1月31日 曇りのち雪
昼すぎ、私用でフィスクセートラまで行ったついでに、グスタフスベルイGustafsbergまで足
を伸ばした。
グスタフスベルイには陶器博物館があり、周囲では陶器やガラス製品などアウトレット商
品を販売している。日本人の旅行者が多く訪問する場所らしい。
じっさいには安くはないという現地情報を信じて行ったことはなかった。
が、気にはなっていたので、よい機会と思った。
現地情報通り、とくに安いということはないようだった。
ほしかった皿が2割引きでセールされていたが、じつはキズもので、セコンドなんとかいう
らしいが、製品の一部に小さな欠陥があり、安く売っているということだった。
ほしかった皿は、外周4,5センチ幅に青っぽいストライプが入っている。皿の中心から外
へ、細い青い線が3,4ミリ間隔で放射状に延びている。その色と手書きの線が何ともい
えず美しい。
ところが、この線が一部ショートしていたり、途中で欠けたりしている。あるいは皿のなか
に極小のポッチがはいってしまっている。これを4皿まとめ買いすると2千円ほど安くなる。
半額というのならともかく、それくらいなら完全品を求めたほうがよいのではないか。
ひと皿で計算したら、まあ500円の差ではないか。毎日のように使う可能性もあるわけだ
し、と購入は見送った。
代わりにというか、アンティークの店で、陶器の煮もの入れを買った。
70年の初め買いそろえた気に入りのシリーズで、大中小の皿、盛り皿各種あるが、この
ような10センチほども深さのある箱型は初めて見つけた。イモを入れても、シチューの入
れ物にもよいと思った。
値段は痛かったが、このシリーズは骨董価値が出ているらしいので、仕方がない。
この年になったら、いよいよ食事が大事。なのに好きな日本食材は手に入らない。食器類
くらい、少しはぜいたくをしなければ、生きていてもあまり面白いことはない。
夜、ユダヤの友人から連れ合いにメールが入ってきた。
この日、午後1時ころ、スチュースタstuvsta広場でナチスの集会が開かれたという。
人数はわからないが、ナチたちの車が駐車場を埋め、パトカーが数台出動し、暴力的なデ
モには発展しなかったが、不穏なムードであったと言う。
かれらはナチスの政党化を要求しているらしい。警察は彼らを撮影し車両ナンバーをすべ
て控えたという。
一度起きたことは再発し、重なる可能性もあるだろう。
デモの規模はともかく、スチュースタで、そんな不穏な事件が起きたことには、少なからず衝
撃を受けた。
この国にもイスラム、ユダ、ネオナチなど宗教対立、人種間闘争の火種はある。
北の果てとはいえ欧州の主要国のひとつ。中東地区とは比較にならないが、島国では想
像できないほど、特定のローカルや街中では緊張感を強いられる。
しかしスチュースタは、あんがいと外国人居住者が少なく、酒類販売店もないので穏やか
な地域と言われていた。ナチ崇拝者がデモるようなエリアではなかったはずなのに。
どこで生きても、右翼化国粋傾向、イスラム国の過激も対岸の火事とはいえない。自然は
破壊され、あらゆることで地球は火薬庫化へ転がっているように見える。
自分のようなうつけは、いよいよ皿と食事にうつつを抜かすしかないのではないか。