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長生きしたければミトコンドリアの声を聞け

循環器と抗加齢医学の専門医がミトコンドリアの立場からみて、健康長寿を目指す「人」と「社会」に送るメッセージ

糖尿病は健康寿命を15年縮める

2016-03-08 12:31:12 | 健康
肥満によってリスクが高まる糖尿病は、寿命ならびに健康寿命を十五年短縮することが知られています。カナダ・オンタリオ州の20歳以上の住民について、1994年から2000年の間における心血管イベント発症状況を、糖尿病ありの379,003人と無しの9,018,082人について調査した結果によると、糖尿病のある人は、無い人と比較して、男女ともに心筋梗塞、脳卒中の発症年齢が約15年若く、死亡する年齢も約15年若かったということです。

糖尿病の恐ろしさは、症状もなく静かに進行するところにあります。糖尿病で神経が障害されると通常感じる痛みを感じなくなります。狭心症や心筋梗塞では心筋細胞の酸素不足に伴って心臓に強い痛みが生じますので、患者さんはすぐに病院を訪れて治療を受けることができます。しかし、痛みがなければどうでしょうか。何となく、胸苦しい程度であれば病院を受診しないかも知れません。糖尿病の患者さんでは心臓神経が障害されているために心筋梗塞になっても全く痛みを感じないで症状が悪化することが多々あります。気がついた時には、心臓のポンプ機能が著しく障害されて手遅れになっていることも稀ではありません。

糖尿病は心筋梗塞や脳卒中といった直ちに生命を脅かす病気に関連しているだけではありません。糖尿病を放置すると透析を必要とする腎不全を発症します。また、糖尿病性網膜症は日本で成人の失明原因の第一位であり、糖尿病患者さんの生活の質を著しく損なう病気の一つです。さらに、糖尿病性腎症はわが国で約30万人存在する血液透析の原因疾患の第一位を占めます。維持透析では一日3時間、週に3回という時間的制約に加えて、肉体的、精神的苦痛も大きく、日常生活に多大な悪影響をもたらします。さらに、一人当たり年間約500万円という医療費が医療経済を圧迫していることも事実です。

糖尿病は下肢の閉塞性動脈硬化症から足の壊疽を起こす原因としても第一位です。足の壊疽は、放置するとバイ菌が血液の中に入り、敗血症を起こして死に至ります。壊疽は救命のために足の切断を必要としますが、たとえ足先を切断しても血液の循環が悪いために傷が治らず、切断した上の部分で切断を繰り返さなければならないのが実情です。

このように糖尿病は症状もなく静かに進行し、気が付いた時は取り返しのつかない大病に発展する恐ろしい病気です。糖尿病は生活習慣の改善である程度予防できる病気です。糖尿病家系で糖尿病体質の方は、糖質を控えめにした食事(一日ごはんにしておちゃわん二杯まで)を摂り、週に3回は30分程度の有酸素運動(少し息が弾む程度の早足やジョッギング)を心がけてください。年に1回は健康診断で糖尿病の有無をチェックすることも大事です。

このブログは風詠社出版の『長生きしたければミトコンドリアの声を聞け』の一部を抜粋、編集したものです。小著では少子高齢化社会を生き抜く真のサクセスフル・エイジングとは何かをテーマに、健康長寿を目指す「人」と「社会」に向けてミトコンドリアの立場と視点からメッセージを送っています。


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