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上五島住民新聞ブログ版

みんなで町政と自分たちの町を考えるインターネットスペース。新上五島町より発信。

手数料・使用料見直し問題(12月号2面)

2007年02月11日 | 新聞記事(一部公開)
問われる審議会方式の質

この答申は、昨年12月に策定された行財政改革大綱にある「受益者負担の原則、原価主義による使用料・手数料の見直し」を受けた具体化作業。使用料は火葬場から公民館・体育館・海水浴場などの公共施設すべてを含むから極めて広範囲にわたる。他方の手数料は住民票発行などの公書発行手数料やし尿処理手数料など限られている。しかしいずれも使用者たる町民が支払う費用だから、“暮らし直撃”に変わりはない。
 さてその中身。答申を読むと限りない疑問が沸いてくるが、新料金表が出ない段階では全体像がみえないため、ここでは原則的な指摘に止める。

原価主義と受益者負担

 料金改定に当たっての基本方針は「徹底した原価主義」と「受益者負担の明確化」である。細部を無視して大雑把にいえば、たとえば備蓄記念館などの公民館の場合、研修室やホール、会議室などの使用料は、施設全体の維持管理費(駐車場やトイレなど公用部分も含む)を貸出面積で割り、1㎡当たりの単価を決めて査定するという具合だ。この場合の維持管理費は当然人件費や、建物の減価償却費を含む。ミソは施設の稼働率を原価に繰り入れていること。つまり、稼働率が高ければ使用料は高くなり、逆に低いと安くなる。市場原理主義的発想といえよう。
 以上は算定の基本で、ただこれを一律に適用するともちろん問題があるので、サービスの中身に応じて負担率に差を設けている(別表)。しかしこれだけみても、値上げ幅はかなり高くなると想定される。

(別表)受益者負担率
・1 利用者が特定される義務的サービス(例 火葬場)受益者負担 25%
・2 広く町民に及ぶが選択的な選択的なサービス(体育施設、研修センター、公民館など) 受益者負担 50%
・3 利用者が特定され、民間と競合するサービス(プール、宿泊施設、幼稚園など) 受益者負担 100%
・4 広範な町民に及ぶ義務的サービス(図書館、道路など)受益者負担 0%

 他方、手数料は原則的に100%受益者負担。この場合、もっとも影響があるのはし尿処理手数料(回収業者が処理センターに支払う費用=現在は無料)の有料化。もしこれが汲み取り費用に100%転嫁された場合、相当な額になろう。むろん、使用料を含め50%と上限が決められており、3年ごとに見直しとされているから、段階的な調整にはなろう。

抜けている視点

 原価主義や負担率の考え方、市場競争的発想などは、地方自治の将来像を考える上では理解の範囲だ。町民の痛みを伴ったとしても、民間的発想の導入は不可欠と本紙も考える。しかし同時に、答申には決定的な視点が欠けている。それは原価を構成する人件費の固定化であり、サービスの質の評価だ。つまり民間なら当然規定されている人事評価や運営評価を併せて導入しない改定案は、一方的に住民に負担を強いるだけだ。
 この点に関しては、「行政評価制度」「人事評価制度」の導入で別途なされているとの反論はあろう。しかし、たとえば人件費は職員の年間平均給与額を前提にしている以上、人事評価と運営コストと連動しない。である限り、行政評価も同じく意味はない。難しいテーマゆえ、そこに踏み込むのは相当の力技が必要だが、「内部管理費の節減に努め」などという一項を付け加えるだけで済まされては片手落ちというものだろう。
 もうひとつ、これは杞憂であってほしいが、12号で紹介した猪肉加工場やしんうおのめ温泉荘など町直営の収益事業は、この答申の対象案件から外れているのではないか。12月議会を注視したい。

審議会方式の問題点

 もう一点付言しておく。審議に際しては、事務局である町の「使用料・手数料の見直しに関する基本方針」を叩き台にしている。本紙は答申と基本方針の両文書を丹念に比較したが、何のことはない、事務局案がほとんど答申に反映されている。ありていに言えば、値上げをしたい町の意向を審議会を隠れ蓑にして通しただけではないか。審議は3回で終了していることからもその感を否めない(もっともこれは国や県も大同小異)。 
 本紙が答申の中身で一番納得し難かったのは、幼稚園の園費の100%負担。準義務教育的に機能している幼稚園が、しかも民間もないのに完全受益者負担というのはなかろうと判断し、審議内容を知りたいと考えた。これに対し審議会会長の山田和孝氏は「中立的な立場から町と住民双方の意向を汲むのを原則とした」と断りつつ「原価算定など複雑な仕組みを理解するのがやっとで、事務局案に反論し対案を出す能力も時間も我々にはなかった」と正直に答えてくれた。さもありなん、というしかない。知りたかった園費については類似自治体の額に合わせたようで、「種別分類は明確な線が引けないから矛盾は発生する」(財政課)との弁明。財政課は否定するものの、三位一体に改革による義務教育関連の国庫負担の削減が影響しているとの疑念はぬぐえない。であればモロのしわ寄せを住民が被ることになるからだ。
 ともあれ、審議会の実態は以上だ。町の計画を町民に諮問する審議会の存在を否定するつもりはないけれど、その運営に関しては、根本的な見直しが必要ではないか。
 具体的な改革プランは持ち合わせていないが、最低、もう少し時間をかけること、諮問ではなく、施策策定の要素を加味することが必要だろう。34もある審議会が同じような中身とすれば、膨大な無駄というしかあるまい。

検証行財政改革のいま①全体像(12月号1面)

2007年02月11日 | 新聞記事(一部公開)
見えない改革の意思
住民参加・情報公開の視点から

 実施計画は05~09年度の5年間。財政危機がそのピークを迎える今年と来年が集中取り組み期間とされている。しかし170枚に及ぶ、請求した情報公開資料にざっと目を通してみて、先走って結論的にいえば「こんな進行で大丈夫だろうか」というのが率直な印象。
 99件のうち、今回情報開示請求をしたのは33件。実施済みの案件はもちろん、検討中の案件でも、議論の方向、素案など途中段階での議事録も公開するよう申請したものの、結果9件が「検討中のため」などの理由で非公開。議論のレジュメなどもないというのは実質的議論がなされていないことを証明している。公開資料でも、人事評価票や補助金交付基準のように、何を変えたいのか分からない、おざなりの文書も少なくなかった。
 それはともかくとして、本紙3号(昨年12月発行)で触れたが、行財政改革の主眼は財政改革。99項目のうち6割を占める。これに関しては今号2面の使用料・手数料見直しを含め、これまで水道料など公共料金値上げ、逆に一向に進まぬ給与格差是正などで繰り返し取り上げてきた。したがってここでは重複を避けて選択紹介しよう。

