6月16日 晴れ
晴れたのでユールゴーデンを散歩した。
今度の帰国後初のユールゴーデン。王子エンゲシュンの美術館をのぞいて、岬ま
でダラダラ歩きで1時間弱。
帰りのバスは4時半ころのラッシュ。前のボックス席の英国人が、のべつまくなしで
しゃべってうるさかった。隣の赤毛美女がかわいそうだった。
さて不動産。ここでは中古物件についてのみ。
どうやって物件を探すのか。
この国ではネットで検索するのが一般的である。
ネットの名前はhemnetヘムネットという。日本でも開けるのではないか。
hemヘムはホームのことである。
このページを出して、希望条件などをクリックする。
まずは住みたい街、コミューンを選ぶ。
さらに戸建かマンションか。マンションでもメゾネットか、平屋続きか、などから選択。
それから購入希望最高金額、毎月の希望最大管理費、希望最低部屋数を選択。
これにバルコニーとか風呂とか、追加の条件があれば記入する。
価格の選択肢をみると150万円から2億3000万円くらいまで、10数段階のランク
がある。無制限というのもある。
で、検索すると、金額順に希望該当住宅が順繰りに画面へ出てくる。
物件は4×20センチくらいのスペースに、コンパクトに紹介される。
左端に4×5くらいの大きさの写真が一枚。価格、管理費、地区、広さ、部屋数、住所
が続き、紹介文の冒頭2行くらいが表示される。
売り出し中の物件は、このスペースですべて閲覧できる。
たとえば2000万円で3部屋、管理費が7万円という条件で見ると、ストックホルムだ
けで50件くらいは出てくる。
詳細が知りたい場合は、その物件をクリックする。
するとページが代わり、諸条件に加えて、物件の説明があり、写真、地図、間取りが
みられる。
間取りはじつにいい加減である。紹介文に、平気で「住人からの聞き取りなので、正
確ではない」と書いてある。日本では考えられない。
ちょっと意外なのは、そのくせ不動産屋・担当者の顔写真と携帯電話番号、紹介文が
載っていることである。
だいたいは笑顔で、しかし男性はノータイの者が多い。
この担当者が物件の説明を行うというスタイルである。
玄関ホールから居間、食堂、寝室、バスルーム、バルコニーなど、それぞれについて
特徴が書かれている。内容は大差がない。
写真は10枚前後。だいたい現物よりは美しく写っているが、逆の場合もある。中には、
ビデオ撮影で室内の様子を見せる担当者もいる。
地図には、最寄り駅、付近の学校、スーパー、エンターテインメント、レストランなどが、
色分けされた小さな丸で示されて、該当部分をクリックすると名前と物件からの距離
の書かれたメモが出る。
さらに、管理費に含まれる料金、だいたいは水道、暖房、テレビが込み。たまにインター
ネット料金が含まれる。電気は、個別使用料がかかる。
駐車場料金は戸外で1500円前後。ガレージだと3000円前後。
管理会社の紹介。建物に付属する、個別割り当て物置き、共同洗濯室、サウナ、集会
場の紹介。
さらに修繕修理の履歴など。
マンションは1940年代からのものが多く、水道管、バルコニー、窓などの改装、外部
の補修などいつ行われたが書いてあるのがふつうである。
そして、物件の閲覧日時が書いてある。
だいたいは週末の昼前後、とウィークデーの午後。2回だけの閲覧が多い。
閲覧時間は30分が一般的である。
希望者は不動産担当者にメールで事前通知する。
すべてメールでのやり取り。
むろん、電話で問い合わせはできるが、日本のように面談して、という手続きは踏まない。
閲覧後はオークションになる。これがいやらしい。
日本の中古住宅事情は知らないが、ここでは購入希望者が入札する。
たとえば2000万円の物件に、購入希望者が複数いれば、各自が値段を競り上げる。
不動産屋が客に電話で連絡して、現在の高値を報告する。
「それで、どうしますか。値を上げますか」と、聞いて回るのだ。
この入札額のアップは、ネットで見ることができる。
入札者は、入札順に番号が振られ、入札価格とその日時が書かれ、これは入札しな
い人間もみることができる。
だいたい8万円くらいずつ上乗せされていくケース、一気に100万円単位で上乗せさ
れるケース、ふたりが競り合っている中で、最後に突然、最高値を表示する第三者が
出てきて、横からさらっていくケースもあった。
ストックホルムは恒常的に住宅不足で、ほとんどの物件は価格が上がる。
直近1カ月で調べたら、平均して400万円くらいアップしていた。
いちばん高値になったのは、1800万円くらいの70平米3部屋が、3000万円弱にア
ップしたケースである。
昨年、たまたまゴルフで一緒になった不動産屋が言っていた。
「この街には毎日、満員バスで人間がやってくる。しかし、家は一軒しかない。自分も不
動産会社で働いているが、希望住宅はまだ見つからない」
この10年で不動産価格の上昇率80パーセントとも聞いた。
日本と違って、この街では、中古物件は値が上がるのである。
という事情があって、最初の希望購入価格というのは、売値の2割増しくらいは覚悟し
ておかなければいけない。
あるいは逆に、例えば3000万円の物件を購入するつもりなら、売り値は2400万円
くらいのものを探す、ということになる。
試みに希望購入額無制限で引いてみた。
いちばんの高値は、市内リディング島にある戸建て、10部屋の250?が7億5000
万円だった。
この島には、彫刻家カール・ミレスの庭園美術館がある。もと日本の商社の代表が居
を構えていた土地柄で、いまでも富裕層が多く住む。
しかし、この物件、建築されたのは1892年である。
マンションに限ってみると、市内の海岸通り、7部屋の286?で6億7500万円だった。
これは1888年の建築である。
価格はともかく、年代物にはため息が出る。(続く)
そういえば、売買契約書の翻訳料を間違えていた。1時間300クローネは間違い。正
しくは600クローネ(9000円)だった。
簡単な不動産売買契約書の翻訳で1万8000円もの料金がかかるわけだった。