5月4日 曇りのち雨
午前中、近場の島を30分、散歩した。
新緑が日ごとに芽を伸ばしている。気温は相変わらず低い。10度もないが、確
実に春は訪れつつある。新緑がそれを教えている。
この国で、春を知らせる花といえば雪割り草である。
これは花期が長い。こちらに戻った4月半ば、すでに森の中は雪割り草の花畑だ
った。残雪と見まごうばかり、と言うのが大げさでもなく、地表を小さな白い花が覆
い尽くしていた。
それが、いまもなお咲き誇っている。
雪割り草には、日本ではどうなのか知らないが、この国にはルールがある。
青い雪割り草は摘んではいけない、というのである。理由は、それが希少だから
である。ダイヤモンドと一緒である。たしかに、青色の花弁は可憐で、野の美しさ
をおぼえるが、姿かたちは関係ないのだそうだ。
きょうの散歩の道すがらに、青い雪割り草はなかった。
しかし、数日前、別の公園で数本を見つけて、写真を撮ったのでここに残しておこう。
昼すぎにシャーラホルメンというところへ、ドライブだてら行った。
車で30分くらい、イケアの近く、よく訪れるモールがあるのだが、きょうは駅の並び
の商店街をのぞいてみた。
このあたりは、ほとんど異国であった。
妙な表現になるが、スウェーデンの中の外国ということである。
中東アラブの店が軒を並べている。ペルシャじゅうたんの店、アラビア趣味の雑貨
店、シーアのお菓子屋。ここでは、愛想の良いシーア人の青年が、試食品を差し
出した。甘味が強くて買わなかった。
それから「世界の品を集めている」スーパー、アラビア語を掲げる洋品店、アラブの
スーパーが続く。
噴水のある広場では、アラブ人の経営する青物マーケットが店を広げている。
店の中も外も、異国人ばかりという印象である。
大半が褐色の、眉毛の濃い人たちで、白人もいるが、言葉を聞いていると東欧の人
たちが多い。スウェーデン語を聞くことはきわめてまれである。
ここでは、スウェーデン人は完ぺきにマイノリティーである。
シリアの人口の5パーセントがスウェーデンに来ているという。
シリアだけでそうなのだ。これに中東諸国、アフリカ諸国、東欧諸国、アジア諸国と
大挙して外国人が押し寄せている。
日本人である自分が言うのもおかしな話だが、この国は外国人に占拠されている
のではないか、と思う。
自分など、日本の年金で生活し、それでも正直にいえば多少は肩身の狭い思いで
暮らしているのだが、前掲の国々の人たちは堂々と、大手を振って歩いている。
さまざまな補助金を受け、ありていに言って不労所得を得ていながら、この国に来
てやっているのだ、という風に見える。
これが、「異国人による占拠」というイメージを、いっそう強く抱かせるのだ。
70年。私が最初に来た当時のスウェーデンは、もう完全にどこかへ消えた。
春を知らせる、白い雪割り草は、昔のままの姿を見せているのだが。