日々・ひび・ひひっ!

五行歌(一呼吸で読める長さを一行とした五行の歌)に関する話題を中心とした、稲田準子(いなだっち)の日々のこと。

2007年全国大会in阿蘇⑪~雲仙旅行編③~

2007年10月29日 | 五行歌な日々
時間的には、
「みずなし本陣」の次。

山を登って、
仁田峠(の展望台)というところで、
バスは止まった。

大阪で聞いていた
週間天気予報とは違って、
この日の雲仙は不安定な雲行き。
さらに、山の方とあっては。

霧が立ち込めていて、
見下ろしても見下ろしても、白い。

       
       反対に山を見上げてみた。
       「考えてみればこれって、
        雲の中にいるってことと同じなんじゃない?」
       なんて思うと、妙に心がはしゃいだ。


日本画みたいに、美しく濃い霧。

その後、ちょっと行った先の、
妙見岳のロープウェイ乗り場へ。

本当はロープウェイに乗る予定だったんだろうか。
うとうとしてて、話をよく聞いていない(笑)

予定はどうであれ、
その濃い霧のため、
ロープウェイ自体動いていなかった。

外へ出る。

誰かが、気温10℃と言った。寒いはずだ。

が、
そんなことは気にせず、私は霧を満喫した。
霧がめずらしい環境で生きているので、
はしゃぐ気持ちを抑えられない。

       
       ロープウェイ乗り場前の駐車場。
       霧は、いよいよ濃く、手前側しか全く見えない。


そんな話を、
みやげ物屋の軒で、
成り行きでお隣に立っていた、
神島さんとお話していたときだった。

地元の男性に英語で話しかける、
山男姿の外国人がいた。

地元の男性がかなりうとましがっているので、
ついついおせっかいで、近づく。

外国人は、ふたりいたが、
会話係のように、ひとりがずっと話しかけている。

どうやら、妙見岳に登りたいらしい。

インフォメーションを案内しようとしたが、
彼らはすでに話を聞きに行ってて、
ロープウェイが動かないことを知っていた。

だから、徒歩で妙見岳に行きたい。どっちへ行けばいい?
と聞いていたのだ。

この濃霧の中で……?

親切にしたい気持ちと、
「この霧の中で山登りはやめたほうがいいんじゃないの?」
という気持ちがせめぎあう。

多分、神島さんは、
「この霧の中山登りは……」ということを、
英語で話したようだったけど、諦める様子なし。

あぁわからん。英語でどうやって、
私の「やめたほうが……」の気持ちを伝えたらいいのか。

     ★

月ふたつさんも加わって、案内図を見てみると、
妙見岳まで徒歩35分というのがわかった。

しかし、そんなことは知っている、という雰囲気の、
外国人さんふたり。

「妙見岳の登山口を教えてほしいと言っているの、伝わっている?」

という、不安でいっぱいそう。

いやまぁ、伝わっているのは伝わっているんだけどさぁ……。
今一歩、教えてあげたい気持ちになれない。

まさに、心の中まで五里霧中。

が、「危ないよ」という自分の気持ちを伝えるのよりは、
登山口を探すほうが、私に出来ることではあって。

ロープウェイ乗り場横にわき道があったので、行ってみる。
しかし、ふたつの方向を示す標識には
『妙見岳』の文字は記されていない。

「こっちなの?」と言わんばかりの(いや、英語で言ってたかも……)の、
外国人さんに、「そうだそうだ」とうなづきづらい。
確信が持てない。

私は、おみやげ物屋さんの誰かに聞くしかない、と思い、
その場をぴゅーんと走り去る。

後に、楽人さんに、
「そうだったのか。『ちょっと待ってて』ぐらい、
言えばよかったのに」

と言われ、ハッとした。
そう言われてみれば、言ってない。『ウェィト ア ミニッツ』(笑)

とても、不安に陥ったらしい。その外国人さんたちは(笑)

