ひと月ひと月、「音の歳時記」があるそうです。
詩人、那珂(なか)太郎さんの「音の歳時記」はそれぞれの月を…
詩人、那珂(なか)太郎さんの「音の歳時記」はそれぞれの月をオノマトペ(擬音語)で表現している。4月なら「ひらひら」、5月は「さわさわ」という
▼1月は「しいん」である。<石のいのりに似て 野も丘も木木もしいんとしづまる>。新しい年がスタートする厳粛さや、冬の冷たい空気に静まりかえった正月を思えば、なるほど「しいん」は1月らしい
▼落ち着いた元日の「しいん」の音を容赦のない大地震の響きがかき消してしまった。元日に起きた能登半島地震。新年早々の大災害にうろたえる。現地が心配である
▼石川県輪島市で起きた火災のすさまじさを伝える映像に息をのむ。屋根の崩れ落ちた家々を見るのが苦しい。発生は午後4時10分ごろ。何も起こらなければ、それぞれの屋根の下にあったはずのものを想像する。家族のだんらんや笑い、あるいはうたた寝。突然の大揺れはそういう年の初めのささやかな穏やかさまで奪っていった
▼現地ではなお大きな揺れが続いている。家屋倒壊や土砂災害の危険もある。寒さとまたいつ大きな揺れがという不安。その中での避難や不自由な生活はどんなに心と体の負担になるか。支援と復旧に国、国民の力を合わせたい
▼いつ起こるか分からぬ震災に対し、日ごろの備えの大切さをあらためて知る。地震は人の都合などおかまいなしで元日だろうとお目こぼしも手加減もない。
でした。
《オノパトペ (谷口幸璽)
四月の「ひらひら」は、蝶々でしょうか。それとも桜吹雪? 「たいらばやし」か「ひらりん」かって、それは落語の「平林」でした。今年の一月は「ぐらぐら」という、地震の音でしょうね。倒壊した家屋を見つめ、ただもう呆然と佇む人々、言葉も出ない。やはり「しいん」でしょうか。全国民からの「頑張って!」の、励ましの声を待つ。》