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怠惰なひな菊

漫画家・萩原玲二(はぎわられいじ)の怠惰なブログ(2006~2019)

タカハタ=ミヤザキ(Takahata-Miyazaki)

2014-01-25 05:02:03 | アニメーション
The Beatles - Two Of us (video - Let it Be) - YouTube



文藝春秋 2014年 02月号 [雑誌]

スタジオジブリ30年目の初鼎談
高畑勲/宮崎駿/鈴木敏夫

文藝春秋


たしかにこの三者の活字化された鼎談というのは、宮崎駿原理主義者歴35年の自分でも記憶がない。
高畑・宮崎対談ですら、95年の『耳すま』公開時のキネ旬ムックに載ったものくらいであろうか。

冒頭、互いの新作への注文は、二人の作家としての「個性」をあまりに端的にあらわしていたので、興味深すぎた。

宮崎さんは「ディテール」に、高畑さんは「コンセプト」に言及している。

ようするに、宮崎さんは、漫画家が漫画を描くようにアニメーションを撮っている、いわば塹壕で収束手榴弾を片手に、マークI戦車をいかに撃破するかの戦術を捻り出す鬼軍曹であり、高畑さんは、銃後の図上演習で「啓蒙」という戦略を練り上げる参謀総長というわけである。

この二人の関係をたとえるのに、もっとも相応しいと自分が思えるのは、やはりレノン=マッカートニーのそれである。

『アルプスの少女ハイジ』は『ラバー・ソウル』であり『リボルバー』でもあり、『母をたずねて三千里』と『未来少年コナン』は『サージェント・ペパー』だったり『マジカル・ミステリー・ツアー』だったり『ホワイト・アルバム』だったりしつつ、『赤毛のアン』が『レット・イット・ビー(ゲット・バック・セッション)』という。

『アン』の制作をめぐって二人が決裂、袂を分かったおかげで、われわれは『カリオストロの城』を観れるのだから、これが天の配剤のなんとかであろうか。

解散後のポールへの悪口は峻烈きわまりないのに、他人がポールの悪口をいうのは許せなかったというジョンのBL的?挿話も、その関係性が似ているように思うわけである。

となれば、大塚康生さんはリンゴ、近藤喜文さんがジョージ、鈴木敏夫PDは当然ブライアン・エプスタインということになろう。

エプスタインの(薬物による)事故死によって実質的にビートルズが崩壊したように、ジブリも鈴木さんという強力な「処理家」がいなければ、その巨大さゆえに同じことになったであろうか。
銀行から広告屋からヤクザの対応まで‥‥‥

‥‥‥

鼎談の最後に「天の時、地の利、人の和」の三つがそろったと高畑さんのいう『ハイジ』について、宮崎さんが、

僕も参加したし、他のスタッフも努力したけど、やはりあれは高畑勲が作り上げたものですよ。もっとちゃんと評価されてしかるべきなのに誰も評価していないから、頭に来ているんですよ。

と語っており、そういえばスピリの原作との相違点を詳細に検証したようなテキストを自分は目にしたことがない。

※1/30追記/↑のような寝言を言っておいてなんなのだが、アマゾンを彷徨ったところ『ハイジに会いたい!』という書物を発見し、取り寄せ、読むに、これがかなり決定的な『ハイジ』の副読本であった。

原作とアニメの違いも、丁寧に解説されている。

アマゾンのマケプレの世話になってしまうのはもったいない良書なので、いっそ文春ジブリ文庫で復刊すべきではないのか!とどこぞに注進したい気分!


ハイジに会いたい!―物語の背景とスイスアルプスへの旅

2006/07

三修社


その大胆な宗教色の排除については面白いテーマのように思うのだが‥‥‥自分はある機会があったときに、「ゼーゼマン家の屋根裏部屋隠し部屋でハイジが見るキリストの絵が(原作では、ルカ伝の「放蕩息子」の絵本の挿絵を見るシーンだったようである)、羊飼いの老人アルムの山を背景にした羊飼いの少女と老賢者に変更された理由は?」と、高畑さんに直接質問したことがあるのだった。

しかし高畑さんとしては、それほど深い意味はなかったような受け答えで「スタッフも反対しなかったしー」みたいな感じで、なるほどさもありなん‥‥‥だったのであった。

‥‥‥

『本へのとびら――岩波少年文庫を語る』での宮崎さんの『ハイジ』紹介の感動的文章。

 ぼくらがまだ若くて、たぶんあなたが生まれるずっと前に、ぼくらはこの本を原作に52本のテレビアニメを作りました。ぼくらの先頭にいたのは、ひとりの若い演出家でした。もちろん今はおじいさんになっていますが、その人が有名なわりにあまり読まれなくなっていた原作に新しい息吹を吹きこんだのです。
 アニメより原作を本で読んだ方がいいという人がいます。ぼくも半分位そう思っていますが、この作品はちがうと思っています。見、読みくらべてみて下さい。ぼくらはいい仕事をしたと、今でも誇りに思っています。



宮崎駿、高畑勲とスタジオジブリのアニメーションたち (キネマ旬報臨時増刊7月16日号)

