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長生きしたければミトコンドリアの声を聞け

循環器と抗加齢医学の専門医がミトコンドリアの立場からみて、健康長寿を目指す「人」と「社会」に送るメッセージ

免疫を逃れる安倍政権とガン細胞の共通点

2020-02-27 08:12:37 | 政治
 ガンに対する免疫系は、人間社会で例えるならば、検察や司法に相当します。ガン細胞は免疫系からの攻撃を回避するために、制御性T細胞や骨髄由来抑制細胞のほかに、免疫チェックポイント分子による免疫抑制機能も積極的に活用し、免疫逃避しています。
 免疫細胞は抗原がはっきり提示されていれば、容易に攻撃態勢へ入れます。しかし、ガン細胞は巧みに“ガン抗原”を隠しながら増殖します。ガン組織は免疫の主力部隊であるリンパ球のT細胞が攻撃モードに入らないようにするケモカインという化学物質を分泌します。これは、ガン細胞を攻撃するキラーT細胞という免疫細胞に発信する「攻撃の必要はない」という偽信号です。ケモカインは制御性T細胞をガン組織内に呼び寄せます。制御性T細胞表面には免疫チェックポイント分子が発現しています。これが樹状細胞と結合することによってガン攻撃部隊であるキラーT細胞やヘルパーT細胞と樹状細胞との結合が邪魔されてしまいます。こうなると、樹状細胞は入手したガンの証拠をキラーT細胞やヘルパーT細胞に提示することができません。ガン細胞の動向を知らせる樹状細胞からの情報が遮断されるわけですから、キラーT細胞やヘルパーT細胞は攻撃目標を失ってしまいます。ガン組織から発せられるケモカインは、あたかも敵の軍事情報をかく乱するサイバー攻撃のようです。したたかなガン細胞は、まるでゲリラ戦の猛者のように免疫を攪乱し、監視の目を潜り抜けて周りの組織に浸潤していくのです。
 このような免疫を逃れる手法はガン化を企てる安倍政権においてもみられます。ガン化を企てる政権は、不正な増殖手段が人体の検察にあたる免疫組織によって摘発されることを最も恐れています。そこで、ガン化した政権は法に触れるような公文書は破棄、隠蔽するか、偽造や改ざんによって証拠を隠滅します。次に、不利な情報が公表されて世論からの批判を浴びないように、メディアに圧力をかけます。きわめつけは、起訴や逮捕を逃れるために検察に手を回して懐柔し、検察庁のトップの人事に介入します。ガン化を企てる政権はガン細胞同様、したたかに自分の身を守り、粛々と増殖していくのです。

ミトコンドリアが語る愛国心とは何か

2013-12-12 16:33:30 | 政治
政権与党である自民、公明両党は2013年12月10日、政府の外交・安全保障政策の指針となる国家安全保障戦略(NSS)に、「愛国心」を明記する方針を了承しました。国の安全保障政策が、個人の心の領域に踏み込むことにつながり、論議を呼んでいます。愛国心とは強制しないと身に付かないものなのでしょうか。細胞の中に住むミトコンドリアの立場から愛国心について考えてみたいと思います。

ミトコンドリアの祖先はαプロテオバクテリアという細菌でした。αプロテオバクテリアは酸素を利用して少しの栄養素から莫大なエネルギーを得ることができ俊敏でしたが、ひ弱で他の細菌たちの格好の餌でした。一方、私たちの細胞の祖先であるアーキアは大きく、強かったのですが、酸素がきらいでブドウ糖などの栄養素から十分なエネルギーを作り出すことができず、鈍重でした。しかし、今から約20億年前にαプロテオバクテリアとアーキアが運命の出会いを果たし、お互いの利害が一致して共生することになったのです。アーキアはαプロテオバクテリアに生命の安全と食糧を保証する代わりに自律的な増殖に不可欠な遺伝子を引き渡すように要求しました。αプロテオバクテリアはアーキアと共生することによって安定した生活と引き換えに自分の意思では増殖ができない従属的な生き物になったのです。このようにαプロテオバクテリアとアーキアとの共生は互恵的関係の上に成り立っています。

その後、αプロテオバクテリアはミトコンドリアと名前を変え、エネルギー産生に特化した細胞内小器官になりました。ミトコンドリアは自らの遺伝子をアーキアにあずけ、アーキアの中で生まれ、育つようになったのです。αプロテオバクテリアが産みだす莫大なエネルギーを得たアーキアは細胞へと進化し、やがて細胞の集団を形成して臓器となり、個体へと進化を遂げました。人体という小宇宙は細胞の集団から構成されていますが、個々の細胞はその中に暮らす無数のミトコンドリアによって支えられているのです。

ミトコンドリアと細胞との関係は国民と国家との関係に似ています。ミトコンドリアの役割はエネルギーを産みだすだけではありません。ミトコンドリアは細胞に対して従属的な立場でありながら、生死の決定権を持つという相互支配の複雑な関係を作り上げています。ミトコンドリアは個体を守るために宿主である細胞の理不尽な行いに対して命がけで立ち向かっています。細胞が正しく機能するための拠り所である憲法ともいえる遺伝子が修復不能な損傷を受けた場合、細胞がガン化しようとする場合やミトコンドリアがもうこれ以上生きられないような細胞内環境に置かれた時にはミトコンドリアは容赦なく死のシグナルを発令します。これはアポトーシスと呼ばれ、ミトコンドリアが暮らしやすい環境になるように政権を交代させることができるような権利です。

ミトコンドリアはいたずらに細胞をアポトーシスに導こうとしているのではありません。 ミトコンドリアは生まれ故郷である細胞を愛し、宿主の細胞が個体にとってなくてはならない役割を果たしていることを誇りに思っています。だからこそ、細胞と生死をともにしているのです。同じように、自分が生まれ育った国を愛さない国民がいるでしょうか。もし愛せないとすれば、そのような状況を作り出した国家に責任があるのではないでしょうか。愛国心とは、そこに暮らす人々の心の中に自然と根付いていくものです。時の為政者が国家権力を拡大する目的で民族の優越性を誇示し、他国を排斥するための手段として煽りたてるものではありません。国家は戦争に向かうことが正義だと国民に思わせるために愛国心を利用してはならないのです。

ミトコンドリアが細胞や個体を思う心に真摯な態度で応えることが細胞の役目であるのと同様に、国家もそこに暮らす人々が国土を愛し、民族としての誇りを子孫に受け継いでいけるように国内の環境を整え、個体である国際社会に貢献することが求められるのです。そうすれば、愛国心は自然に育まれるのではないでしょうか。

このブログは風詠社出版の小著『長生きしたければミトコンドリアの声を聞け』の一部を抜粋、編集したものです。小著では少子高齢化社会を生き抜く真のサクセスフル・エイジングとは何かをテーマに、健康長寿を目指す「人」と「社会」に向けてミトコンドリアの立場と視点からメッセージを送っています。私たちはミトコンドリアの声に真摯に耳を傾け、幸福な少子高齢社会への道を歩んでいかなければなりません。それこそが、ミトコンドリアがリードした生命進化の頂点に君臨する人類の責務であると思うのです。