夢千夜 1000dreams

漱石「夢十夜」へ挑戦する

141夜

2005-07-16 20:36:01 | Weblog
バスの中。混んでいる。私は乗り合わせたボクシング世界ヘビー級チャンピオンラリー・ホームズと世間話をする。バスは海沿いの道を走る。波のしぶきが窓にかかる。沖で鯨が潮を吹いているのが見える。私はホームズと別れ、停留所でバスから降りる。波が私の上にくる。日本画にあるような典型的波しぶきがあがる。私はしぶきを避けるために磯の小屋の中に逃げ込む。スパイの隠れ小屋のような感じだ。隅に小さな机がある。誰もいない。海に向かって大きく広がったガラス窓から海が見渡せる。計器によると現在の外の気温は零下三十四度だ。どうりで吐く息で視界も曇るくらいだったわけだ。体感として寒さを感じなかったのは世界チャンピオンと会って気分が高揚していたせいだ。ボクシングファンの私としてはチャンピオンは神と接近した存在だ。体からアドレナリンがバンバン出て燃えるようだった。私はチャンピオンと別れてしばらくたって急に寒さを感じ出してきた。小屋の中は外と比べれば暖かいはずだが、それでも死にそうに寒い。ここからも見える鯨の潮吹きが馬鹿らしい。助かるためにはここからバス停まで走ってバスに乗り込むしかないが、たぶんバス停にたどり着く前に私は息絶えるだろう。ここには無線機もあるはずだが、私には扱い方がわからない。

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