳥が小鳥だから、はるかがはるかだから俺は一緒に居たいんだ」
真顔でこんな事が言えてしまう
それは裏表の無い本心だから
「ずるいですね…プロデューサーは」
多分私の顔は少し赤くて、目尻は少し濡れているだろう
ポフッとプロデューサーの胸に静かに飛び込む
「ち、千早?」
「嬉しくて…悲しいんです…」
ちょっと感情が高ぶった私を優しく抱えてくれる
暖かくて大きいプロデューサー
その胸の中
誰にも聞こえないぐらいの小さな声で呟いた
少し涙を溜めた目で
はにかむように微笑みながら
「これじゃ…諦められないじゃないですか」

「ちはやおねえちゃん!いたいの?どうしたの?」
心配してくれたのだろう
はるかちゃんが駆けて来てくれた
「ううん、お姉ちゃんは大丈夫だよ」
「ほんとう?」
覗き込むように小首を傾げる
ああ、私は、もう一度「お姉ちゃん」になれたんだ
思わずギュッとはるかちゃんも抱きしめる
「どうしたの?ちはやおねーちゃん?」
「嬉しいとね、凄く嬉しいとギュってしたくなるの」
「そうなんだ!じゃあ!はるかも!」
抱きしめ合う

「お姉ちゃん」は元気だよ
素敵な「妹」もできたんだよ
今度会いに行ったら紹介するね
語りかけた思い出の中の弟が
笑ってくれた気がした

「おねえちゃん!ね!うたお!いっしょにうたおー!」
「ええ、はるかちゃん」
腕を引っ張ってお歌をねだるはるかちゃん
「ふふ…本当にはるかは千早お姉ちゃんとお歌が好きね」
「うん!でも、でもね!おかーさんもおとーさんもすっごくすっごくだいすきなの!」
思わず目尻が緩む私達
「ありがとう、はるか」
プロデューサーが大きな手ではるかちゃんを撫でる
「うん、なんかお母さんも歌いたくなっちゃったな、はるか、いい?」
「わぁい!うたおう!うたおう!」

私と小鳥さんそしてはるかちゃんの歌声が響きあい交じり合う
それは家族のコンチェルト
そんな私達を優しく見つめる瞳
それは私達の大事な人
私はその人に手を伸ばす
「さあ、兄さんも」
「ああ…」

泣きたくなるほど嬉しくて
笑みが出るほど切なくて

空は限りなく蒼い
その空の色と同じ鳥は羽ばたいていく
目が逢い
笑いあう
私は多分、失ったものを手に入れた
決して同じものではないけれど
同じものなど無いから

そしてそれは
かけがえの無い
宝物だと
思うから























というわけで千早四畳半アフターです
その後のお話
ちーちゃんキャッキャウフフな展開を頭に思い浮かべていたんですが
どうしても家族キャッキャウフフに、つまりはトゥルーかぞ…(自重

千早にはごく普通の幸せを手に入れて笑って過ごして欲しいんですが
どうしてもED後にも一波乱ありそうで
時間はかかって、少し普通の形とは違うけど
心穏やかな日々を手に入れることが出来ました
といった感じに…なれたでしょうか?
この特殊な世界観を少しでも楽しんでいただければ幸いです

遺書
Do-Daiが可愛くて死にます
一緒に買ったミニウエディングが可愛すぎて死にます
ミニウエディングだけだと結婚式に来た新婦の友人みたいなので
花冠とブローチとブーツ買ったらもう完璧なので死にます
私の遺体はどうにかしてテレビの中に入れてください
それだけが僕の願いです
あともしまだ愛しているのなら
黄色いハンカチかアイマスゲイツを窓にぶら下げていてください



はやのじ まほーをかけて (SS番外編)

2008-04-27 16:13:20 | SS 番外編
今日は初レッスンの日
正直不安で一杯だ
新人プロデューサーという訳でもないのに不安なのはやはり…
レッスンを受ける本人が後ろの席で足をパタパタ、なんかブツブツ呟いてるからだ
「なーなー?レッスンって性のレッスン?」
はにゃとか言う擬音でも出しそうな小首を傾げ質問する千速
態度と質問の内容がビックリするほどかけ離れている
「そんなレッスンあるか」
「もちろん指導員はプロデューサーがいいにゃー」
聞いちゃいないし
上口で上手くバランスをとって鉛筆を鼻の下に置いている
こいつは昭和の小学生か?
「はっ!」
「ど、どうした!?」
急に真面目な顔をする千速
こういう顔は驚くほどキリッとしている
元来、顔は整ってるのだ
ただ全ての行動がそれを表に出さないために全力でディフェンスしてるだけで
「指導員って…」
「指導員がどうしたんだ!?」
「指導淫って書くとさ…幼い娘を開発してる変態っぽくねぇ?」
無言でワンパン
綺麗に入った一撃でノックバック
…したようにシートを倒して、戻してそのまま戻ってくる
「乙女に何すんだ!」
「乙女はそんな事言わない」
言葉で切り伏せ車を走らせる
こいつと話してたら話があっちいってこっちいって
最終的には迷いの森だ
いや樹海か
富士山のふもとの遭難した白骨死体がいっぱいな系の

