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長生きしたければミトコンドリアの声を聞け

循環器と抗加齢医学の専門医がミトコンドリアの立場からみて、健康長寿を目指す「人」と「社会」に送るメッセージ

糖質制限は認知症を予防する

2016-06-24 13:41:55 | 健康
認知症は生活習慣と密接に関係しています。過食、特に糖質の摂りすぎは認知症の原因となります。

糖質はインスリンの分泌を促しますが、インスリンは細胞内でmTORという酵素を活性化するのです。近年、mTORは酸化ストレスと並んで老化を促すカギとして注目されています。

mTORは細胞環境の栄養状態を感知し、冨栄養条件下ではタンパク質合成や細胞増殖に関わっています。したがって、mTORシグナル は胎生期や成長期には必須の回路であり、これがないと生きていくことはできません。しかし、繁殖期を過ぎれば食に伴うインスリン分泌はmTORを介して老化を促すことになります。

mTORが老化を促すメカニズムの一つはオートファジー(自食作用)の抑制です。オートファジーとは細胞内タンパク質分解システムです。オートファジーは飢餓状態で誘導されます。飢餓によって誘導されるオートファジーの目的は、自己の細胞質成分を分解し、その分解産物を栄養素として確保することですが、同時にオートファジーは細胞の中で自然保護推進派の基本理念である「有害なゴミの減少」と「ゴミの再使用、再生利用」をも実行しているのです。

オートファジーが誘導されると、オートファゴゾームと呼ばれる隔離膜が細胞質内に形成され、過剰であったり、損傷を受けたりした細胞内小器官を分解します。電子伝達系が老朽化し、活性酸素を大量に放出するミトコンドリアもオートファジーによって排除されます。これはマイトファジーと呼ばれています。働きが悪く、会社に迷惑をかけるような社員はリストラされるのと同じです。

異常な高分子が徐々に蓄積していくことが個体老化に関与している可能性が指摘されています。特に、細胞分裂の停止した神経細胞にとって、オートファジーは異常物質の除去を効率よく行う大切な機能です。アルツハイマー病やパーキンソン病などの神経変性疾患では、細胞内に異常なタンパク質や劣悪なミトコンドリアが蓄積し、神経細胞がアポトーシスで死んでいくことが発症原因の一つと考えられています。

逆に、糖質制限でインスリンの分泌を抑えることはmTORの活性化を抑え、オートファジーやマイトファジーを促進して、認知症の発症を予防することにつながります。糖質制限の効果はこんなところにもあるのです。

このブログは風詠社出版の『長生きしたければミトコンドリアの声を聞け』の一部を抜粋、編集したものです。小著では少子高齢化社会を生き抜く真のサクセスフル・エイジングとは何かをテーマに、健康長寿を目指す「人」と「社会」に向けてミトコンドリアの立場と視点からメッセージを送っています。


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