西村 洋の音楽とギター

音楽の持つ繊細、深遠、愛、ギターはこれらを表現しうる力を持っています。でもどうやって?

良い演奏、悪い演奏(9)

2011-07-26 22:19:30 | Weblog
心の状態~その2~

「ギターを弾かない」というのは、一種の逆説的表現ですが、この言葉と合わせて、「音は出さない」「指は動かさない」というのがあります。
これは私が50年近くギターを勉強して、初めて気が付いた事です。言ってしまえば何でもない事ですが、分かるのに50年もかかってしまいました。もし、あなたが音楽に対して十分な素養、知識、感性が持てるようになったとして、この三つの言葉のようにギターを操る事が出来るなら、必ず不世出のギタリストになれます。

さて心の状態についてもう一つ大切な事に触れます。昔々の事でしたら、免許皆伝になった人だけに与える秘伝みたいなものですが、公開します。演奏の姿勢と心の関係の事です。

まず立って見て下さい。それから右手を(左利きの人は左手かも)万歳をするように空高く付き上げて下さい。(そのとき、Vサインか拳を握るか好きなようにしてね)
目はつぶらず、カッと遠くを射抜く感じです。視線は空の彼方がいいでしょう。

ウルトラマンの気分になりましたか。心は解放感に溢れ、晴れ晴れとし意気揚々として来ましたか。
演奏はこの心の状態が大切です。

で、先程の演奏の姿勢に戻ります。椅子に座っていてもこのウルトラマンの心はたやすく得られると思いますが、ギターを抱え、指板を見るような動作では、なかなか、そういう心の状態は難しいと思います。唯一楽器を持たない歌、声楽だけが体を起こし視線を空の彼方において歌えます。

ギターを弾く姿勢は。どちらかというと前かがみです。他の色々な楽器それぞれ色々な演奏スタイルがありますが、皆ウルトラマンからは程遠いです。(金管楽器、トロンボーンやトランペットは楽器の持ち方ではベストです)かといってこういった基本姿勢は替えられません。

ギターを持つことで無意識に植え付けられた閉塞感や、矮小感を心の持ちようで晴れ晴れとした解放感がある様に替えて行って下さい。姿勢は替えられなくても心は替えられます。無意識に植え付けられたものをはらい落としましょう。心を感じながら少しずつ進めば出来ます



とても大切で実践的な事に触れたと思います。セゴビア存命中はもちろん、亡き後も一人もセゴビアのような又は凌駕する様な演奏家が出ていません。指だけはセゴビアやジョンをはるかに凌ぐギタリストがたくさんいます。ただその奏でる演奏はギターの音は聞こえても音楽は聞こえません。若い音楽家の諸君、一層の奮起を望みます!

良い演奏と悪い演奏(8)

2011-07-20 01:00:54 | Weblog
しばらくこのブログ更新してなかった。毎回楽しみにしていますという意見などを聞いたりして張り切って書いていたら、ここのところ急な仕事が入ったり、暑かったりで、おろそかになってしまいました。お詫び申し上げます。

さて今回は“心の状態”演奏における良し悪しと心の関係、こんな的の絞りにくいテーマではどうしていいか迷います。
そこでこういう気持ちで練習するといいでしょう。と言ったアドバイス的なものを書こうと思います。

心の状態~その1~

結論から書きます。(まるで倒叙推理小説みたい!)

「何かをしようとして、してはいけない。」

いい音を出せたらいいなとか、いい音を出したいと願うのは、いいと思います。でもいい音を出そうと思って練習しても出ません。大きな音を出そうと思うと出ません。上手に弾こうなんて思わない事です。

「才気を誇らず、知恵をひけらかさず、誰からも注目されない。」

当たり前のことです。悪しき心で良い演奏は無理でしょう。

「ギターを弾かない。」

これはいつも私が言っている事です。ピアニストならピアノを弾かないという事です。我々は音楽をするのです。ギターを弾いているうちは音楽になりません。