行政評価制度に関する報告書

 公開資料の中ではかなり力が入った文書。県単位では愛知県を筆頭に行政施策の効果・評価導入を図っているところが増えており、市町村単位でも、とくに今後の三位一体改革のよりいっそうの強化を考慮すれば、これまでのように国や県の誘導施策に沿って行政運営していては間違いなく行き詰まる。自前の自治の確立のためには政策立案力が決め手で、これを保証するためにも政策評価制度は不可欠。
 役場の組織横断的なプロジェクトチームによる試案の核心は、計画、実施、評価、改善の「マネージメントサイクル」の確立。「何だそんなものか」と受け取る向きも多いに違いないが、民間なら当然のこうした評価の基本すらこれまで行政にはなかった。残念ながらこれでも一歩の前進なのだ。
 この問題に関して本紙は、アクアブルーなど過去の施策を検証した総括として、上記の各段階における住民の参加を提案した(8月号)。本報告書では住民への情報公開は謳っているが、肝心の計画と評価段階で住民の参加は盛り込まれていない。とくにもっとも重要な評価は、1次評価が担当部署、2次・3次評価は三役と教育長、財政・まちづくり推進両課長のみ。こうした身内の評価では客観的な評価にはなるまい。この観点から引き続き追求していく予定。

集落活性化対策

 大綱に先立つ民間委員会の答申で謳われ、国も提唱している「地域自治区」の導入は本紙が一番注目したテーマ。しかし大綱ではこの文言は消えた。地域自治の促進、開かれた町政、住民参加という型通りの言葉が並んだだけだ。今回、この点に関する公開資料はさらに幻滅するしかない代物。地域審議会の設置は単に合併に伴う法的整備にすぎないし、地域担当職員の設置もまったくの名称倒れ。有福、飯ノ瀬戸、津和崎など旧町に一か所のモデルを設け、担当職員を決めたものの。実態は単なる町と地域を結ぶ連絡員。地域から要請があって会議などに参加する「待ち」の姿勢だから、現実は何ら機能していないに等しい。それにこの地域担当は役場内公募だったにも関わらず、応募者は1名しかなかったらしい。集落崩壊の危機にあるというのに、これでは地域自治などおぼつくまい。地域担当は専従とはいわないにしろ、主たる業務とするくらいの位置付けにすることを改めて提案しておきたい。

しんうおのめ温泉荘の整備方針

 温泉荘の老朽化、赤字体質をどうするかという問題に関して、廃止を含めて検討がなされると大綱にはあった。ところが公開資料によれば、建て替えを前提に検討が進んでいる。09年度秋の竣工を目指し設計・工事のスケジュール化も。事業規模は10億円が見込まれ、合併特例債を主とした資金調達が検討され、したがって、財政規律のために決められた町債発行の上限枠とは別扱いにするという。それだけの投資価値があるかどうか、別途資料をもとに次号以降で検討したい。ちなみに温泉荘の問題は振興公社の在り方とも絡むのでこれも検討対象。

格差是正問題

 これまで何度か本紙で取り上げてきたこの問題。ようやく公式文書にはない是正の内容の一端が明らかになった。現業職員の極端な格差是正で、町長による特別措置で組合と合意したもの、結果は「上位調整」が基本。一般行政職の是正も同じで、詳細は次号以降で。

その他

 役場組織の活性化、タスクフォース的な問題解決のためのプロジェクトチームはいかにも低調。審議会の在り方、定年退職者特例措置の退職金上乗せなど、見逃せない問題はまだ多い。
 もうひとつ、紙幅の関係で盛り込めなかったが、本紙は最近、曽根のフラワーパークに関して、地元住民が自主管理の提案をしたにもかかわらず、町はこれを無視したことを知った。答申にも盛り込まれている事業の民間委託、住民参加という意味でも格好のモデル。次号で詳細報告したい。

最後に

 以上、ここで紹介した項目の詳細、紹介できなかったテーマについては次号以降で順次報告していくとして、最後に一点、情報公開条例の限界について付言しておく。
 本町の情報公開条例は合併直前の03年度以降の文書しか対象とされない。これは様々な問題を調べるに当たっての大きな壁。合併前の施策については不問に付す、ということに他ならず、条例の改正を強く主張したい

特別インタビュー 良心的兵役拒否(14号2面)

2007年01月09日 | 新聞記事(一部公開)
良心的兵役拒否者 ヤネク・ダンさんに聞く
世界中にいる友人達と戦うなんて考えられない

 ドイツから18歳の若者が、長崎市にある「岡まさはる記念長崎平和資料館」に、この9月からボランティア奉仕にやってきた。徴兵制を敷くドイツで認められている「良心的兵役拒否」の見返りに義務づけられた役務を果たすためだ。来年7月まで11か月間、資料館の受付や清掃などの日常業務に携わるほか、市民との交流、反核平和運動のドイツと日本の懸け橋としての活動など、多忙な日々を送る。折しもこの国が、急速に戦争ができる国へと変貌しつつあるなか、この若者、ヤネク・ダンさんに兵役拒否の動機やこの国や長崎の印象などをうかがった。なおこれは手紙によるやりとりに、本人ならびに資料館関係者からの聞き取りを補足してインタビュー構成にしたもの(文責・歌野)

ドイツの徴兵制

―まず、ドイツにおける懲役拒否の歴史をお聞かせ下さい。
 ヤネク (西)ドイツでは1968年から徴兵制度が施行され、18歳以上の男性に11か月の兵役義務が課せられました。と同時に、基本法第4条で「何人も、その良心に反して武器を持ってする戦争の役務を強制されない」と明記しています。そして現在この徴兵拒否の権利を行使する若者は半数以上に達しています。
 こうした背景もあってか、いま国内で徴兵制度がいったい必要だろうかという議論がしばしば行われています。ドイツは将来も平和な政治を目指し、ドイツ連邦軍の平和のための動員には、職業軍人だけで十分に足りるからです。ドイツの連邦議会では、それゆえ、徴兵制の廃止と、志願兵による軍隊への切り替えが検討されています。
――半数以上が良心的兵役拒否者であれば、周囲の目はそんなに厳しくはないですね。
 ヤネク 相応の民間役務の奉仕活動に従事するし、国の社会福祉や環境保護、消防活動などはこれらに支えられている面が強くありますから、少なくとも非国民のような目でみられることはないと思います。
――お母さんや友人たちの反応はどうでしたか
 ヤネク 母はもし私が民間役務の代わりに連邦軍に行く選択をしたら、きっと激しい議論をしたことでしょう。母はとくに平和運動と反原発運動に積極的に参加していますから。他方、友人の多くは兵役を拒否し国内で民間役務をしているか、大学にいっています。ですから私が珍しい存在であるわけではありません。

