自立支援法案が参院通過 障害者に利用負担求める
障害者への福祉サービスを一元化し、利用料の原則1割負担を求める障害者自立支援法案が14日、参院本会議で自民、公明両党の賛成多数で可決された。衆院に送付、今国会で成立する見通し。
同法案は、これまで身体、知的、精神の障害種別ごとに分かれていたサービス体系を一元化する内容。利用料が収入に応じた負担から原則1割負担に変わる一方、市町村の在宅サービスに対する国の財政負担を義務化し財政の安定を図る。
現在公費補助がある精神障害者通院費用、人工透析患者など「更生医療」や障害児など「育成医療」対象者の医療費も原則1割に引き上げられる。施行は来年4月。
同法案は障害者団体などからの負担増への反発が強く、先の国会では審議が難航。衆院は通過したが、参院で審議中に衆院が解散されて廃案となり、今国会に再提出された。
本当は自立支援ではなく自立阻害ではないか 障害者自立支援法案とは? - [介護・福祉の仕事]All About
本当は自立支援ではなく自立阻害ではないか 障害者自立支援法案とは?
「介護・福祉の仕事」 ガイド:宮下 公美子 2005年07月06日
2005年7月現在開催中の国会では、障害者自立支援法案の審議が行われています。この法案、自立支援どころか、障害者の自立阻害につながる粗悪法案だと言われています。法案を提出した与党自ら、修正ナシでは成立させられないと認めているというこの法案、果たしてどんな内容なのでしょうか。
どんな法案か?
厚生労働省のホームページにある「障害保健福祉施策の改革のポイント」を見ると、
1 障害福祉のサービスを「一元化」
サービス提供主体を市町村に一元化。障害の種類(身体障害、知的障害、精神障害)にかかわらず、障害者の自立支援を目的とした共通の福祉サービスは共通の制度により提供。
2 障害者がもっと「働ける社会」に
障害者が、企業等で働けるよう、福祉側からも支援。
3 地域の限られた社会資源を活用できるよう「規制緩和」
市町村が地域の実情に応じて障害者福祉に取り組み、障害者が身近なところでサービスが利用できるよう、空き教室や空き店舗の活用も視野に入れて規制を緩和する。
4 公平なサービス利用のための「手続きや基準の透明化、明確化」
支援の必要度合いに応じてサービスが公平に利用できるよう、利用に関する手続きや基準を透明化、明確化する。
5 増大する福祉サービス等の費用を皆で負担し支え合う仕組みの強化
(1) 利用したサービスの量等に応じた「公平な負担」
障害者が福祉サービス(個別給付)や公費負担医療制度を利用した場合に、利用したサービスの量や医療費、所得に応じた公平な負担を求める。この場合、適切な経過措置を設ける。
(2) 国の「財政責任の明確化」
福祉サービス(個別給付)の費用について、これまで国が補助する仕組みであった在宅サービスも含め、国が義務的に負担する仕組みに改める。
といったことが挙げられています。
これまで支援費制度に入っていなかった精神障害者も対象になるなど、いい点もあります。しかし、「障害者がもっと働ける社会に」など、掲げている理念はよくても具体策がない。さらには、障害者にとっては死活問題となるような、とんでもない内容も含まれているのです。どこがとんでもないかについては、
非現実的な応益負担
この法案の一番大きな問題点は、「利用したサービスの量や医療費、所得に応じた公平な負担」という部分です。障害者支援費制度の導入以来、サービス利用が急増しており、障害者福祉財政は破綻寸前。制度維持が難しくなり、新たな財源確保のため、これまでの「応能負担」から利用者がサービス量と所得に応じて支払う「応益負担」に改めようというわけです。
具体的に言うと、サービス利用量に応じ、定率1割負担を導入。生活保護世帯は負担ゼロ、市町村民税非課税世帯は所得に応じて15000円~24600円、一般は40200円と、所得に応じて負担上限を定めています。支援費制度では本人が負担できない場合、扶養義務者の収入に応じて負担額が決まっていましたが、この法案では、扶養義務者の負担を廃止した代わりに、本人負担上限額は、世帯収入に応じて決定することになっています。
障害者の多くは低所得であり、これまで障害者の約95%が無料で障害者福祉サービスを利用していました。しかしこの法案が成立すると、生活保護世帯以外は利用料を支払わなくてはならなくなります。障害者年金は月額10万円足らず。この中から、2万も3万も利用料を払って、どうやって暮らしていけばいいのでしょうか。
親元から自立し、一人暮らしを始めた障害者も、また親元に戻らなくてはならなくなるかもしれません。施設に通って、月1万円ほどの給与を得ていた障害者は、法案成立後は逆に施設の利用料を支払うことになります。わずかであっても、自分で働いてお金を得ることを励みにしている障害者はたくさんいます。それすら取り上げてしまうなんて。こんな内容でありながら「自立支援法」とはいったいどういうことでしょうか。
そもそも障害者福祉サービスは、高齢者の介護サービス以上に生活に直結しているもの。障害が重ければ重いほど、多くのサービスを必要とします。生きていくためにサービスが必要なのに、利用するたびにお金を払わなくてはならない。極端に言うと、これからはお金を払わなくては、食事を食べることも排泄をすることもできなくなるわけです。
利用料を負担してほしい、ということであれば、まず払えるだけの収入が得られる就労の場を確保することが先決のはず。障害者雇用が遅々として進まない状況の中で、負担だけを求めても無理があります。
この法案、まだまだ問題点はたくさんあります。
障害者関係の方だけでなく、介護関係の方も、どうかこの問題、関心を持っていただきたいと思います。
障害者への福祉サービスを一元化し、利用料の原則1割負担を求める障害者自立支援法案が14日、参院本会議で自民、公明両党の賛成多数で可決された。衆院に送付、今国会で成立する見通し。
同法案は、これまで身体、知的、精神の障害種別ごとに分かれていたサービス体系を一元化する内容。利用料が収入に応じた負担から原則1割負担に変わる一方、市町村の在宅サービスに対する国の財政負担を義務化し財政の安定を図る。
現在公費補助がある精神障害者通院費用、人工透析患者など「更生医療」や障害児など「育成医療」対象者の医療費も原則1割に引き上げられる。施行は来年4月。
同法案は障害者団体などからの負担増への反発が強く、先の国会では審議が難航。衆院は通過したが、参院で審議中に衆院が解散されて廃案となり、今国会に再提出された。
本当は自立支援ではなく自立阻害ではないか 障害者自立支援法案とは? - [介護・福祉の仕事]All About
本当は自立支援ではなく自立阻害ではないか 障害者自立支援法案とは?
