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菜根譚(さいこんたん)

2019年03月29日 13時12分16秒 | 箴言

              福井県 永平寺 達磨大師

「菜根譚(さいこんたん)」は、洪応明(こうおうめい)が明の時代に書いた随筆集(または思想書、処世哲学書、雑学書)で、菜根譚とは、「菜根は、堅くて筋が多い。これを噛みしめることで真の味わいがわかる」が語源とされている。

書棚にあった久須本文雄氏訳の座右版「菜根譚」を捲ってみた。前集222条、後集134条からなっていて、前集では主として世に出て人に交わり事に応ずる処世の道を説き、後集では主として退隠閑居の悦楽を述べている。              

私利私欲の名利に走って道徳的観念が失われた現代には、簡易素朴な精神生活と処世術、隠退の要領を教える「菜根譚」は、とてもいい刺激になると思う。

儒教思想を根底に、禅仏教に関連したものが多いが、私たち人間の生きる智慧として座右の書としたい。

本書の一部紹介

前集10 得意の時、失意の時

人情は変り易いので、恩恵を蒙っている時は、よく注意しないと、昔から不慮の災害が生じ易い。それ故に、満足して得意になっている時には、「亢竜悔あり」で、よく禅語を顧みて、禍にかからないようにしなければならない。また、失敗を重ねて努力するならば、かえって成功することがある。それ故に、思うようにならない時には、あきらめて投げ出してはいけない。得意の時ほど危険な状態はないので一段と緊張し、失意の時は大いに忍耐すべきである。何事も百折不撓の勇猛心をもって、成し遂げなければならないという覚悟が必要である。

後集2 悠々自適がよい

水際で糸を垂れて魚を釣るのは、いかにも世間離れしていて気楽で風流なようではあるが、でも、生かすも殺すも思いのままである。また、囲碁などは、いかにも上品な遊びのようではあるが、でも、勝負という競争意識をはたらかせている。これでは、両者とも浮世を離れた風流ごととは言えない。それで、これによって見ると、何か事をして楽しむよりは、むしろなるべく事を省くなり少なくなるようにして、何ものにも束縛されないゆったりした静かな生活をする方がまだよい。また、多芸多才であるよりは、むしろ無能無才であっても、自己の本心・本性を失わないようにする方がまだましである。

 



 



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