さて移動中の千速さんは凄いお子様です
車の窓から「おい!あれ富士山か!」といってなんでもない山をさしたり
ラリーXのテーマを口ずさんだり
「トランスフォームだ!」とかいってハンドルを持つ振りをしたり
最後には一緒に歌おーぜ!とか言って合唱させられたりした
なぜかバナナが1本ありました~♪とかいう童謡だったが
でもなんか
本当に嬉しそうに歌うもんだから、つい一緒に大声で歌ってしまった
もしかしたら千速は人をペースに乗せやすいのかもしれない
そんな役鯛もない事を考えたりしていた

今日の予定はダンスレッスン
レッスンスタジオに千速を連れていくまでが俺の仕事
普段なら指導員の先生と一緒にアイドルの調子を見学させてもらうんだが
「私がレッスンしている所は決して覗かないでください…覗いたら訴えるぞ!」
とか言って外に追い出されてしまった
少し困惑するが、よく考えれば先生もベテラン
まさか15歳の小娘のサボリを見逃すような方ではない
「あ、ワンツーワンツー!」
うん外に聞こえてくる声も真面目にレッスンをしているようだし
任せている間は一安心だろう
ベンチに座って煙草を一吹かし
あー仕事の合間の一服の清涼剤だ、こりゃ

一時間も経っただろうか
ちょっと気になったのでドアに近づき中の様子を探る
なんか妙に静かなような…
耳をドアにくっ付けてもう少し中を…
バーン!
ドアが開かれた
くっ付いていた俺を吹っ飛ばす形で
「な、なんだ!?」
困惑する
そしてドアの中に広がっていた世界は…

まず千速がいる
なぜかステージ衣装を身にまといアップ!ダウン!とか言ってる
その後ろには、
何時何所から沸いたのか綺麗に千速を頂点とした三角形状に沢山の人々
後ろに着きながらサンキュー!千速!とか言って一緒に踊ってる
圧巻なのは先生だ
なぜか空飛んでるし、なぜか80年台に考えられた未来人みたいな服だし、アフロだし
オウ!チハーヤ!とか言葉づかいまで…

腰を抜かした俺を見つけた千速が踊りながら近づいてくる
「ギュンギュ-ン!プロデューサーを発見しました!」
「今すぐ救出だ!チハーヤ!」
先生…なにを言っているんですか?
立てない俺に踊りながら近づいてくる千速+20人弱のバックダンサー?達
うわぁ…凄く怖いんですが
「ふっふっふっ…動けないならちょうどいい…」
ラスボスっぽいなんか恐ろしい事言ってる
それでも律儀にリズムに乗りながら
ジリジリ近づいてきて…
「アップ!ダウン!チュッチュッチュ-じゃあ!」
そう叫びながらルパンダイブしてくる
だめだ!避け切れない!
「ぎゃぁぁぁぁ!!お母さーん!」

なんか千速にシッチャカメッチャカにされてる間も
後ろについてた人たちは楽しそうに踊ってるし
助けてくれって言っても全く聞こえてないみたいだし

ボロ雑巾のような俺に背を向け妙に艶々した顔の千速は
どこに向ってかは知らないが、心底楽しそうな笑顔で
「現場から如月千速がお伝えしました!」

パーフェクトレッスン!!
「ええっ!パフェなの?」


はやのじ えーじぇんとよるをいく (SS番外編)

2008-04-06 01:29:48 | SS 番外編
俺が無理矢理プロデュースをさせられる事になったアイドル
如月千速
サイドテールに活動的な印象の服装
八重歯がチャーミングな女の子
なはずなんだが
…Tシャツには常に変な言葉が書いてあるし

今日は初めてのミ-ティング
やはりビシッと決めて行こうと思う
それには朝の挨拶から
既に三パターンの受け答えを完成させている
おっはよ!千速! こんばんわ千速! 社長の真似
意外に三番目は受ける事が多い
これさえ成功すれば女の子のテンションも上がり
仕事もレッスンも進めやすくなるのだ
これは俺の仕事術とも言える