「介護・福祉の仕事」 ガイド:宮下 公美子 2005年07月06日
2005年7月現在開催中の国会では、障害者自立支援法案の審議が行われています。この法案、自立支援どころか、障害者の自立阻害につながる粗悪法案だと言われています。法案を提出した与党自ら、修正ナシでは成立させられないと認めているというこの法案、果たしてどんな内容なのでしょうか。
どんな法案か?
厚生労働省のホームページにある「障害保健福祉施策の改革のポイント」を見ると、
1 障害福祉のサービスを「一元化」
サービス提供主体を市町村に一元化。障害の種類(身体障害、知的障害、精神障害)にかかわらず、障害者の自立支援を目的とした共通の福祉サービスは共通の制度により提供。
2 障害者がもっと「働ける社会」に
障害者が、企業等で働けるよう、福祉側からも支援。
3 地域の限られた社会資源を活用できるよう「規制緩和」
市町村が地域の実情に応じて障害者福祉に取り組み、障害者が身近なところでサービスが利用できるよう、空き教室や空き店舗の活用も視野に入れて規制を緩和する。
4 公平なサービス利用のための「手続きや基準の透明化、明確化」
支援の必要度合いに応じてサービスが公平に利用できるよう、利用に関する手続きや基準を透明化、明確化する。
5 増大する福祉サービス等の費用を皆で負担し支え合う仕組みの強化
(1) 利用したサービスの量等に応じた「公平な負担」
障害者が福祉サービス(個別給付)や公費負担医療制度を利用した場合に、利用したサービスの量や医療費、所得に応じた公平な負担を求める。この場合、適切な経過措置を設ける。
(2) 国の「財政責任の明確化」
福祉サービス(個別給付)の費用について、これまで国が補助する仕組みであった在宅サービスも含め、国が義務的に負担する仕組みに改める。
といったことが挙げられています。
これまで支援費制度に入っていなかった精神障害者も対象になるなど、いい点もあります。しかし、「障害者がもっと働ける社会に」など、掲げている理念はよくても具体策がない。さらには、障害者にとっては死活問題となるような、とんでもない内容も含まれているのです。どこがとんでもないかについては、
非現実的な応益負担
この法案の一番大きな問題点は、「利用したサービスの量や医療費、所得に応じた公平な負担」という部分です。障害者支援費制度の導入以来、サービス利用が急増しており、障害者福祉財政は破綻寸前。制度維持が難しくなり、新たな財源確保のため、これまでの「応能負担」から利用者がサービス量と所得に応じて支払う「応益負担」に改めようというわけです。
具体的に言うと、サービス利用量に応じ、定率1割負担を導入。生活保護世帯は負担ゼロ、市町村民税非課税世帯は所得に応じて15000円~24600円、一般は40200円と、所得に応じて負担上限を定めています。支援費制度では本人が負担できない場合、扶養義務者の収入に応じて負担額が決まっていましたが、この法案では、扶養義務者の負担を廃止した代わりに、本人負担上限額は、世帯収入に応じて決定することになっています。
障害者の多くは低所得であり、これまで障害者の約95%が無料で障害者福祉サービスを利用していました。しかしこの法案が成立すると、生活保護世帯以外は利用料を支払わなくてはならなくなります。障害者年金は月額10万円足らず。この中から、2万も3万も利用料を払って、どうやって暮らしていけばいいのでしょうか。
親元から自立し、一人暮らしを始めた障害者も、また親元に戻らなくてはならなくなるかもしれません。施設に通って、月1万円ほどの給与を得ていた障害者は、法案成立後は逆に施設の利用料を支払うことになります。わずかであっても、自分で働いてお金を得ることを励みにしている障害者はたくさんいます。それすら取り上げてしまうなんて。こんな内容でありながら「自立支援法」とはいったいどういうことでしょうか。
そもそも障害者福祉サービスは、高齢者の介護サービス以上に生活に直結しているもの。障害が重ければ重いほど、多くのサービスを必要とします。生きていくためにサービスが必要なのに、利用するたびにお金を払わなくてはならない。極端に言うと、これからはお金を払わなくては、食事を食べることも排泄をすることもできなくなるわけです。
利用料を負担してほしい、ということであれば、まず払えるだけの収入が得られる就労の場を確保することが先決のはず。障害者雇用が遅々として進まない状況の中で、負担だけを求めても無理があります。
この法案、まだまだ問題点はたくさんあります。
障害者関係の方だけでなく、介護関係の方も、どうかこの問題、関心を持っていただきたいと思います。