夢千夜 1000dreams

漱石「夢十夜」へ挑戦する

861夜

2008-08-31 08:41:56 | Weblog
化学の教師が他人が吐いた痰をピンセットでつまみあげ、教室の机に次々となすりつけていく。教師は神妙な顔をしているが、私は耐えられず非難すると、他の教師が「これは正当な化学的実験であり、授業のためにどうしても必要なものだ」と言う。ちょっとすると淡は乾いて、透明な板状になる。それをピンセットではがすと、光を反射して輝く小さな板になる。化学には国語教師の私には窺い知れない神秘があると思う。

860夜

2008-08-30 20:27:38 | Weblog
ジェット旅客機だが、乗っているのは機長と客三人だけである。飛びたって少したったとき、機長は「この飛行機はもうすぐ墜落する。私は今飛び降りるが、ついてこい」と言う。客は半信半疑だが、私は機長のあとについて飛び降りる。パラシュートはないが、「森の上に落ちれば木の枝でバウンドして助かる」と機長は言う。下にカリフラワーのような木が見える。巨大なカリフラワーである。あの上なら大丈夫だと思った瞬間、私の体はカリフラワーの上でバウンドする。カリフラワーの上で何度もバウンドしているうちにバウンドの勢いは減衰し、スムースに地面に着地する。飛行機は墜落して向こうで燃えている。他の客は死んだらしい。機長も無事に地面に降り立っている。飛行機に乗ったら機長の命令は絶対だと私は思う。

859夜

2008-08-27 17:59:07 | Weblog
教室のような部屋。知らない人が私に焼肉をくれると言って箸でつまんだ肉を私の口に入れようとする。私は拒むが、相手は強引に私の口に肉を突きつける。私がものすごい勢いで後じさったために私の体は窓を突き破って空中に飛び出す。私の体は背中を前にして宙を飛んで行く。相手はそれでも諦めず、飛んで行く私の口めがけて箸でつまんだ肉を投げる。肉は一直線に私の口まで飛んできて私の口の中に入る。肉汁がじわっと私の口の中に広がる。美味である。相手は教室の窓から乗り出していくつもいくつも私の口に肉を投げる。私はこんなにうまい肉を拒否した過ちを激しく後悔する。

858夜

2008-08-23 09:40:01 | Weblog
私は椅子に座っている。天井は頭すれすれだが、私が立ち上がれるだけの穴が空いている。穴の外がどんな風になっているのか興味もあり、私が立ち上がると私の頭が巨大なハンマーのようなもので叩かれる。衝撃でまた座ってしまう。しばらくして衝撃も癒える。穴の外がどうなっているのかさっきはまったくわからなかったので、再び外を覗いてみたくなり、立ち上がると再び私の頭が巨大ハンマーで叩きつけられる。どうやら私はモグラたたきのモグラの一つになっているらしい。椅子の周りは狭い壁に囲まれているし、逃げ出すとしたら上の穴からしかない。いつ逃げ出そうかタイミングをはかるが、モグラたたきだとわかるとハンマーが恐くてなかなか立ち上がれない。

857夜

2008-08-21 10:10:25 | Weblog
直径百メートル程度の球体である。私はその表面に立っている。引力が私をしっかり支えている。上には円の内面として地球の光景が映し出されている。はるかに大きな円の内側に私がいる円が含まれているような形である。夜で、地上の明かりによって日本の形がはっきりと映し出されている。日本の形は伸びたり縮んだりする。私が日本人のせいか、日本の姿が大きく見える。今私がいるのは前に私が住んでいた世界とは次元が違う世界である。私はいつもとの世界に戻れるのだろうか。上にある日本に向かってジャンプしてみる。何度もやっていると、たまには私の手が日本の一部に届きそうになる。このままジャンプを続ければいつかは日本に帰れるのだろうか。不安である。

856夜

2008-08-17 16:52:33 | Weblog
コンクリートの道だが、山道は急である。私たちは車で頂上に向かっている。一息で登れないほど急な所に来ると、車は一旦エンジンを止め、ブレーキも外す。車は後ろに落ち始める。そこですかさずエンジンをかけ、クラッチをつなぐ。おそるべき坂道発進である。もしクラッチをつなぐことに失敗したら、車は後ろから奈落の底に落ちる。車の後部と道の端までの距離は二メートルもない。そんな恐るべき坂道発進を何度もくり返し、やっと頂上に着く。車から降りて進むと、草が茂っている向こうに同じような山がある。私がいる山の頂上と、対面の山の頂上との距離は二十メートル程度だろうか。対面の頂上も草が茂っていてそこから銃口が覗いている。ここは北朝鮮との国境だという。銃口は私たちを狙っているらしい。じっと見ていると威嚇射撃がやってくる。一発の弾は私の耳をかすめた。草の向こうは千尋の他に谷である。バランスを失っただけで命も失う。私たちはゆっくりあとずさりするが、威嚇射撃は続いている。

855夜

2008-08-08 10:36:09 | Weblog
十階位のビルが両側にずっと並んでいる通りである。私の部屋はそれらのビルのうちの五階にある。隣は警察署である。前面はガラス張りで私の部屋の窓から見ると、中の様子がすべて見通せる。通りの中、ビルの五階くらいの高さをセスナ機が飛んでいる。紙飛行機のようなふらふらとした飛び方である。なんであんなところにセスナがいるのかなと思ったとき、セスナをちょっと上昇して勢いをつけ、警察署の五階に突入する。セスナ機はガラスの中に飲み込まれる。音もしないし火も上がらない。避難しなければならないというので私は通りに出るが、皆のんびり走っている。

854夜

2008-08-04 12:28:38 | Weblog
電車が急停車する。この電車には爆弾が仕掛けられているので極力早く降車しろとアナウンスがある。さっきは普通の市街地を走っていたのに今はアルプスのような山の中の鉄橋の上だ。はるか下に氷河が見える。何人もの人がロープを伝って下りているが、下の人は点にすら見えない。後ろの人が私にも早く行けと背中を押す。私は恐くてロープがしっかり握れない。指が変に曲がってしまって三本の指でかろうじてロープをつかんだだけだ。そのままスーッとずり落ちる。三本指では不安で仕方がないが、下手に手を動かすと指が外れてしまいそうで、私は三本指の恐怖に耐える。私の体はロープを伝ってどこまでも滑り落ちていく。いつまでたっても氷河までたどりつかない。

853夜

2008-08-01 15:21:54 | Weblog
歩いているだけで体がどんどん右に流されていく。風も吹いていないのに私の体だけが右に流され、真っ直ぐ進んでいるつもりなのに、右斜めにしか進むことができない。私は飛ぶように右に流され、川の縁までくる。階段の手すりのようなガードが続いている川だ。雨で増水し、縁ギリギリまで水がきている。川幅は数十メートルあり、ゆったりと流れているように見えるが、飲み込まれたら命はないだろう。私は右に流される圧力と戦い、ガードに必死でしがみつく。が、ガードを曲げるほどの圧力が私の体を右にもっていく。