憲法9条をめぐる動き

――日本では憲法9条で戦争放棄を明記しています。徴兵拒否の立場からこの憲法の感想をお聞かせ下さい。
 ヤネク 軍隊を持たない、持つことができないという憲法9条自体は良い考えだと思います。しかし残念ながら、この考えは原則と異なった解釈がなされ、将来は変更あるいは廃止されようとしています。現在の政治的状況の在りようを私は大変不安であると感じています。
 私の考えでは、アメリカ合衆国の政治、とくに戦争政策は決して模範にはなりません。アメリカは成立以来繰り返し同じ利益を求め(とりわけ経済、権力、石油)戦争をしています。兵隊は死に、経済ボスたちはそれだけ多く儲けています。私が驚くのは、多くの日本人がアメリカの政策に興味を示していること、あるいは政策を支持さえもしていることです。(これは最近の選挙結果から分かります)
――イラクやレバノン、パレスチナなどいまも続く戦争に、私たちは何ができると思いますか。
 ヤネク 最も重要なことは、これについてもっと多くの人に事実を知らせることです。大多数の人々は、知りたくない、見たくないという理由で、あるいはそれ以前に十分な情報が与えられていないということから、事実を良く認識していないと思います。人々に何らかの行動を強制すべきではないが、最低限、テレビや新聞などのメディアでもっともっと事実を伝え、考える素材を提供すべきです。そうすれば、もっと頻繁にこうした政治的テーマについて、学校で教え、取り上げ、議論することができるでしょう。
 これはたいへん難しい質問です。

長崎の印象

――この国のあるいは長崎の印象、いまの仕事については?
 ヤネク 私は日本が好きです。とくに長崎が。日本で好きなのは人間性と食事、沢山の山です。長崎にはこれらがすべてそろっています。それに町の大きさということもあります。あまり大きくもないし小さすぎもしない。ドイツの歴史と平行していたり、違っていたりする(とくに第二次世界大戦中の)日本の歴史に大いに興味を寄せています。私が働いている資料館は、日本のその部分について展示や情報を発信しています。ドイツのその部分の歴史についての自分の知識と照らし合わせることができます。こうした意味で2年前に日本に来たときこの史料館に強い印象を受けました。
 長崎で私はとても快適です。資料館の人達はとても親切で、気持ちがよいです。周囲の環境も気にいっているし、すでに友人も数人できました。
――日常の暮らしをエンジョイできていますか。
 ヤネク 毎日!
(資料館では彼の受入れに伴い1か月約8万円の滞在費を負担しているが、恒常的な資金不足に悩む中で、市民の浄財を求めている。一口1000円、できれば11か月の継続支援を熱望。郵便振替 01890‐5‐43935 口座名 長崎平資料館 必ず「兵役拒否支援」と明記のこと)


編集部からの補足
 冒頭に触れたように、この国はいま急速に戦争ができる国に変貌しつつある。92年の「PKO法」をスタートにイラク・アフガン関連の「特別措置法」「周辺事態法」「新ガイドライン法」など矢継ぎ早に決め、「通信傍受法=盗聴法」「有事立法」「国民情報保護法」などで補足し、いまアメリカの戦争に無際限に協力を強いられる集団的自衛権が論議され、「教育基本法」に手を付けてついに憲法改正が日程に上ろうとしている。
 この流れの先に待ち受けているのは徴兵制の復活ではないか。1面「今月の語録」のように、この国の為政者、とくに自民党の一部には戦争をしたがっている連中が少なからずいる。実に危険な傾向だと思う。
 そうした意味でも、ヤネクさんの考え方や行動は私たちにとって、一連のこの国の変貌ぶりを再考するいいきっかけではないだろうか。あえて本紙の発行趣旨を越えて特集に踏み切った背景を理解していただけることを切に願う。

特集 公共料金値上げ問題③(14号1面)

2007年01月09日 | 新聞記事(一部公開)
公共料金値上げ問題 番外編=特別会計等
ここにも潜む借金苦
総額57億円負担も町に

 国保税・介護保険税、水道料の値上げ問題を2回にわたり取り上げてきた。公共料金問題としては、施設使用料や各種手数料値上げなども検討する必要があるが、細部にわたるため、この問題は次号で予定している「行財政改革の進捗状況」の中で取り上げたい。今回は前2回の調査過程で、特別会計や病院事業の中身にむしろ着目すべき点があるのが気になったので、これを報告したい。

特別会計とは

 町の予算は総務費・商工費・農林水産費・土木費など通常の行政サービスをカバーする「一般会計」と、町営事業ともいえる「特別会計」に分かれる。ここには前回、前々回で取り上げた水道会計、国保・介護保険会計のほか、若松、新魚目、榎津の3診療所会計、バス運行事業会計・旅客船運行会計(いずれも若松)、有川・青方・奈良尾・若松・榎津のターミナルビル会計、桜坂ニュータウンなどの土地造成会計が別会計として扱われている。どれも収益事業の側面を含むため、企業的会計が要求され、分かれていると考えられる。
 それはさておき、前回の水道料金の最後に触れたように、水道料の値上げの背景にはもちろん町の財政危機があるが、それ以外にも水道会計の固有な事情として、過去の累積借金(公債費)45億円が思い負担となっていること。そしてこの借金がこれまで400億円を越えると言われてきた町の借金の中に入っていないことが判明。そこで他の特別会計を含めて洗い出す必要があると判断したものだ。

公債費の重圧

 まず、特別会計の各部門が抱える公債費を別掲に掲げる(概算)。

・診療所特別会計                  2、5億円
(若松・新魚目・榎津各診療所合算)
・簡易水道特別会計                45億円
・バス運行事業特別会計               0、1億円
・旅客運行特別会計                 0・2億円
・ターミナルビル特別会計
(有川・青方・奈良尾・若松・榎津各ターミナル合算) 7・5億円
・土地造成事業特別会計               2・5億円
                    (計)  57、8億円

 一般会計部門の公債費はこの9月段階の最新数字で364億円(財務課)。ぎりぎりの緊縮予算を組み、借金の先送りである借り換え債56億円発行するなどの苦肉の策で減少してはいる。でもここに特別会計分57億円を加えると421億円。1世帯当たり382万円、幼児から老人まで一人当たり165万円になる勘定だ。
 公債費はこれまでの財政改革関係資料では普通会計の数字しか出されていなかった。意図的ではないにしろ、特別会計の分も町と不可分であり、そうした事実がこれまで明らかにされてこなかったのは、明らかに住民に対する適切な情報公開の怠慢といえる。
 では、特別会計の中で公債費償還の重圧はどの程度だろうか。各会計の詳細情報はないから、ここでは再び水道会計を例に取る。
 水道事業という公営企業の会計処理は特殊な形式になっているので、ここでは多少の不正確さを承知の上で分かりやすく説明すると、06年度の水道事業の総事業費は約8億5千万円、これに対する借金返済は4億2千万円。何と半分が返済に回っている。こんな状態だから、05年度までは毎年2~3億円の建設改良費があったのが、一挙に4千万円と大幅減額となった。施設改善に回す金がないのだ。もちろん値上げしてもこの結果である。
 他の特別会計も、年間予算と公債総額との比で見る限り、バス運行・旅客運行は低いものの、診療所、土地造成は同じようなもの、ターミナルビル会計はもっと酷いから、推して知るべしだろう。
 ともあれ特別会計の現状はかなり厳しいといわざるを得まい。その結果として、例えば診療所の入院病床の廃止や町営バスの民営化(これは間違いなく料金値上げにつながる)などを含め、大鉈を振るわざるを得なくなる。つまるところ住民へしわ寄せが必然化されるわけだ。

