夢千夜 1000dreams

漱石「夢十夜」へ挑戦する

95夜

2005-07-16 10:46:09 | Weblog
山の中の温泉。冬。雪は降っていないが、薄く雪が積もった地面は凍っている。夜なのに、地面が光って明るい。道の両側に旅館が並ぶ。旅館も凍りついている。すべてが木造の小さな旅館だ。十m幅ほどの道の両側に、こんな風景が数百mも続く。旅館街の真ん中辺りに駅に折れる道がある。二mくらいの幅しかない、細い道だ。駅への道はアイスバーンだ。おまけに駅へと傾斜している。私は数十mを立ったままスーッと滑って駅に着く。駅は地下にある。地上だと駅舎が凍りついて列車の運行に支障があるからだろう。一m四方の小屋があり、そこから地下に向かって、えんえんと階段が下っている。ビルの十階分くらい下っていくと、そこの改札口がある。改札口の向こうに、一本のホームがある。ここは終着駅で高崎まで二時間でいく。が、終列車は既に出ている。駅は旅館も兼ねている。改札の横に階段があり、さらに三階分くらい下ると、いくつかの部屋が並んでいる。駅自体が暗いが、ここも暗い。始発列車を待つだけだから、宿泊料はただだという。私は部屋の一つにはいる。客はおれ一人らしい。暖房がかかっているふうでもないのに、地下には外の寒さはやってこない。岩をくり抜いたような部屋だが、下には畳が敷いてある。私は自分の家のようにくつろぐ。ここにいれば確実に朝の始発に乗れる。

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