横須賀うわまち病院心臓血管外科

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膿胸術後のMID-CAB・癒着が予想される症例の左開胸低侵襲冠動脈バイパス術

2019-06-28 06:00:50 | 虚血性心疾患
 膿胸の術後といえば、石灰化した胸膜を持つ結核性胸膜炎の次に最も胸膜が肺に癒着していることが予想される状態です。これに対して、再開胸してMID-CAB(左小開胸低侵襲冠動脈バイパス術)が可能かどうか。
 実は、MID-CABは、左第5肋間で開胸し、その直下が心臓であるため、最初に肺とコンタクトするのは、心膜表面を少し剥離してからということになります。心膜をあけるだけであれば、肺が癒着していても左開胸で十分到達可能です。あとは左内胸動脈の剥離ができるかどうかです。左内胸動脈は胸郭の前面に走行しているため、その走行に沿った前面が肺と胸膜の癒着がはがせれば、採取可能です。
 経験した症例は、膿胸に対して3回の手術歴があり、肋骨も一部切除されていて、肋骨弓が離断されたままの状態となっていたため、開胸器をかけることができない症例でした。このため、通常のMedtronicの開胸器が使用できず、工夫として、胸壁にたくさんの1号絹糸をかけて、この糸を前方に牽引することで胸壁全体を釣り上げて視野を確保、不足分は腹部大動脈瘤の手術時に使用しているKondorのリトラクターを駆使して視野を確保しました。Kondor以外の、Omnitractなどのリトラクターでもいいと思います。スタビライザーにも装着部位に工夫が必要でした。
 しかし、そうした工夫が奏功すれば十分可能な手術と実感しました。
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