「おっ!来たかな?」
外から音が聞こえた
きっと走ってやってきたのだろう
時間的には遅刻ぎりぎりだしな
そのままドアがあ…かない
代わりにドアが吹き飛んでスポーツカーが突っ込んできた
「うわっ!なんだ!なんだ?」
突然の事に驚く俺と事務所の皆さん
土煙を上げぶち破ったドアを踏み潰した車から出でる人影
出てきたのは…サングラスをかけた千速だった
今回のTシャツはポルノ13
元はアポロなんだかゴルゴなんだか
「どぅーいっとゆあせるふ!プロデューサー!」
「なんなんだ!この状況は!というか今の挨拶か!?おい!」
もはや考えていた受け答えは無駄となった
この状況でテンションの事を考えられる余裕は俺にはない
サングラスを手元でクルクルさせながら千速は答える
「アメリカっぽい挨拶が近所のホームセンターのチラシに書いてたから使ってみた」
「冷静に答えんな!それとDIYは挨拶じゃねぇ!じゃあスポーツカーはなんだ!?」
「アメリカの挨拶を使って見たかったから新庄の真似をしてみた」
思考回路が壊れてるとしか思えない発想力だ
「そもそも免許持ってないだろ!」
「なめねこ免許証なら」
首から下げた紙には何が書いてあるんだか
猫の写真が貼ってあるみたいだけど
うん、とりあえずわかった事が一つ
こいつは何を考えてるんだかわからん

ため息を付き千速に近づく
怒られると思ったのか少し身構える千速
まあ、怒らないほうがおかしいんだが…
今はそれより優先させなければいけないことがある

「…とりあえず怪我はないか?」
「え、う、うん、無いぞ」
ちょっと驚いたような受け答え
「それならとりあえずはよかった」
無茶をされて怪我でもしたら大変だ
俺の仕事はアイドルを育てる事なのだから
…こういう事で怪我をされたらものすごく馬鹿みたいじゃないか
怪我がないかボディチェックしながら向き合う
うん、傷はないみたいだが…少し顔が赤い
熱でもあるのかもしれないな
「とりあえずミーティングなんだが…もういいや」
「な、なんで?話しよ-ぜー!自慢じゃないけど、勝負下着着けてきたんだぞー!」
うん、熱は主に脳にあるようだ
「そんなこと自慢できるか!」
「なーなー!はーなーし!お話して-!フランス書院なみのエロ話ー!」
「そんなの朝っぱらからできるか!」
脳が痛い
やっぱりこの子はおかしい
テンションが常にオレンジ
高すぎる

「…やべぇ!隠れろ!」
頭を掴まれ胸元に持っていかれる
そのままソファーの裏側へ
「おい、どうした?」
「しっ!お小言コンビがきた、見つかるとヤバイ」
ここまでやっといてお小言が怖いのか…
というか密着し過ぎてるんだが全然ドキドキしない
たぶん柔らかい物を殆ど感じないからだ
向こうの心音は結構早くなってるのがわかるんだが
やはり見つかるかもという緊張感があるんだろう
キョロキョロしている小鳥さんと律子
確かに見つかるとうるさそうだ…って俺が隠れる必要は無いと思うのだが
「見つかるとどうなるんだ?」
興味心から聞いてみる
すると千速はこちらを見ずに
「この間はいい子にいい子にいい子になぁれ!ってやられた、名付けて人間学園ってい…ひゃあ!」
突然俺を放り投げる千速
「な、なにすんだ!」
「な、なんで、そ、そんなにくっついてんだ、ってまずい!」
「そこにいたのね…」
「今度はどんなお仕置きが必要かしら…千速ちゃん…?」
俺の背後から恐ろしい声が2つ
後ろを振り向けない
恐ろしくて
目の前の千速なんて涙目で明らかに狼狽してるし
「えーい!この小姑どもが!捕まってたまるかよっ!バイビー!」
そう言うと近くにあった車輪付のイスにまたがって逃げた
なんという脚力
あの仕事場ではそのままちょっと移動するためだけのイスがF1の様だ
あ、すごい綺麗なドリフトテク
「このっ!まてー!」
「とりあえずプロデューサーさんは確保っと」
追う律子
そして俺の方に優しく手を乗せる小鳥さん
しかし確保って…?
「小鳥さん…俺はなにもして…」
「プロデューサーさんは千速ちゃんのプロデューサーでしょう…」
顔が見れないが絶対怒ってる
ゴゴゴって擬音を背中に背負ってる
「焼き土下座と鉄骨綱渡り…どっちがいいですか?」
俺の顔がグニャリと溶けたような気がした

パーフェクトコミュニケーション!