問われる審議会方式の質
この答申は、昨年12月に策定された行財政改革大綱にある「受益者負担の原則、原価主義による使用料・手数料の見直し」を受けた具体化作業。使用料は火葬場から公民館・体育館・海水浴場などの公共施設すべてを含むから極めて広範囲にわたる。他方の手数料は住民票発行などの公書発行手数料やし尿処理手数料など限られている。しかしいずれも使用者たる町民が支払う費用だから、“暮らし直撃”に変わりはない。
さてその中身。答申を読むと限りない疑問が沸いてくるが、新料金表が出ない段階では全体像がみえないため、ここでは原則的な指摘に止める。
原価主義と受益者負担
料金改定に当たっての基本方針は「徹底した原価主義」と「受益者負担の明確化」である。細部を無視して大雑把にいえば、たとえば備蓄記念館などの公民館の場合、研修室やホール、会議室などの使用料は、施設全体の維持管理費(駐車場やトイレなど公用部分も含む)を貸出面積で割り、1㎡当たりの単価を決めて査定するという具合だ。この場合の維持管理費は当然人件費や、建物の減価償却費を含む。ミソは施設の稼働率を原価に繰り入れていること。つまり、稼働率が高ければ使用料は高くなり、逆に低いと安くなる。市場原理主義的発想といえよう。
以上は算定の基本で、ただこれを一律に適用するともちろん問題があるので、サービスの中身に応じて負担率に差を設けている(別表)。しかしこれだけみても、値上げ幅はかなり高くなると想定される。
(別表)受益者負担率
・1 利用者が特定される義務的サービス(例 火葬場)受益者負担 25%
・2 広く町民に及ぶが選択的な選択的なサービス(体育施設、研修センター、公民館など) 受益者負担 50%
・3 利用者が特定され、民間と競合するサービス(プール、宿泊施設、幼稚園など) 受益者負担 100%
・4 広範な町民に及ぶ義務的サービス(図書館、道路など)受益者負担 0%
他方、手数料は原則的に100%受益者負担。この場合、もっとも影響があるのはし尿処理手数料(回収業者が処理センターに支払う費用=現在は無料)の有料化。もしこれが汲み取り費用に100%転嫁された場合、相当な額になろう。むろん、使用料を含め50%と上限が決められており、3年ごとに見直しとされているから、段階的な調整にはなろう。
抜けている視点
原価主義や負担率の考え方、市場競争的発想などは、地方自治の将来像を考える上では理解の範囲だ。町民の痛みを伴ったとしても、民間的発想の導入は不可欠と本紙も考える。しかし同時に、答申には決定的な視点が欠けている。それは原価を構成する人件費の固定化であり、サービスの質の評価だ。つまり民間なら当然規定されている人事評価や運営評価を併せて導入しない改定案は、一方的に住民に負担を強いるだけだ。
この点に関しては、「行政評価制度」「人事評価制度」の導入で別途なされているとの反論はあろう。しかし、たとえば人件費は職員の年間平均給与額を前提にしている以上、人事評価と運営コストと連動しない。である限り、行政評価も同じく意味はない。難しいテーマゆえ、そこに踏み込むのは相当の力技が必要だが、「内部管理費の節減に努め」などという一項を付け加えるだけで済まされては片手落ちというものだろう。
もうひとつ、これは杞憂であってほしいが、12号で紹介した猪肉加工場やしんうおのめ温泉荘など町直営の収益事業は、この答申の対象案件から外れているのではないか。12月議会を注視したい。
審議会方式の問題点
もう一点付言しておく。審議に際しては、事務局である町の「使用料・手数料の見直しに関する基本方針」を叩き台にしている。本紙は答申と基本方針の両文書を丹念に比較したが、何のことはない、事務局案がほとんど答申に反映されている。ありていに言えば、値上げをしたい町の意向を審議会を隠れ蓑にして通しただけではないか。審議は3回で終了していることからもその感を否めない(もっともこれは国や県も大同小異)。
本紙が答申の中身で一番納得し難かったのは、幼稚園の園費の100%負担。準義務教育的に機能している幼稚園が、しかも民間もないのに完全受益者負担というのはなかろうと判断し、審議内容を知りたいと考えた。これに対し審議会会長の山田和孝氏は「中立的な立場から町と住民双方の意向を汲むのを原則とした」と断りつつ「原価算定など複雑な仕組みを理解するのがやっとで、事務局案に反論し対案を出す能力も時間も我々にはなかった」と正直に答えてくれた。さもありなん、というしかない。知りたかった園費については類似自治体の額に合わせたようで、「種別分類は明確な線が引けないから矛盾は発生する」(財政課)との弁明。財政課は否定するものの、三位一体に改革による義務教育関連の国庫負担の削減が影響しているとの疑念はぬぐえない。であればモロのしわ寄せを住民が被ることになるからだ。
ともあれ、審議会の実態は以上だ。町の計画を町民に諮問する審議会の存在を否定するつもりはないけれど、その運営に関しては、根本的な見直しが必要ではないか。
具体的な改革プランは持ち合わせていないが、最低、もう少し時間をかけること、諮問ではなく、施策策定の要素を加味することが必要だろう。34もある審議会が同じような中身とすれば、膨大な無駄というしかあるまい。