お店の人に聞いて、外に出ると、
外国人さんたちは、
今度は、五行歌の観光バスの前で、
ほしかわさんや、ツアコンの人たちやらと話をしていた。

「わかった。わかった。アンダースタンド」とか、
適当なことを言って、
もう一度、さっきの登山口らしきところへ彼らを連れて行く。

私は歌人というよりも、女優なので(オホホホ・笑)、
演技を始める。

「ストレート」=まっすぐ行って
(歩く振りをする)、
「ネクスト コーナー」=次に角がある
(立ち止まる)、
「セイム ディス」=これと同じ
(そこにある『妙見岳』とは記されていない標識を指差す)
「『妙見岳』 ライト オア レフト」=右か左に『妙見岳』
(『妙見岳』とは記されていない標識を指でラインを引く)
「オー!ライト!」=よし!わかった!
(映画の『金田一シリーズ』によく出てきた、刑事さんの
『よし!わかった』のモノマネをする)
「で、ウォーキング!……OK?」歩く振りをする。

そんなパフォーマンスで、なんとかわかってもらう。伝わった。

彼らは、自分らがフランス人であると言った。

だが、私には、そこまでのヒアリングしかできなかった。

どういう経緯で、それを持っているのか、
説明してくれたけど、よくわからないままうなづいて、
小さな匂い袋(冒頭の写真参照)をもらった。

なんの匂いなのかも教えてくれたけど、なんて言ってるのかわからない。
が、どういう気持ちでそれをくれたのかは、わかった。

「センキュー」と言いながらも、
「いえいえ。このようなものを頂けるほどの事は、なにもしちゃおりやせん」
という恐縮する気持ちを伝えることができない(笑)

私の気持ちがどうであれ、
彼らの気持ちが伝わったことを受け取ったことを示すため、
ふたりに握手を求め、
「ビーケアフリー!」と
「『お気をつけて!』ってこの英語であっているよな……」と
ビクビクしながら手を振った。
彼らは「合ってる。合ってる」みたいな顔をして、手を振り返し、
登山口を歩いていった。

彼らが、どんな事情で、ここにいるのか知らない。
濃い霧だろうが、徒歩だろうが、
極端な話、妙見岳に登るのはこれが一生に一度のチャンスかもしれない。

教えることにためらいを持ちながらも、
結局はそういう
諦めきれない彼らの思いに
突き動かされたのかもしれなかった。

「それでも、行くだけいって、途中で『これはヤバイ』と思ったら、
ちゃんと自分で判断して、すぐに引き換えしてね」

そんな思いを込めての「ビーケアフリー!」だったんだけど、
そこまでは、伝わっていないよな。

     ★

バスに乗って、再び移動。

「『ボンボヤージュ』と言ったら、とても喜んでくれました」
と、隣に座っているほしかわさんは、言った。

あぁ、なんと気のきいた、その言葉。

そういえば、私って、
大学の第二外国語は、フランス語だったよなぁ~。

「だいたいさぁ、こういう濃い霧でも、
『ミスト』でもいいのかなぁ~。そんなのもわかんないもんなぁ。
『フロッグ』っていうのもあったよね~」

なんて、話をして、
(あれ?今一瞬、
なんで『村上春樹』というキーワードが胸によぎったんだ?
という、変な方向へ連想した自分を不思議に思っていたのだが、
そんな私を気にせずに、
「『フロッグ』……」と、考え込むほしかわさん。

「それは『蛙』なのでは?霧は、フォグ?」

「フォグ!!」ア~レ~!!

もし、
「こんなに濃い霧なんだから、山登りはやめたほうがいいのでは?」
見たいな自分の気持ちが言えたとしても、
この発音の悪さから、
「こんなに濃い『蛙』なんだから、山登りはやめたほうがいいのでは?」
と理解されて、ますますややこしくなってたかもしれないと思うと~!!

匂い袋は、いろんな人にかいでもらった結果、
『ラベンダー』だと判明。

今も、かばんの中に入れていて、
開けるたびにその匂いを楽しんでいる。

彼らにとって、『ボンボヤージュ』な旅となっただろうか。
妙見岳まで登れたとしても、登れなかったとしても、
納得のいく旅となっていることを今でも、未だに、祈っている(笑)

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