病院会計

 ついでに上五島、奈良尾、有川の病院会計についても少し触れておく。
 こちらは県の離島医療圏組合立だから町財政とは直接には関係しない。しかし、組合は県と離島市町村で応分に負担し合って運営されているから、当然、最終的には町も責任の一端を背負うことになる。
 その上で3病院連結の収支状況をみてみると、町の特別会計ほどではないが、こちらも厳しさが年々増しているようだ。詳細の数字を出す紙幅はないが、とくに16億円を越える公債費(企業債)関連の資本的収支は赤字で、内部留保を食いつぶしているのが現状。診療に絡む事業収支は何とか均衡を保っているものの、前々回の国保税問題で触れたように、税収の長期的落ち込みと、逆に診療費の拡大傾向は避けられず、早晩、単年度赤字に転落する可能性は大きいといわざるを得ない。
 
さて、公共料金問題から特別会計の内実をこうして調べていくと、この町は本当に大丈夫かと改めて危機感が増してくる。ここしばらくは「忍」の一字(本紙6号での中野嘉仁財政再建・行財政改革担当理事の発言)だとしても、それで何とか住民と町とが凌げる範囲なのだろうか。正確な情報提供を怠ることがないよう町に希望したい。

焦点 島の漁業を考える(10月号2面)

2006年12月14日 | 新聞記事(一部公開)
【守り】の漁業に道しるべを
―国・県の施策の本質は?

 今年、島の漁業は未曾有といっていいほどの不漁に見舞われている。春先からいつも入るアジがさっぱり。この夏はいつものイサキやイカも無残なほど少なかった。定置網網元によれば、例年の一割に満たないところもあるという。今年は特に極端だが、ここ数年の巾でみても低迷しているのが実情。海の異変か、その他の要因なのか。漁業を取り巻く環境を考えてみたい。

 まず、大雑把に国の漁業政策の流れをたどると、1963年に国は沿岸漁業等振興法を定めた。当時は水産資源が比較的良好な状態にあることを前提に、生産の効率化、漁獲量の増大に重点を置くことで、
①沿岸漁業等の生産性の 向上、
②沿岸漁業等従事者の生 活水準の他産業との均 衡
を図ることを目的とし、沿岸漁業及び中小企業を施策の主な対象とした。
 しかし、漁業生産量の約80%を占めてきた遠洋・沖合漁業が、沿岸国が200海里内において排他的経済水域を設定できるとする国連海洋法条約の発効等により漁業に対する制約が増し、75年当時約1,200万トンもあった生産量は99年には約600万トンにまで減少。 結果として、食用魚介類の自給率も60%弱にまで低下した。
 これらの状況を背景に、03年に沿岸漁業振興法に替わる水産基本法を制定。その主要目的は、
①水産資源の持続的利用 の確保
②水産業の健全な発展
③国民に対する水産物の 安定供給
であり、施策の対象も漁業部門に加え、加工・流通も含めた水産業全体と拡大された。
 一方、県でも国の一連の動きを踏まえ、00年に策定された「長崎県長期総合計画」を補完する個別計画として「長崎県水産業振興基本計画」が策定された。
 これまでの生産拡大の方針を見直し、「本県の美しい海を守り、水産資源の適切な管理と利用による持続可能な新世紀の水産業をめざす」との基本理念の下、水産業を維持するための基本要件は「漁場の安定」、「経営の安定」、「漁業・漁村の継承」の実現であると考え、豊かな食材や憩いの場の提供等県民生活への貢献を念頭に置きつつ、新世紀初頭における今後10ヵ年の本県水産業の再生の礎となる基本的施策の展開方向等を提示するという計画内容で、その期間は01年から10年までとされている。
 
■五島の重点施策

 つまり、この計画の基本的な着眼点は、「限られた漁場を効率よく大事に利用する!」「漁獲を増やすのではなく、減らさないような努力する!」、即ち、略奪するのではなく恵みをいただく漁業と理解できる。
 にもかかわらず計画では、各論に入るとやや視点が変わってくる。上記3テーマに即して、それぞれの目標に応じた11の施策を重点プロジェクトとして掲げ、さらに海域ごとの推進方向が示されているが、例えば、五島地域においては「地域資源を生かす競争力ある水産業の展開と漁村の活性化」をテーマに以下の具体策が提案されている。
1 漁場の生産力向上と 沖合漁場の開発
・地域重要資源の放流種 苗の安定確保と放流事 業の拡大
・藻場の造成等による幼 稚仔魚の保護育成場づ くりの推進
・人工海中林型魚礁方式 による漁場造成等、新 たな技術を活用した沖 合漁場づくり
2 養殖業、まき網漁業 の経営の安定化
・マグロ、アラ(クエ) 等の新高級魚導入によ る複合型養殖業の推進
・操業形態や出荷体制の 改善、生産構造の再編 等によるまき網漁業の 経営改善
3 流通改善、漁獲物の 付加価値向上と販売力 強化
・地域の資源を生かした 水産加工の促進と関係 業界の連携による販売 力の強化
・産地と消費地を結ぶ情 報ネットワークや効率 的な集出荷体制の整備
4 担い手の育成確保と 活力ある漁村づくり
・意欲ある漁業者の活動 促進や新規漁業就業者 の受け入れ体制の整備
・資源管理や担い手の育 成等漁協が果たすべき 指導的役割を十分担い 得る自立する漁協づく りの推進
・観光事業との連携によ る漁村地域の活性化
漁業衰退の実情を踏まえ、有識者の方々がその衰退に歯止めをかけようと練りに練った施策だと思うが、本来あるべき姿の自然に手を加えて生産性を維持しようとする施策には疑問を感じる。

