半次郎の“だんごんがん”

要するに、居酒屋での会話ですね。
ただし、半次郎風のフレーバーがかかっています。
≪安心ブログ≫

『不思議な体験』

2013年07月12日 13時02分37秒 | ★ やや半次郎の世界 ★

こんにちは、やや半次郎です。

梅雨も明けて真夏日が続いています。
まさに夏本番です。
真夏と言えば、やや半の可笑しな世界で暑さを吹き飛ばして下さい。

………………

『不思議な体験』

いいか、これから話すことは嘘や作り話の類いではない。
だがな、信じるも信じないもお前さん方の勝手じゃ。
話を最後まで聞いたからといって、お代を取ったり、物を売りつけることもないから安心して聞いてくれ。

あれは今日と同じ暑い夏のことじゃった。
そう、今から20年ほど前になるじゃろか、わしはその頃、広い公園のある郊外のとある町に住んでおった。

その頃のわしは、まだ会社に勤めておった。
じゃから、土日の休みとなると、早起きして公園に出掛け、ランニングやストレッチ体操をやったものだ。
わしもまだ若かったからのう。

そうして、朝の早い時間に汗をかいて、家に帰りシャワーで流し、ゆっくりと朝食を摂るのが日課だった。
尤も、雨の日は家に閉じこもっているしかなかったがな。

それで、その日も、朝の4時半に起床し、身支度を済ませて5時には公園に行ったのだった。

公園に着いて、いつものように広い周囲をジョギングで5周し、クールダウンを兼ねてストレッチ体操をしていた時のこと、何気なく目をやったゴミ箱に、白い新聞が、キレイに畳んだ状態で捨ててあるのに気付いたのじゃ。

おやおや、たいていクシャクシャになって棄てられているのに…と不思議に思い、近付いて見てみたのじゃ。

そう、案の定、その新聞は競馬新聞だった。
おそらく、前日の金曜日に開催していた地方競馬の新聞だろうと、自分の中で納得のいく答えを勝手に見つけだしておった。
この新聞を購入した本人は、どのくらい的中したのかな~などとスケベ心が頭をもたげてきたので、まじまじと見てビックリ仰天したのを今でもはっきり覚えておる。

それは何と、中央競馬の競馬新聞だったのじゃ。
中央競馬じゃ金曜日に開催しない。
ひょっとして先週の土日のものか?
それにしてはキレイ過ぎる。

わしは、日付を確認して驚いた。
何と、今日の新聞だったのじゃ。

いや、それだけなら何も驚くことはない。
土曜日に開催する中央競馬のレースを掲載した競馬新聞は、前日金曜日の昼過ぎにはコンビニや駅の売店に並ぶ。
新聞を買ってレース検討をし、その新聞に書き込みを入れたまでは良かったが、何らかの事情で競馬が出来なくなり、公園に棄てた…そんな推理が成り立つじゃろ?

わしも昔は競馬をやっておった。
まだ単勝、複勝、枠連の3種類しかなかった時代じゃ。
今では馬連やら馬単やらワイドやら、三連複、三連単と馬券の種類が増え出し、マークシートをどう塗って良いか分からんようになってな。
それで止めたんじゃ。

今まで通り、単勝、複勝、枠連だけで買っておけば良い訳だから、何も止めることはないと思うじゃろ?
ところがそういうもんではないんじゃ。
競馬に行く者の心理を全く解っとらん。
多かれ少なかれ、みんな欲に引きずられて競馬場に行くのじゃ。
高額配当が出たら、その馬券を買っていたいと思うものなんじゃ。

しかも、みんなが様々な買い方をするようになった結果、枠連では万馬券が出んようになったのじゃ。
それが寂しゅうてのう。

…そんな話しはどうでも良かった。
そう、それで眠っていたわしのギャンブル魂に火が点いたのじゃ。

わしはその新聞を拾って帰ると、シャワーを浴び、朝食を摂って競馬場へと向かったんじゃ。

久々の競馬場じゃ。
開門前じゃと言うのに、並んでおる者が数十名はおる。
夏競馬はこの競馬場ではやらないから、ウインズと同じようにテレビ画面を観るしかないのじゃが、それでもこんなに人が集まっておる。

