日々・ひび・ひひっ!

五行歌(一呼吸で読める長さを一行とした五行の歌)に関する話題を中心とした、稲田準子(いなだっち)の日々のこと。

映画「トニー滝谷」

2005年10月01日 | TV・映画などの日々
村上春樹さんの小説「レキシントンの幽霊」にある短編のひとつの映画化。やっとビデオが借りれたと喜ぶ夫と見る。

監督・市川準

この人の作品を、今まで最後まで見たことがなかった。
途中で寝ちゃうのです。

今回も、すんごく、眠くなりました。

でも、この作品に限っては、
頑張れました。

私より見たがっていた夫は、
寝ましたけどね(笑)

     ★

あまり映画という気がしない映画でした。

村上春樹さんの小説の、
プロモーションビデオ、という感じがしました。
(映像的には宮沢りえさんのプロモ?とも思えます)

普通の映画よりも、
シュールな小説並みに、
読み手に意図を委ねた映画でした。

小説の世界にある空気を、
大切に作った作品でした。

     ★

宮沢りえさんは、
本当に素敵な女優さんになったなぁと思いました。

二役してましたが、
印象的だったのは、
主人公トニー滝谷の奥さん役をしている時の宮沢りえさん。

服を綺麗に身にまとうのが、
魅力的な奥さんなのですが、
服を、買う衝動を押さえられない奥さんで、
あっちこっちで、
ブランドの服を買いあさるのですが、

その時の、足の演技。

綺麗な靴を履いて、
その足が、迷うことなく、
お店に向かう時の歩き方。その靴の音。

品が良くって、でも、餓えている感じが、
ものすごく伝わった。

砂漠で水を求めているかのような飢餓感があって、
でも、ガツガツしていない、
迷いのない美しさ。

宮沢さんだけでなく、
靴のスタイリストさん、カメラワーク、
いろんな要素が絡んでいるとは思ったけれど、
でも、中心は、宮沢さん。

トニー滝谷とのナチュラルな日常の笑顔からは、
考えられない餓えを持つ足の演技。

溜息が出ました。

     ★

うん。飢餓感。
この映画のテーマは「飢餓感」かもしれないです。

全然静かでガツガツしていない映画でしたが、
「飢餓感」だと、今思いました(笑)

その「飢餓感」を埋めるものは何か。

トニー滝谷は、奥さんそのもので埋め、
奥さんは、大量の高級ブランドの服で埋めた。

トニー滝谷の父親は、
ジャズを演奏することやレコードで、
埋めた。

奥さんが事故死した時に残った、
高級ブランド服を誰かに来てもらうことでは、
トニー滝谷の「飢餓感」は埋まらなかった。

父親が死んだ時に貰った、
大量のジャズのレコードでも、
埋めることはできなかった。

「人」意外では何も埋める術を持っていない、
トニー滝谷。

「人」で「飢餓感」を埋めるのは、
人の成長において、最初に学習する「最初に見つける手段」なのに、
クリアできていなくって。

そして、「最後の手段」でもあるはずなのに。

     ★

『レキシントンの幽霊』は、
夫が文庫で買っていて、
私は途中まで読んで、理由もなく、
なんとなくやめてしまってて、
『トニー滝谷』まで読み進んでいませんでした。

ですから、夫からの又聞きですが、

この市川さんの映画と、
村上春樹さんの小説では、
最後が微妙に違います。

小説のラストの後に、
ワンエピソード、市川さんは加えています。

私と夫は、市川さんのほうがオチはいいね、と言いました。

市川さんのほうが、
「トニー滝谷」を人として扱った気がしました。

小説を読んでいないので、大きな声ではいえませんが、
村上さんのオチで終わると、
「トニー滝谷」は人と言うよりも、
「孤独のプロトタイプ」という人形っぽい扱いになります。

まぁ、好みなんでしょうけれど。

機会があれば、小説も読んでみようと思いました。

映画は、
ちゃんと見たい方は、
体調が万全の時をオススメします。

ぐっすり寝たいのなら、
それはそれで、
そういう理由で、まぁオススメかな(笑)

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