■発想の転換を

 つい最近、畠山重篤氏の著書「リアスの海辺から」を読み同氏の「森は海の恋人」運動を知った。 森・川・海は一体であり、そのどれかに必要以上の手が加えられると他にも影響をおよぼすことになる、海の生産性を取り戻すために森に樹を植え元の姿に戻そうという運動であり既に各地で実行されているようだ。
 自然全体を眺めず、海だけの環境変化をとらえ、海に手を加えて漁場の生産力を図ろうとするのは人間の驕りであり、恵みを頂くという謙虚さを微塵も感じらない。特に生産性向上目的の海底山脈造成等大規模な事業が、後に有明海問題のような想定外の結果を招くことがなきよう祈るのみ。
 養殖業についても新高級魚の導入が掲げられているが、利益率の高い魚種でありその養殖技術に問題がなければ誰でもその魚種へ移行して経営安定を図ろうとするのは当然のことであり、結果として希少価値による高級魚が養殖真鯛同様スーパーの目玉商品並みにならないとも限らない。生産者全てが利益率の高い魚種の養殖を目指すのではなく、長崎の真鯛、鹿児島のブリというふうに各所に養殖魚種を分散させることも一考に値するのではないか。
 余談ながら、漁法にはまき網、底引き漁業のような能動的なものと、定置網のように受動的なものがある。受動的な定置網には網の形、網の敷き方等人間の工夫と魚との知恵比べというほのぼのとしたものを感じる。一方まき網漁業は魚群探知機、ソナー等先進技術を駆使することで魚群を一網打尽にしてしまう、魚の知恵が狡猾な人間に勝つはずがない。
 生産性を維持するためには先進技術開発への歯止めも必要ではないだろうか。
 食物連鎖の中で生物は自らの種を絶やさぬよう下位の生物に対し必要以上の捕食はしないようコントロールされていると学んだが、その頂点に立つ人間には当てはまりそうにもない。人も自然の一員なのに!
 いずれにしろ、漁業に対する公的施策は依然として略奪漁業の尾を引きながら漁獲量を維持するという方向にみえる。これが今のこの島の漁業の現状を変える方向かどうか、実態を考えながら目指すべき方向について機会を改め考えてみたい。 (若松郷 漁協職員)

公共料金値上げ問題2 水道料金(10月号1面)

2006年12月14日 | 新聞記事(一部公開)
財政危機のしわ寄せ重く
消えない将来への不安も


 前回の国民健康保険・介護保険税に続き、今回は9月から改定された水道料金値上げ問題。健康を守る医療、生活に不可欠な水、暮らしの基盤であるこの双方で家計を直撃する値上げがなされたことになる。いずれも根はひとつ、町財政危機のしわ寄せ。そして国保税と同じく、水道料金も将来への不安を残しつつの値上げだ。

 今回の改定は二つの要因に基づく。ひとつは合併後の旧町間の料金格差調整。他は独立会計で運営されている水道事業の、一般会計からの赤字補填を軽減する(4年後にゼロを目指す)ため。
 まず前者の格差調整。最大で2倍近い差があった料金を別表のように4年間で統一する。これまで一番高かった新魚目の1㎥当りの単価231円より8円高い(!)239円を統一料金とし、若松、新魚目、奈良尾についてはこの9月から、料金が安かった上五島、有川については一挙に上げると影響が大きいとして、上五島3年、有川は4年で段階的に上げていく。初年度の値上げ率は新魚目の3、7%~有川の28、4%、最終的には上五島、有川ではそれぞれ56%、85%の値上げとなる。若松、新魚目、奈良尾についてはこれ以外にメーター器使用料(一般家庭で月50円)が新たに加算。
 こうした値上げにより、06年度2600万円、07年度7600万円、08年度9800万円、最終年度の09年度は1億300万円の増収が見込まれ、現在一般会計からの繰り入れ、つまり水道会計の赤字分(05年度で約1億2000万円)を解消していこうというものだ。

設備の整備へも影響

 ところで以上は平均値上げ率で、実際は一般家庭・事業所など用途に応じ、またそれぞれ使用量に応じて料金が変わるため、具体的にどの程度の値上げ幅になるかは個別のケースを探るしかないが、例えば一か月20㎥使用する家庭で有川の場合1880円の負担増。年額2万円以上になる。やはり厳しい数字といわざるを得ないだろう。
 財政危機に由来するこうしたしわ寄せは、実は使用料値上げに止まらない。毎月検針の隔月化や職員の削減(06年度は1名)などの効率化・合理化が同時に進められているほか、支出項目で大きな比重を占める事業計画の先送りがある。18ある簡易水道の中には有川・小河原のように40年以上前の老朽施設もあるが、漏水防止や水質保全に必要な改修・補修、敷設やり変えなどが最小限に止めざるをえない。
 加えての不安材料は、前回の国保税同様、島の雇用不安から青壮年世代の流出が激しく、使用料収入の狂いが発生していくだろうこと。06年度だけでも200万円程の減収が見込まれている。今後もこの状況が続けば、更なる値上げか、安定かつ安全な水供給に影響が及ぶような合理化がなされる可能性も否定できない。
 こうした苦しい事情はもちろん町財政危機に直接に端を発しているとはいえ、固有の事情もまたある。これは次回に「特別会計問題」として取り上げる予定だが、水道会計自体で過去の累積借金が45億円もある。これはこれまで公開されてきた「町の借金430億円」とは別個のもので、この返済額が水道会計を著しく圧迫している。
 ともあれ、水は命の糧。なんとか耐え切っていくしかないのである。

職員給与問題 公開資料から

2006年09月28日 | 新聞記事(一部公開)
地域給導入・給与制度見直しに関する確認書

 前号で人事院勧告に基づき3月議会で可決された地域給導入・新給与制度に施行に際し、職員組合と町当局との間で交渉が進んでいることを報告した。地域給とは簡単にいえば官民格差の是正。つまり地方公務員給与はこれまで国家公務員に準じて、地域を問わず一律の基準で支給されていたが、これを見直し、地域のレベルに見合った給与制度にするもの。加えて昇級・昇格基準の見直し(能力給要素の強化)を含む。
 本町にはこの官民格差のほか、旧町間の格差、管理職クラスの職員の多さという問題を抱えており、これらを併せた見直しの交渉であるべきと本紙は一貫して主張してきた。これに対する回答が以下の確認書といえる。本テーマ以外の確認事項もあるが、関連部分のみ抜粋する。

(合意事項)※太字は編集部
新給料表の切り替えにあたっては、2006年3月31日現在の給料を保障する。
③新給料表において統合される級[行政職(一)表の1・2級及び4・5級、行政職(二)表の3・4級]の下位級在職者については、現行給料表における昇格時に、在職者との均衡を考慮し調整を行う。
④合併後、妥結前昇級・昇格基準の暫定運用により生じた格差については、在職者間の不均衡が生じないよう調整を行う。
⑤査定昇級制度の導入にあたっては、事前に組合との十分な協議の場を設け、拙速な導入は行わない。
⑦在職者の昇級・昇格基準に ついては、旧給料表の昇級・昇格基準に沿った運用を行う。(継続協議事項)
①給料表の号級の延長に関する事項
③地域給導入に伴い、旧給料表4級以上在職者と3級以下在職者との間に生じる1号分(新4号分)の格差