1995年

キネマ旬報社


ハイジ (福音館古典童話シリーズ (13))

原書の見事なさし絵を復刻した、古典中の古典の決定版

福音館書店



思い出のマーニー

2013-12-13 18:28:13 | アニメーション
思い出のマーニー〈上〉 (岩波少年文庫)

ジョーン ロビンソン (著), ペギー・フォートナム (イラスト), 松野 正子 (翻訳)

岩波書店


思い出のマーニー〈下〉 (岩波少年文庫)

 

岩波書店


スタジオジブリ最新作は米林宏昌監督「思い出のマーニー」! 映画ニュース - 映画.com

『思い出のマーニー』のシノプシス的なものを読むと、なんかエリック・ロメールの映画みたいなんでは?と、思うた。
といいつつ、自分はロメールをきちんと鑑賞したことは、ほぼないのだが‥‥‥(『グレースと公爵』〔2001〕の、開き直りみたいなCGの使い方は大好き。)

『海辺のポーリーヌ』〔1983〕のソフトなエロティシズムを想起させるような、アニメーションは可能だろうか‥‥‥ジブリでそれができれば素晴らしいと思うが。

興味深いのは、脚本に安藤雅司氏の名前があることで、「演出」への足がかりみたいな?


ともあれ、題材を選択する「嗅覚(センス)」の鋭さは、宮崎さんがからんでいるのであれば、その「感覚(センス)」の底知れなさに、畏怖を禁じえない。

『思い出のマーニー』は、宮崎さんの『本へのとびら』にも当然取り上げられていて、

この本を読んだ人は、心の中にひとつの風景がのこされます。入江の湿地のかたわらに立つ一軒の家と、こちらをむいている窓。‥‥‥

と、紹介している。
なんとも喚起的。

とはいえ、宮崎さんの英国コンプレックスは、そのアメリカ嫌いと相まって、どう心情的に折り合いをつけているのかと、不思議ではある。
中共嫌いの麻雀好きとも、ニュアンスが違うし‥‥‥()


本へのとびら――岩波少年文庫を語る (岩波新書)

宮崎 駿 (著)

岩波書店



かぐや姫の物語(2)

2013-12-05 19:31:24 | アニメーション
ユリイカ 2013年12月号 特集=高畑勲「かぐや姫の物語」の世界

11月23日全国ロードショー! ! 高畑勲と『かぐや姫の物語』の世界に迫る! !
*インタビュー:高畑勲(聞き手=中条省平) 西村義明(聞き手=高瀬司) 朝倉あき(聞き手=さやわか)
*対談 奈良美智×細馬宏通
*資料:高畑勲フィルモグラフィー

青土社


ジブリ次回作は『平家物語』になる予定だった プロデューサーが明かす『かぐや姫の物語』制作秘話 (BOOKSTAND) - Yahoo!ニュース

↑こういう記事をみつけて、なるほど、『かぐや姫の物語』を観ていて、「竹取物語」というプロットと、かぐや姫というキャラクターの造形のちぐはぐぶりに、もやもやしていた謎がとけたように思ったのだった。

『かぐや姫の物語』を、『巴御前の物語』とスライドさせてみると、驚くほどにしっくりこないだろうか。

捨丸は木曽義仲なのである。

田舎と都の対比も、朝日将軍の十八番の挿話だし、高畑さんは『かぐや姫』のふりをして、こっそり『平家物語』の「部分」をつくっておられたんではないのか。

義仲と幼馴染であったとされる巴御前には、ハイジの要素はもちろん、ナウシカの要素もインクルーディングされとるわけで、『巴御前の物語』が高畑さんの構想通りに、『かぐや姫』の作画技術でアニメ化されていれば、大傑作になったろうことは間違いない。

で、記事の引用↓

「高畑監督は『ホーホケキョとなりの山田くん』のあとにやりたい企画があって、『平家物語』の中にある『巴御前』を映画にしたかったんですよ。(略)高畑さんが『彼としか映画を作りたくない』と言っているアニメーターがいて。それは田辺修という人間で、今回の『かぐや姫の物語』でも彼がキイになっているんですけど、その田辺さんが『平家物語』という企画に賛同しなかったんですよ」(西村氏)

つまり、もともと企画されていたのは『平家物語』のアニメ化。しかし、インタビューによれば、アニメーター・田辺氏の「『平家物語』のような軍記物は人が斬り合うわけでしょう。そんなものは作りたくない」という発言で、『平家物語』の企画が流れたそうです。



『平家物語』を却下された時点で高畑さんのモチベーションはダダ下がったと思われ、そういう意味でも『かぐや姫の物語』は、高畑・田辺の共同監督という定義が相応しいのではないか。

ユリイカのインタビューで高畑さんが、真面目なインタビュアーの質問に、どこか他人事みたいな、相槌で終始するような受け答えをしていた理由でもあるのかしらと。

すなわち、『かぐや姫の物語』の惹句「姫の犯した罪と罰」とは、

「田辺修氏の『平家物語』を却下した罪と罰」

という意味でもあるんではないんですか?どうなんですか?と、複雑な心持ちに!。


火の鳥 8・乱世編(下)

第8巻『乱世編(後半)』『羽衣編』

朝日新聞出版



かぐや姫の物語(1)

2013-12-03 00:22:10 | アニメーション
6分 ジブリ かぐや姫 プロローグ 〜序章〜 11-23より公開 Studio Ghibli Kaguya-hime no Monogatari - YouTube


日本プロ麻雀協会 第11期女流雀王戦

Twitter - ClubNPM 10回戦成績 大崎+63.4 冨本+19.8 水崎△26.2 ...

