横須賀うわまち病院心臓血管外科

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MICSアプローチによるスーチャレス弁移植(Intuity)

2021-07-09 03:27:18 | 弁膜症
 縫わなくても移植できるスーチャレス弁が大動脈弁移植用に昨年から発売されていますが、これは縫合糸を大動脈弁輪にかけ、その糸の一端を人工弁の弁座にかけ、弁を弁輪の位置まで落とし込んだ後に一針一針手で、もしくはKnot pusherで結紮するという人工弁移植の一連の操作を省略できるという意味で、約15-30分の時間短縮、および一針一針の操作におけるリスクの軽減が期待できる画期的な人工弁です。
 新しい技術でもあるので、最初の症例はプロクターと言われる技術指導者からの指導のもとに実施する必要があり、エドワーズ社のIntuityは1例目、LivaNova社のPercevalは5例のプロクター指導が必要です。横須賀市立うわまち病院心臓血管外科ではこの両方のスーチャレス弁をすでに実施済ですが、最近はIntuityのほうが若干多く使用しています。
 横須賀市立うわまち病院心臓血管外科では、右小開胸アプローチによるいわゆる低侵襲心臓手術を弁膜症の多くの症例、特に大動脈弁置換においては55%の症例で実施していますが、最新の手術方法としてこのスーチャレス弁によるMICS-AVR(低侵襲大動脈弁置換術)も実施しています。操作性が悪い右小開胸アプローチによる弁手術も、このスーチャレス弁を使用することで低侵襲アプローチの弱点を克服できます。このスーチャレス弁によって約30分の手術時間短縮が可能で、正中切開とそれほど時間的な差がなく人工弁置換術が可能となっています。
 このIntuityは大動脈弁輪下の左室流出路に位置するカフが広がって人工弁を固定すると同時に、印象としては左室流出路お広げる印象があり、今まで使用していたMagna弁やInspiris弁よりも弁口面積が術中の超音波画像上は広がって見え、実際に人工弁通過血流速度を測定すると、従来弁よりも低下し圧格差が少ない症例が多くなっています。人工弁の弁尖に対する負担も小さくなれば、より長期間の使用が可能になるとも考えられます。より長期の耐久性が期待できるResilia牛心膜を乗せたIntuityが一日も早く使用できるようになることを期待しています。
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