 ■解説
 職員は新給与制度では職位(1~6級)とこれに連動した号級(各級77~125段階)によって給与が決まり、確認書の内容はこの制度運用に関するもの。行政用語で理解しにくいが、傍線をつけた部分が要点で、後は現状の待遇を維持するように配慮しながら微調整を行うと理解するしかない。継続協議の内容から類推しても、これは人事院勧告の基本姿勢を骨抜きにする内容に等しく、極端にいえば「何も変えない」ことを確認したにすぎない。どころか、旧町間の格差は基本的に高いほうに基準を合わせて調整されていく可能性が高く、町民感情からすれば「改悪」といえるのではないか。
 すでに職員給与は他の自治体に先駆けてカットされている(それだけ厳しい財政事情の証明)点では同情の余地はあるというものの、話題になっている『自治体崩壊』(手島皓二著:PHPパーパーバックス)や類書の『自治体破産』(白川一郎著:NHKブックス)などで警告されているように、過半の地方自治体は、主要な義務的経費である人件費の抜本的な見直しを含む改革に直ぐ手を付けなければならない状況にある。幸か不幸か先行しているわが町は、ある意味ではいいチャンスなのだ。
 職員組合執行部の方々、町当局の方々、ぜひ一考願いたいし、反論があればぜひ寄稿を期待したい。

公共料金値上げ(12号2面)

2006年09月28日 | 新聞記事(一部公開)
国民健康保険・介護保険税
まだ序曲 しのび寄る負担増

 8月から国民健康保険・介護保険税が値上げされた。9月からは水道料金値上げが待ち受けている。いずれも合併に伴う旧町間の不均衡を統一する目的もあるとはいえ、やはり財政難の帰結という側面が強い。町財政では「特別会計」で扱われているこの両者、収支の実態をみれば今後ますます高負担になっていく可能性が強い。今回と次回は受益者負担という意味での国保・介護保険問題、水道料金問題を取り上げ、その後「特別会計問題」全体の問題として検討してみる。


高壮年世帯に重く

 国民健康保険・介護保険税(以下国保税)は4~7月期の暫定課税から、8月以降改定課税率に則した額になった。旧町間、所得や世帯人数によって改定の影響がずいぶん違うため、下がって喜んだ世帯、急な値上がりにびっくりした世帯、気の留めない世帯など、こもごもだろう。
 旧町間では全体平均として、若松は値下げ、有川と上五島はかなりの値上げ、新魚目は微増、奈良尾は変わらず、といったところ。世帯レベルでいえば、中高年の現役世帯、多人数世帯に負担がかかる仕組みとなっている。国保税は世帯平等にかかる平等割以外は所得、資産、世帯人数によって課税額が変わる仕組みで、今回の平均値上げ幅が大きいのは所得割と、世帯人数に比例する均等割が値上げされ、とくに介護保険税の所得割が平均70%の値上げとなっているから、40歳を過ぎた現役世代(子供が自立前だから家族人数も多い)に負担が大きくなる。とくに有川・上五島の中高年に厳しい結果となっていると推定される。

ここでも地方切り捨て

 国保税の制度は複雑で、収支の状況が把握しにくい。とりあえず、町の国保係から公開された資料から類推する。
 05年度の町の国民健康保険事業は国保29、6億円、介護1.9億円で、国保の収支は1/4の7.4億円が保険料、残りのほとんどは、国(一部県)や制度を運用する国保連合会からの交付金・補助金・負担金でまかなわれている。国の制度としての国保事業の基本は保険料と国からの負担が半々。しかし本町のような高齢者が多く所得が低い地域は、国などの補助がないと事業はできない。その補助が、例の三位一体の改革の影響で県に一部移管されたり削減されたりで収入が減少。結果として被保険者に負担増を押しつけるしかなくなったわけだ。介護の方も同様で、すでに赤字会計になっている状況だから、保険料はかなり上げざるを得なかったとみられる。

値上げしても減収!

 ところが、保険料額が確定した8月、値上げ効果が出ないことが判明した。昨年の値上げ決定に際して試算された予想収入が、実際には約5千万円少なく、前年度に比してもわずかながら下がるという結果になったのだ。
 理由ははっきりしている。被保険者の所得が減って減額対象者が増え、試算値よりも約6千万円減収になったからだ。試算値そのものが前年より9%所得減を前提にされたのに、これを大幅に上回ったことになる。それだけ島経済の沈没を物語る。
 これまでは減額分は国から補填されてきた(保険基盤安定負担金)。しかし、財政力が弱い自治体に対する当然の措置であるべきこの政策が、なりふり構わぬ地方切り捨てでカットされる。とすればこの減収分はどうなるか。当面は2億円ほどある基金(積立金)の取り崩しになるのだろうが、この勢いではすぐにも枯渇してしまうだろう。

これからが心配

 町の世帯の半数が国保に依存している。高齢化に伴い、ますますその比率は高まるだろうし、所得は下がるから逆に保険料収入は減っていこう。そもそも、自営業者や退職者世帯、老人世帯が主たる被保険者である国保制度そのものの財政基盤は弱い。国もこれを解決するために、年金と同じように健康保険制度の一本化を含め、抜本的な改革を叫んではいる。でも現実には遅々として進んでいない。
 健康を守る医療とこれを支える保険制度は、安心して暮らすための必須の制度。この根幹が揺らぎ始めているといってよい。国の三位一体の地方切り捨て策はこれからますます厳しくなろうし、もう一方の支え手である町や県も財政危機である。お金はない。となればどうなるか。
 まず想定されるのはさらなる負担増。今後、今年の改定後でも、保険料率は県内でまだ低い方。保険料の値上げが当然まず検討の対象になろう。次の段階は想像し難いが、医療費カットのような最終手段はないとしても、これに近い対策が取られても決しておかしくない。例えば診療費滞納者に対する診療拒否などありえないことではない。
 こうした事態を避けたいなら、いずれ町の医療サービスの在り方そのものに手を付けざるを得ないのではないか。病院にも行けずに孤独死が増えている都会の独居老人(国保被保険者)の間では、「病院に行くときは死ぬとき」という悪夢のような会話が交わされているという(週刊金曜日7・28号)。
 この町でそうした情景が展開されないように、何とか知恵をふり絞る時期にきている

島の郵政民営化(7月号/10号2面)

2006年08月03日 | 新聞記事(一部公開)
有川・魚目が無集配局に
「日本郵政公社 全国約1000局の集配郵便局での集荷・配達業務を廃止決定」。このニュースが発表されたのは6月下旬。いかにも唐突な発表で、しかも関係者にとって予想を越えた規模と内容。公社の民営化スタートは来年10月。まだ1年以上を残すのに、この秋から決定にしたがって集配廃止の実施という。この町の郵便局事情は、異常に早い規模で変化していくと予想される。以下、シナリオを予測してみる。