この答申は、昨年12月に策定された行財政改革大綱にある「受益者負担の原則、原価主義による使用料・手数料の見直し」を受けた具体化作業。使用料は火葬場から公民館・体育館・海水浴場などの公共施設すべてを含むから極めて広範囲にわたる。他方の手数料は住民票発行などの公書発行手数料やし尿処理手数料など限られている。しかしいずれも使用者たる町民が支払う費用だから、“暮らし直撃”に変わりはない。
さてその中身。答申を読むと限りない疑問が沸いてくるが、新料金表が出ない段階では全体像がみえないため、ここでは原則的な指摘に止める。
原価主義と受益者負担
料金改定に当たっての基本方針は「徹底した原価主義」と「受益者負担の明確化」である。細部を無視して大雑把にいえば、たとえば備蓄記念館などの公民館の場合、研修室やホール、会議室などの使用料は、施設全体の維持管理費(駐車場やトイレなど公用部分も含む)を貸出面積で割り、1㎡当たりの単価を決めて査定するという具合だ。この場合の維持管理費は当然人件費や、建物の減価償却費を含む。ミソは施設の稼働率を原価に繰り入れていること。つまり、稼働率が高ければ使用料は高くなり、逆に低いと安くなる。市場原理主義的発想といえよう。
以上は算定の基本で、ただこれを一律に適用するともちろん問題があるので、サービスの中身に応じて負担率に差を設けている(別表)。しかしこれだけみても、値上げ幅はかなり高くなると想定される。
(別表)受益者負担率
・1 利用者が特定される義務的サービス(例 火葬場)受益者負担 25%
・2 広く町民に及ぶが選択的な選択的なサービス(体育施設、研修センター、公民館など) 受益者負担 50%
・3 利用者が特定され、民間と競合するサービス(プール、宿泊施設、幼稚園など) 受益者負担 100%
・4 広範な町民に及ぶ義務的サービス(図書館、道路など)受益者負担 0%
他方、手数料は原則的に100%受益者負担。この場合、もっとも影響があるのはし尿処理手数料(回収業者が処理センターに支払う費用=現在は無料)の有料化。もしこれが汲み取り費用に100%転嫁された場合、相当な額になろう。むろん、使用料を含め50%と上限が決められており、3年ごとに見直しとされているから、段階的な調整にはなろう。
抜けている視点
原価主義や負担率の考え方、市場競争的発想などは、地方自治の将来像を考える上では理解の範囲だ。町民の痛みを伴ったとしても、民間的発想の導入は不可欠と本紙も考える。しかし同時に、答申には決定的な視点が欠けている。それは原価を構成する人件費の固定化であり、サービスの質の評価だ。つまり民間なら当然規定されている人事評価や運営評価を併せて導入しない改定案は、一方的に住民に負担を強いるだけだ。
この点に関しては、「行政評価制度」「人事評価制度」の導入で別途なされているとの反論はあろう。しかし、たとえば人件費は職員の年間平均給与額を前提にしている以上、人事評価と運営コストと連動しない。である限り、行政評価も同じく意味はない。難しいテーマゆえ、そこに踏み込むのは相当の力技が必要だが、「内部管理費の節減に努め」などという一項を付け加えるだけで済まされては片手落ちというものだろう。
もうひとつ、これは杞憂であってほしいが、12号で紹介した猪肉加工場やしんうおのめ温泉荘など町直営の収益事業は、この答申の対象案件から外れているのではないか。12月議会を注視したい。
審議会方式の問題点
もう一点付言しておく。審議に際しては、事務局である町の「使用料・手数料の見直しに関する基本方針」を叩き台にしている。本紙は答申と基本方針の両文書を丹念に比較したが、何のことはない、事務局案がほとんど答申に反映されている。ありていに言えば、値上げをしたい町の意向を審議会を隠れ蓑にして通しただけではないか。審議は3回で終了していることからもその感を否めない(もっともこれは国や県も大同小異)。
本紙が答申の中身で一番納得し難かったのは、幼稚園の園費の100%負担。準義務教育的に機能している幼稚園が、しかも民間もないのに完全受益者負担というのはなかろうと判断し、審議内容を知りたいと考えた。これに対し審議会会長の山田和孝氏は「中立的な立場から町と住民双方の意向を汲むのを原則とした」と断りつつ「原価算定など複雑な仕組みを理解するのがやっとで、事務局案に反論し対案を出す能力も時間も我々にはなかった」と正直に答えてくれた。さもありなん、というしかない。知りたかった園費については類似自治体の額に合わせたようで、「種別分類は明確な線が引けないから矛盾は発生する」(財政課)との弁明。財政課は否定するものの、三位一体に改革による義務教育関連の国庫負担の削減が影響しているとの疑念はぬぐえない。であればモロのしわ寄せを住民が被ることになるからだ。
ともあれ、審議会の実態は以上だ。町の計画を町民に諮問する審議会の存在を否定するつもりはないけれど、その運営に関しては、根本的な見直しが必要ではないか。
具体的な改革プランは持ち合わせていないが、最低、もう少し時間をかけること、諮問ではなく、施策策定の要素を加味することが必要だろう。34もある審議会が同じような中身とすれば、膨大な無駄というしかあるまい。