横須賀うわまち病院心臓血管外科

お気軽にコメントいただければ、一般の方の質問にも心臓血管外科専門医が答えます。

冠動脈外科学会で勉強したMICS-CABGのコツ

2021-07-30 07:00:49 | 虚血性心疾患
① MICS-CABG 胸骨から心膜を剥離すると心臓の重みで背側に心臓が落ちて視野が改善
② Octopus NUVOで心臓を押し下げてRITA採取の視野を確保
③ Octopus NUVOにかわるリトラクターを胸壁貫通で使用して視野確保可能
④ Y-Compositeは左第2肋間の小開胸創から引き出して胸壁外で作成
⑤ Octopus NUVOで肺動脈を吸引してけん引すると上行大動脈の視野、操作性が改善
⑥ CPB装着を躊躇せずにMICS-CABGを完遂する
⑦ FA-FVを確保してCPB装着をスムースにできるようにしておく
⑧ 脱転はLIMA Suture使用
⑨ 心膜を大きく切ると心臓の脱転が容易になり視野、操作性が完成
⑩ NT-SVGであればLITAとのY-Compositeも可能
⑪ NT-SVGが今後の主流・常識に HarmonicでHarvest

実際に学んだこと①③⑨で両側内胸動脈を採取してみましたが、実際に今までよりも快適にグラフト採取が可能でした。今後は両側内胸動脈が増えていきそうです。
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手術器具は消耗品!?

2021-07-30 06:40:17 | 心臓病の治療
 手術器具、特に冠動脈バイパス術に使用するマイクロの持針器、攝子などははっきりいって消耗品のようです。しばらく使っていると把持力が低下し、持針器などは把持した針がくるくる向きが変わってしまいます。特に8-0の針は細くて小さいので非常に取り扱いが難しくなります。数年使用した持針器では、針先の向きが容易に変わるので、吻合操作そのものが非常に難しくなりますが、これは今まで筆者の技術が劣っているためかと思っていましたが、把持力のある持針器に変えた瞬間に手術が上手になったような気がするのはどうも持針器のせいのようです。それもあって横須賀市立うわまち病院心臓血管外科開設後10年が経過した一昨年、他の手術器具を購入する際に同時に新しいチタン製の持針器、攝子を購入しましたが、これも新しいのにかかわらず把持力がなく、これは術者の問題ではなく単に粗悪品を購入してしまったということのようでした。大動脈疾患などは長い時間の手術に耐えられるように心臓血管外科医はスタミナとか力技が重視されるような、そうした印象を持っていましたが、特に冠動脈手術の場合はマイクロの持針器のように精密な操作を行う器具に関してはどうも術者がとことんこだわることが重要なようです。職人的な意識の高い日本のおいても技術でカバーというよりも、精度の高い手術を行うためには精度の高い器具が必要です。
 冠動脈吻合用のマイクロの持針器に関しては、先端にダイアモンド粉を吹き付けて把持力を強化したものがあり使用していましたが、今年に入ってどうも針先がくるくる回るようになり、手術に使用するのに我慢できなくなってしまいました。どうも先端に吹き付けられたダイアモンド粉が落ちてしまったようです。先端の形状がすり減ってしまっているのかもしれません。いずれ先端の性能が落ちた持針器はもう使えません。ダイアモンド粉の再吹付もできるようですので、それを試してみてだめなら更新ということになります。持針器は一本20万円もする高価なものなので出来るだけ長く使いたいものです。
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