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 激震走る
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「まさか有川が…!」。郵政公社民営化法案成立以降、こうした事態を想定していた関係者にとっても、有川の無集配局化はまさに激震のニュースだったようだ。
 今回廃止されるのは、多い順に中国地方165、北海道141、東北108、九州98などで、予想通り過疎地の多い地域に偏重している。長崎県は18と九州の中でも多く、離島が12と過半を占める。本紙も、こんなに早く、これだけの規模で合理化が進むとはまったくの予想外であった。しかも離島や過疎地を直撃する露骨さ。「田舎の人間は不便さを覚悟しろ」と明言したも同然だ。では、こうした性急な合理化による、私たちへの暮らしへの影響はどうなのか。
 実はこれを調べようと八方手を尽くした。が、町の郵便局長に聞いても誰も答えてくれない。やむなく郵政公社九州支社(旧九州郵政局=熊本)に出向いてデータ公開を申し込んだが、たらい回しの末に「お答えできません」。勢いで本社に電話しても「今後については検討段階だから一切いえない」といんぎんな口調ながらにべもない返事。どうやら完全なかん口令が敷かれているのに間違いない。秘密裡に進められている。民営化法案が通ったといっても郵政省時代の官僚意識と体系が完全に残ったままなのだ。
 ついでに付言しておくと、たとえば集配の影響を調べるため、この島の郵便局の集配人を含めた人員配置の現データを集めようとしたが、これを把握しているのは本社のみ。九州支社もないという。あっても非公開だろう。完全な中央集権主義と秘密主義。したがって今回の決定を含め民営化施策は密室で決定され、当事者には結果の押しつけになる。何という酷薄さだろう。

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予想される影響
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 ともあれ、この秋にも有川と魚目局の集配業務が廃止になり、青方に統合(平島も)。北魚目、若松、奈良尾はそのまま残るようだが、これとて時間の問題だろう。集配統括センターのエリアは100㎞圏内とされているようだから、この島はすべて包含される。
 集配業務がなくなるということは、土日は局は休む。これまでの土日の時間外受付も当然なくなるし、人員が大幅に減ることになるから、閑散とした局の雰囲気になろうし、否応なくサービス低下につながる。他方で、青方からの配達だから、有川や魚目の端への配送は間違いなく遅れる。いまのところ配達員数は維持されるようだから一日遅れになることはなさそうだが、その分、配達員への労働強化になることは明瞭。住民・局職員いずれにとっても受難の施策というしかない。
 問題は“次”だ。来秋民営化が本格スタートし、日本郵政(株)=持ち株会社、郵便事業(株)、郵便貯金銀行、郵便保険(株)、郵便局(株)=窓口ネットワーク会社の完全民営化に向け、法人設立、事業移転・整理など諸作業が開始される。なかでこの町に関連するのは郵便局(株)のみで、郵便事業(株)、郵便貯金銀行、郵便保険(株)の業務を受託し営業活動を行う。
 一見すれば現在の窓口機能そのままのようにみえるものの、要は民間会社であり、非採算部門はどんどん切り捨てていくだろうことは、国鉄民営化、NTTなど3公社民営化で証明済みだ。つまり、今回の集配廃止と同様、離島のような効率が悪い局は冷酷に廃止されていく可能性が強い。国会で竹中担当大臣は「離島や僻地については配慮する」と答弁したものの、その舌の根も乾かないいまの段階ですでに切り捨て策を打ち出しているのだから、その場凌ぎの答弁にすぎないと銘記すべきだろう。
 集落から郵便局がなくなることは、とくに高齢化が進んでいる島の現状の中では格別の影響が大きい。歩いて行ける距離で年金をもらうことも、ちょっとお金を下ろすこともできなくなる。極端な想定では、郵便物も自分で取りに行かなければならない事態もありえよう。さもなければ、郵便料金に格差がつけられよう。悪夢である。

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何ができるか
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 とはいえ、すでに既成事実を積み重ねる手法でこうした事態は進んでいる。うさん臭いあの民営化法案の論戦や攻防がなんだったか、いま私たちは実体験として結果を目の当たりにしている。この段階で見向きもされない離島で私たちにできることは知れている。でも指をくわえて黙認するほどお人好しではないことは何らかの方法で伝えなけれなならない。
 ともかく郵便局の存続を願うなら、声を上げよう。
*郵政公社に電話をかけ る(フリーダイヤル  0120-232-886=無料= 音声ガイドに沿って「公社への要望」に接続 し、集配業務存続を要 望する)
*メールを送る(http:/ /www.japanpost.jp.op inion/index.html=検 索エンジンで「郵政公 社」を探せば一番に出 る=から「ご意見・お 問い合わせ」→「公社 全般への意見」→「メー ルでの相談」→「長崎」 の順に入っていけばメー ル画面になり、メッセー ジ送信)
*反対の署名活動を始め る(形式はどうでも構 わない。「有川・魚目 郵便局の集配業務廃止 の撤回を望みます」と 書いて、以下「住所・ 氏名・捺印」)
 以上のような声を執拗にあげれば、「蟷螂の斧」「ごまめの歯ぎしり」よりは効果があろう。フリーダイヤルを占拠しよう。メールも嫌になるほど送り付けよう。
 もうひとつ、これは郵便局に対しての提案だが、以上のような行動が仮に部分的な効果を生んだとしても、将来像は明るく描けようもない。いまは島の「窓口ネットワーク機能」として住民にできるだけ影響が少なくなるよう戦略的な対応を準備することが不可欠。たとえば、
*集配業務を集落に委嘱,
 自ら定員削減して維持できるシナリオを描く
*郵便局はコンビニも経 営可能、閉店を考慮し ている小店と連携して 集落の店の経営を一体 でやる
*窓口ネットワークの中 で、島独自の「分社」 を構想、提案する
 以上、思い付く限りの提案。三位一体の改革、郵政民営化と続く地方・田舎の切り捨ては今後ますます手酷いものになっている。少しは意地をみせるときではないだろうか。さあ、行動を!

