西村 洋の音楽とギター

音楽の持つ繊細、深遠、愛、ギターはこれらを表現しうる力を持っています。でもどうやって?

「魔笛」考

2013-02-23 00:32:14 | Weblog
「魔笛」と言えばモーツァルトのオぺラですが、ここではもちろんソルの魔笛の主題による変奏曲について述べます。
この曲はソルの代表的な傑作というだけでなく、膨大なギター曲の中でもベストテンに入る重要な作品の一つです。

ソルのギター作品は同時代のカルッリ、カルカッシ、ジュリアーニ、アグアードといった作曲家達の中でも抜きんでて優れた作品を残しています。しかしソルといえども全てが傑作とは限らずこれがソルかと思われる様な詰らない曲もたくさんあります。
変奏曲だけに絞って見てもソルは多くの変奏曲を残してます。又幻想曲の2楽章にもいくつかの変奏曲を残しています。これらの作品の中で、鑑賞に価し又私達が演奏の意欲をかきたてる曲の筆頭に挙げられるのが「魔笛~」です。

作品の内容や私の好みにでしいて魔笛以外の変奏曲としてよい物を上げて置きます。

「もしも私が羊歯だったらによる変奏曲」
「小川の岸辺による変奏曲」
ちょっと落ちて「マールボローによる変奏曲」
まあこれら以外の変奏曲は其々いい所もありますが傑作とは言えません。それでもカルカッシや、ジュリアーニの変奏曲よりは優れてはいます。

さて「魔笛」について述べて行きます。
長い作品なので今回は序奏に付いて書き次回は主題、次は第一変奏という感じで進めて行きます。
これだけ名曲であり、又アルハンブラの思い出と並び称されるギターの代表曲で数多くの人が演奏されているにも拘わらず正しく楽譜が見えない演奏が多すぎます。ギタリストの諸君にはより一層研鑽を積んで欲しいと思っています。

ソルの変奏曲の多くは序奏無しで冒頭から主題が始まる物と短いイントロダクション(序奏)付きの物が有ります。
わざとイントロダクションと書いたのは正しい意味を知って戴く為です。
イントロはラテン語の内部という意味です。ダクトが同じくラテン語で導くという意味です。何事も語源を知ることは大切です。即ち序奏というのは、内部(ここでは主題)に導く為の前奏部分という感じになります。

この曲の主題の動機はシーラソソソソ、リズムで言うとタンッタタンです。魔笛の序奏は終始この動機の模倣が何度も出て来ます。13回出て来ます。特にお終いでは各小節に1回計4回も出て来ます。これでもかという感じです。さあいよいよ主題だよ。あの有名なモーツァルトのアリアが出るよ、出るよといった感じです。ちょっと見え透いてます。ソルほどの作曲家ならもっと創意工夫が欲しい所です。

冒頭8小節は目を見張るほど堂々としてます。7小節目のシのユニゾンと2個の前打音の誇らしく鮮度抜群でしかも美しさを感じさせる創りは感動します。ここまではこの曲を聴くものにウムッこれは傑作!と思わせる期待感が一杯になります。所が多分ソルのインスピレーションは、この期待感を超えられなかったのかと思います。以下は常に工夫のない3連音符の連続に終始してしまい、和声も単純、ハッとする様な新鮮さも無く、リズム変化も無くなっています。セゴビアがこの序奏を省いたのはこう言った事からだと思われます。

ただ、だからと言ってこの誠に捨てがたい冒頭部を持った序奏を、全てバッサリ切り捨てるのは酷な話です。多少譜面を直したり、演奏上の工夫でいい曲に持って行きたいと思います。
以下は私の変更例です。参考にしてみて下さい。
10-3,4タイにして2分音符としドミの和音を連続します。
12のラドはシド又はラシド
20の2個目のシから21の3拍目までオクターブ上げる。4拍目から元の通りで22の4拍目と次の1拍目はオクターブ下げる。

楽譜上はこんな感じに変更します。後は、とにかく、よく歌う事です。

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