トータルポイント
大崎+172.8水崎+84.4冨本+6.7眞崎△263.9

↑この中間結果には「さすがおれたちのはちこ先生やで‥‥‥」とつぶやかざるをえない‥‥‥っ!


‥‥‥
んで、『かぐや姫の物語』〔2013〕なのであるが、高畑作品を語るインテリさんたちのどこか賢しら気取りの「圧」がイヤだったり、『山田くん』〔1999〕はエスタブリッシュメントの道楽にしか思えなかった自分でも、事前の情報ほぼ皆無で『かぐや姫』を観て、『かぐや姫』が「アニメーション」としての、画期的傑作であることは言を俟たないと思うた。

2010年代になって、『ハイジ』のリメイクを観られるとは!と、吃驚もしてしもうたし‥‥‥

中世の絵巻が動き出したかのようなカット(最後近くの「石山寺縁起」!)や、ノルシュテインを想起させる、キャラの輪郭線のざらつき、ゆらぎ。
それは諸星大二郎の質感にも似て、人物造形の田辺修氏がとことん意識していただろうことは確実だろう。

なんといっても、女童(めのわらわ/CV:田畑智子)最高!
なにあれ、くっそかわええ!!!
最後の薙刀!


自分が考えるに、本作の弱点はかぐや姫のアイデンティティが明確でないことだと思う。

そもそもかぐや姫は「人外」であるから、高畑演出のリアリズムには向かないというか、主観描写には根本的に無理がある。

御門(みかど)の求愛以後の展開には、そのあたりの曖昧さに一貫性をもたせるべく、脚本があがいた痕跡が見え隠れしていなかったろうか。

ジェンダーの権化みたいな古典の物語を、現代のジェンダーフリーの認識から再構築しようという演出の意思が、その水と油ゆえ、はたして噛み合わず、どっちつかずのまま失速してしまったとはいえないか。


しかし、高畑監督的には、かぐや姫が月に帰還することは、「死」であるのか「通過儀礼」の隠喩であるのか、気になるところではあった。
ラストカットの赤ん坊が答えなのかもしれないが‥‥‥輪廻‥‥‥


ともかく、高畑さんには遺作!として、3時間超ないし前後篇の『平家物語』を、是が非でも撮ってもらわねばなるまい。
スタジオ・ジブリの未来は、そのためだけにある(断言)。




第九軍団のワシ

2013-11-23 17:34:30 | アニメーション




真面目に地震のときしかTVをつけなくなってしまったので、当然番組表など確認しないから、ジブリのドキュメントの『プロフェッショナルなんとか』とかの、面白げなプログラムもことごとく見逃している昨今なわけである。

『風立ちぬ』のそれくらいは、観とけよおれ!という‥‥‥

Miyazakis nächstes Projekt – (UPDATE – Reportage hinzugefügt)

↑の「German Studio Ghibli Fanblog」で知ったのだが、先日の『プロフェッショナルなんとか』で、宮崎さんが漫画を描いておられるのが放映されたと!

『風立ちぬ』の後、こんな短い間隔で次の創作に動き出しているとは、さすがロケットエンジン=インディペンデントの宮崎さんである!

“漫画”というのが実に嬉しい(カブラペンを使っておられる‥‥‥!)。

掲載誌はどこなのであろうか‥‥‥
当世具足&槍=戦国期の時代劇であっても、別にモデグラでかまいはしまいが。

んで、そのサイト、ドイツ語なのでちんぷんかんぷんだが、『第九軍団のワシ』がどうのと、言及がみえる。

たしかに宮崎さんの『本へのとびら――岩波少年文庫を語る)』(岩波新書)の19ページには、

 歴史小説の傑作です。この物語を日本の古代の東北地方に移して、壮大なアニメーション映画を作れないものかと何度か試みました。人の姿のない古江戸湾の風景を想像したりしてワクワクしたりしましたが、まだ実現していません。
 とても好きな小説です。


とある。

え!ということはこの漫画、そうなの?ん?違うの?

などと、金輪際わかっておらん次第で、来年のジブリ作品はごろう&よねばやしの2本立てなの?とかまあ、これが“情弱”というやつか‥‥‥


第九軍団のワシ (岩波少年文庫 579)

ローズマリ サトクリフ (著), C.ウォルター ホッジス (イラスト),

岩波書店


本へのとびら――岩波少年文庫を語る (岩波新書)

宮崎 駿 (著)

岩波書店