特集 町の流通戦争(7月/10号1面)

2006年08月03日 | 新聞記事(一部公開)
過当競争の行き着く先は
 浦桑商業地区をめぐる島の商戦がさらに激化している。新たに本土資本のドラッグストアが進出、他方で目立っていた経営交代の動きが大規模店舗にも表面化。一見活気を呈しているかにみえるこの地区で、生き残りをかけた必死のドラマが演じられている。一方、そうした激戦に町が品性に欠ける介入を行うなど、いささか歪な状況も生まれている。町民の目線で問題の行方を追いたい。

□ 過剰店舗の現状 ■
 浦桑地区が商業地区としてその姿を整えてきた初期の頃(たかだか数年前)は、ブティックはじめ店舗の業態も多様で、品揃えや経営の内実は別にして健全な活気があった。少なくとも不確定ながらも将来への明るい期待が町民=消費者の間にはあった。
 しかし(予想通り)この町の人口規模を考えれば都会的な業態が成立するほどの市場ではなかったようで、浮沈の波はまもなく訪れて閉店~開店が相次ぎ、飲食店とパチンコ店、それにスーパーがしのぎを削り合う場になり変わった。集客力と活気は維持されているものの、ややギスギスした雰囲気を感じるのは本紙だけであろうか。
 本紙2号でもこの問題を地元スーパーや小規模生産者への影響の側から取り上げ、これらの業者が価格競争に追われてしだいに疲弊していく実態を紹介した。この激戦構造はすでに恒常化したばかりかさらに激しさを増している。具体的には、浦桑地区の中のカミティ、Aコープ、マツバヤの競合に、青方に進出したエレナを加えてし裂をきわめているなかで、マツバヤの撤退とグリーンワールドの出店、さらにエレナの有川出店計画が表面化し、スーパー間の淘汰という様相を呈し始めた。
 少し逸脱するが、エレナ、Aコープ、それにカミティがその傘下に入ったイオン系のバリューは、同規模のマーケットを狙うスーパーとして各地で競合し合っている。つまりはこの島でもドゥイング(かましん)、カミティ、JA五島が否応なく代理戦争の役割を担って巻き込まれている構図だ。

□ エレナを巡る問題と町の条例改正 ■
 こんななか、6月の定例議会である条例が可決された。「新上五島町工場等設置奨励条例」の一部改正案だ。一定の投資規模、雇用数があれば、税金を3年間軽減する条例。細部は異なるが旧町時代から各町で制定されていた条例で、合併後も継続して施行されてきた。今回の条例改正の要点は、対象業種の中から「卸売・小売業及び飲食店」と「医療・福祉廃棄物処理業」を除外したことで、主眼は前者と想定される。
 これだけを取り出せば、過剰といえる本土からの小売業出店に優遇措置を加える環境にはなく、これを是正したものだから本紙は両手を挙げて賛同する。しかし、別件の取材を通じてみえてきた改正案成立の過程を知れば、およそ改正条例の理性的内容とはほど遠い思惑が働いている。
 ここで先に「別件」に関して触れておく。それはエレナの立地に関わる町との土地賃貸契約問題だ。以前から町有地を特定の事業者に格安で貸しているという不満の声を聞き、確認を取っていた。結果、情報公開条例に基づいて手に入れた賃貸契約書の要点を以下に記す。契約は旧上五島町長山田芳徳氏(以下町)とエレナのフランチャイジーである(株)かましん道津吉章氏(以下かましん)との間に交わされている。
*町は町有地(地積2114平方メートル)をかましんに賃貸。
*かましんは、賃貸物件をショッピングセンター 建設用地として使用。
*賃貸借の期間は、平成15年12月1日から平成 45年3月31日までの30年間。ただし期間を更新可能。
*賃貸料は年額10万円。
*町は賃借物件を公共用に供するために必要な時に契約を解除することができる。その際かましんは損失が生じても、その補償を要求しない。
 青方の一等地約640坪を年間10万円で賃貸とはやはり常軌を逸している。少なくとも数百万円のレベルが普通。ただ今回の取材で、これはエレナ誘致のための優遇ではないことが判明した。その時点での賃貸関係にあった青方商店街組合(駐車場として使用)と同一条件だったのだ。かましんはエレナ出店に伴う組合への影響を考慮して、エレナの駐車場の商店街客への無料開放、スタンプ事業への助成という意味で年間1000万円前後のスタンプ購入を行っている(かましん・商店街組合双方に確認)。
 もうひとつ、エレナ誘致に際して山田前町長は先の「上五島町工場等設置奨励条例」を改正、それまで入っていなかった商業も優遇対象にいれた。これを今回の議会で元に戻した格好になる。これは、旧上五島町は備蓄交付金で過疎地指定の基準外、浦桑地区の大型スーパーが受けた県の補助(数千万円規模)を受けられなかったための措置だったようだ。本土資本を擁護するつもりは毛頭ないが「誤った噂」が一人歩きしていることは指摘しておかなければなるまい。
 とはいえ、公有地を組合とは違って町が一事業者に破格の賃貸料で貸すというのはやり過ぎの感を否めない。しかし、当時の青方地区が置かれていた状況を考えれば、優遇措置も理解の範囲でもある。浦桑地区の隆盛に抗して青方に客層を引きつける手段としての誘致は不可欠と山田町長の判断があっただろう。一事業者への優遇という理不尽さに関しても、契約要点の最後の項目で一応歯止めをかけてある。加えて(エレナに競合する商店は別にして)青方商店街や地区住民にとっても誘致は当時もいまも歓迎が多数を占めている。
 しかし、浦桑地区スーパーにとっては「目の上の瘤」。しかも破格の優遇措置で商戦を有利にしているとの批判が当然生まれる。そして実はこの意向を受けての措置が今回の6月議会における条例改正なのだ。
 議案は議会初日の一般質問でエレナ問題が名指して取り上げられ、これを受けて翌々日の最終日にすぐ条例改正の提案が当局からなされるという異例の展開となった。異例というより八百長というべきプロセスだ。
 確かに優遇措置は是正される必要はある。しかしそれは利害を異にする双方の意見を繰り込んだ上での是正であるべきではないか。一方的な通告のようなやり方は、理性や品位に欠けるし、旧上五島町と有川町の反目の延長のような事態は、後にしこりを残すこと不可避。これを止めることもできなかった議会は、正常なチェック機能を放棄したとみなすしかない。

□ 町民にとっての意味 ■
 さて、以上のような話は実は町民にとってはどうでもいいことかもしれない。業者の争いと町の歪な対応がどうであろうと、日常の買い物に支障を来さない限り、直接的な波及はない。むしろ安値競争が今後も継続されれば、消費者たる町民には歓迎すべき事態だからだ。
 でも本当にそうだろうか。過当競争のつけがひいては町民に回ってくることはないか。
 本紙は過去数度、この視点から問題を提起してきた。ひとつは地元の小規模製造者への影響。これは何度指摘してもし過ぎることはない。価格競争で疲弊し、事業撤退が続けば間違いなく地元経済の活力低下につながる。二つには仮にスーパーの淘汰が進めば、価格決定や品揃えの面で確実に影響が出るだろう。さらに過当競争が高じて共倒れの状況が出るとしたら、それは地域の部分的な崩壊を意味する。
 では何ができるか。少なくとも町民たる私たちは、価格だけでなく、どこが地元業者や町民のことを真剣に考えた商売をしているかを見極めることに尽きよう。
 もうひとつ、恐らく消耗の極致にある小商店や製造業者が協同組合を作って、原料や商品の共同仕入れや販売の共同化を進めることはできないだろうか。もう余力が残っていないかもしれないが、針の穴の可能性でも追及してほしいものだ。そして本来なら、その種のサポートが行政責任と考えるがどうだろう。