蘇州から上海へ着いたのは陽が西に傾きかけた頃でした。ビルの谷間に見える夕陽が、旅の終わりが近づいた気持ちと重なりました。薄暗くなりかけた豫園を足早に見学した後、上海蟹の夕食です。上海蟹を初めて食べてみれば、懐かしいお味でした。伯父が川蟹を捕る名人だったので、子供の頃、遊びに行けば、近くの川で山ほどの川蟹を捕ってきて、茹でて食べさせてくれました。上海蟹はその川蟹と同じお味でした。ゆっくりと済ませた夕食の後は、中国雑技団の演技を見に行きました。神業の連発でした。旅の疲れが出たのか、薄暗い中で眠くなりかけていたところ、いっぺんに目が覚めるほどヒヤヒヤする演技もありました。
もしかして五輪の体操の選手よりハイレベルなのではと思いました。「中国の体操が強い理由がわかったでしょう?」本当にそのとおりです。でも日本の選手も負けないで~!!
そして最後の観光は外灘の夜景です。
中国語ではWai Tanですが、「バンド」と英語名で呼ばれるのが普通のなのでしょうか。
黄浦江の対岸は租界時代の建物がライトアップされて、今の私の感覚で言えば、テーマパークの中にいるようでした。旅行の初日、バスで移動している時、黄浦江沿いのもっと上流の所だったような気がしますが、
2010年の万博会場であり工事が始まっています・・・と、聞いたように思います。
上海で最も高い建物であるマンションは、中国一の高さだそうです価格も当然高く、日本円にすれば1億3000万円くらい(だったかな?)です。裕福な人が増えた上海でも、中国の物価を考えれば、かなり高価です。当然買う人はいません。人が住んでいないはずのそのマンションは、夜になれば灯りがともっているそうです。何故灯りが灯っているのか・・・?上海の人達の間でも不満の声があるそうです。にもかかわらず、現在、そのマンションの横には、完成すれば世界一の高さになるというマンションを建設中でした。
又、北京五輪や上海万博のためなのか、ハイウェイの工事も順調に進んでいます。日本であれば、個人所有の土地を買収しなければなりません。交渉が難航すれば完成までかなりの時間がかかるのが当たり前になっています。でも中国は保障の問題は後にして、すぐに立ち退いてもらうので(強制的?)完成は早いと中国の人は誇らしげに話していました。民主主義しか知らない私には違和感を感じる解釈です。表面的には日本の昭和三十年代から現在の姿を、同時に見ているような中国です。まだ変わりつつあるのかもしれませんが、急激な変化にひずみが出来ているように私は感じました。そこは思想の違いで、中国にとってはひずみではないのでしょうか?
中国の一般的な人が重く感じる経済的負担は、家を買うこと、子供の教育費、医療費の三つだそうです。
医療保険はあるのですが、風邪を引いてお医者さんにかかれば、5千円くらいかかるそうです。豊かな暮らしをするために、中国の人はみんな頑張って働いているそうです。中国人のガイドさんも日本語や文化や歴史をよく勉強していて、本当に一生懸命に中国を案内していただきました。そして商魂たくましい面もありました。それらはすべて一生懸命働いているからだと感じました。
この旅行の間、素朴な疑問がありました。私はどこを旅行していても、犬や猫を見かけると大抵写真を撮ります。ところが見かけたのは犬が2匹と猫が1匹だけでした。朝、中国の人が犬を散歩させている姿を一度も見ていません。ガイドの張さんに、犬や猫を飼わないのか聞いてみました。「そんなことはありません。私も日本犬を飼っていますよ。可愛いですね~」張さん家のワンちゃんの特徴を聞いてみれば、たぶん紀州犬ではないかと思いました。はっきりと覚えていないのですが確か、最近の中国の裕福な人は犬を飼う人が増えて、ステータスシンボルの一つでもあると読んだことがありました。
「狂犬病の事があって、今は政府がうるさいのです」うるさくなる前はどういう状態だったのか・・・そこまで突っ込んで聞くことができませんでした。中国では犬を食べる食習慣があったのは有名ですが、今はどうなのでしょう?その事も聞けませんでした。こんな調子で、中国人のガイドさん二人に、どんどん話しかけた私、もしかすると私を苦手だったかもしれません。
えびすさんのような笑顔のお年寄り達と、気楽な冗談を言い合っている方がよほど楽しそうでした。
なので中国の方が嫌がりそうな質問ができませんでした。
(中国の電話ボックスです)
旅行の4日目、朝6時半にはホテルを出発して空港へ向かいました。三泊四日の旅は終わり、いよいよ帰国です。総勢23名の団体ツアーに一人で参加して、初めは知らない方ばかりでした。いきなり添乗員に間違えられて慌てたりしました(笑)知り合いが全くいなくても、 傍にいるどなたでも、見た感想などの言葉をかわしました。お食事の時は空いている席を見つけて、色々な方のお隣に座らせていただき、同じテーブルになった方達とお話をしながらいただきました。そうしていくうちに親しみが湧いてきて、寂しさは全くありませんでした。友達と参加するのも楽しいけれど、一人で参加すれば、たくさんの方達とお話をするようになり、それなりの楽しみがあります。年配の方が多く、皆さんニコニコ笑顔で旅を楽しまれ、とてもお元気そうです。ところが旅も終わり近くになってよくお話を聞けば、海外旅行も難しいのではと思うような病気で、病院通いをされている方が結構いらっしゃるのです。皆さんに共通していることは、前向きに人生を楽しんでおられることでした。難しいことなんて考えず、人生の苦しみも喜びも包み込んでしまうような笑顔は、本当にすごいです。
たったの四日間だったけれど、今回の旅行で見た事感じた事を、これからも記憶にとどめて、少しずつ理解していければ、私のこれからの人生も、少しは奥行きができるかもしれません。