わしは座る場所を確保し、早速、1レース目の検討をすることにしたんじゃ。
誰かが先に検討して書き込んであるのは不快なことじゃが、久し振りの競馬で馬もよう分からんから、逆にありがたかった。

わしは誰だか分からんこの新聞を棄てた人の記入した内容通りに買ったのじゃ。

1レース目にはこう書き込まれていた。
1、12、350、140
2、3、200
3、7、580
3-12、1280

わしは混乱した。
混乱した結果、単・複の買い目と購入金額を書いたものだと勝手に判断したんじゃ。
ピラミッドやナスカの地上絵などを発見した人の心理に似ている。
明らかに金額がおかしいが、1の位の0を省略したのじゃろうと思い込ませておった。

つまり一つ目は、単勝で12番を3500円か1400円買うと言うメモ。
二つ目は、単勝で3番を2000円買うと言うメモ。
三つ目は、単勝で7番を5800円買うと言うメモ。
そして四つ目が、馬連か馬単で3-12を1万2千800円買うと言うメモ。

わしはそう判断したんじゃ。
それにしても、金持ちの御仁も居るものじゃと思うとった。
わしは一レースにそんなに大金は張れん。
金額を変えて買うことにした。

それに、単勝を三つも買うのはわしには出来んかった。
勝つ馬は一頭だけじゃからのう。

わしは最初に書いてある12番だけ単勝を買い、3番と7番は複勝を買っといた。

ところが異変に気付いたのはそれから数分後だった。
レースが始まったのだ。
映し出される場内放送のテレビ画面を食い入るように見つめておった。
この瞬間は、期待が身体中に漲っておって、何とも言えん心地良いもんじゃ。

ゲートが開いて、14頭の馬が一斉にダートコースを飛び出して行った。
乾いた砂が容赦なく後ろを走る馬や騎手を直撃する。

わしの買った馬は、7番が好スタートから先頭に躍り出て皆をリードする展開じゃった。
3番が、その3頭後の内で追走し、12番は中団で脚を矯めておった。

4コーナーを回って、7番の馬は後続をまだ2馬身ほど離しておった。
3番が内を突いて迫って来る。
残り200m。
7番が逃げ切るか、3番が交わすか…。
そこを大外から12番が渾身の力で追い上げて来る。
3番が7番を捉えてハナに立ったところを、後ろから強襲して来た12番と並ぶようにしてゴールになだれ込んだ。

長い写真判定の結果、勝ったのは12番の方で、着差は僅かハナ差だった。
逃げていた7番は、この2頭には及ばなかったものの、凌ぎきって3着に残ったのじゃった。

つまり、わしの買った馬券は、完全的中だったのじゃ。
それだけじゃない。
配当を聞いて驚いた。
何と、ワシが勝手に購入金額だと思っておったのは、配当金だったのじゃ。

12番の単勝が350円で複勝が140円じゃ。
2着の3番は複勝で200円、3着の7番が580円じゃった。
そして馬連の3-12が1280円じゃ。
この新聞に書き込まれたメモの通りの結果じゃった。
つまりこのメモは、発表された配当金を書いたものだったのじゃ。

信じられないじゃろ?

しかし、事実なんじゃ。
腰を抜かさんほど驚いたものじゃよ。

当たり前じゃが、その日は、最終の12レースまで、パーフェクトじゃった。
稼がせて貰ったよ。

それにしてもこの人は何故、事前に結果が分かったのじゃろうか?

もしかしたら時間というものはみんなに一斉に訪れるものではなく、一人一人異なっているのかも知れん。

そうとしか考えられない出来事じゃった。
或いは、神様の仕業か…。
神様も競馬をやりたかったのかも知れんなぁ。

そして、やった結果、赤字になって、後のことを考えず、結果を記録したことも忘れて捨ててしまったのじゃろう。

By やや半次郎



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