横浜へ向かって 僕は電車にいた
東京の空は青く 都市の憂鬱は踏み切りの彼方へ加速しながら
電車は横浜へ向かうのであった
とある駅で 幼子と母親が乗ってきて 寄り添い立っていた
電車は 揺れながら走り出した
近くの座席に座っていた僕は 思わず立ち上がり
幼子に 小さい声で 座って と言った
しかし 母親は怯えた表情になり 幼子を抱きしめて 「やめてくださひ」と言った
彼女の目付きは 知床半島の奥地で 突然 荒れ狂う熊に遭遇した
哀れなきのことりの老人のそれであった
動転した僕は すみませ・・・ と言いながら 座席に戻った
いったい何が僕の身に起こったというのか
いったい僕は悪なのか 嗚呼 僕はどうなってしまったのか
電車の窓にうつる僕の姿は 黒い服にサングラス マスクをかけ
耳をふさぐイヤホンから 大音量で尾崎豊が流れている
それはまさしく 都会を放浪する不良 または変態のそれであった
まわりの乗客は 明らかに興味を覚えながら
しかし何も言わずに 黙って床を見つめており
静寂とレールの音だけが 空ろな車内に響くのであった
僕は ひりつくようなある種の欲望を感じた
それは叫びであった 叫びへの要求であった
僕は小さい声で 何度もつぶやいた
「本当は何もかも違うんだ」
東京の空は青く 都市の憂鬱は踏み切りの彼方へ加速しながら
電車は横浜へ向かうのであった
とある駅で 幼子と母親が乗ってきて 寄り添い立っていた
電車は 揺れながら走り出した
近くの座席に座っていた僕は 思わず立ち上がり
幼子に 小さい声で 座って と言った
しかし 母親は怯えた表情になり 幼子を抱きしめて 「やめてくださひ」と言った
彼女の目付きは 知床半島の奥地で 突然 荒れ狂う熊に遭遇した
哀れなきのことりの老人のそれであった
動転した僕は すみませ・・・ と言いながら 座席に戻った
いったい何が僕の身に起こったというのか
いったい僕は悪なのか 嗚呼 僕はどうなってしまったのか
電車の窓にうつる僕の姿は 黒い服にサングラス マスクをかけ
耳をふさぐイヤホンから 大音量で尾崎豊が流れている
それはまさしく 都会を放浪する不良 または変態のそれであった
まわりの乗客は 明らかに興味を覚えながら
しかし何も言わずに 黙って床を見つめており
静寂とレールの音だけが 空ろな車内に響くのであった
僕は ひりつくようなある種の欲望を感じた
それは叫びであった 叫びへの要求であった
僕は小さい声で 何度もつぶやいた
「本当は何もかも違うんだ」