日々・ひび・ひひっ!

五行歌(一呼吸で読める長さを一行とした五行の歌)に関する話題を中心とした、稲田準子(いなだっち)の日々のこと。

2009年6月の東大阪歌会

2009年06月07日 | 五行歌な日々
遅くなってしまいましたが、
6月の歌会の歌、お披露目。

     ★

         屋根を覆う蔦を
       切っている
       お向いさん
       日差しを受けて
       再生の作業が進む    須賀知子

       白い仮面の
       眼窩から
       吹きあがる
       あぢさゐの
       水色          増田幸三

       今を演じている
       声を
       聞きたくて
       カラーの花は
       耳になる        大瀬良稔子

       「盗まれても責任持ちませんからね」
       盗まれること前提の
       ネガティブ主張を聞き入れて
       どこにも置けない
       傘を置く        稲田準子

       口下手で
       誤解されやすい男のような
       映画である
       不評でも
       駄作と思えない     ほしかわなお

       父に似た人
       歩行器で
       さんぽ
       気づかないふりして
       擦れちがう       大西稚比子


須賀さんの歌は、
何度か、芦屋歌会でお見受けした、
お向かいさんの屋根の蔦の歌。
アンテナに絡まったりしていくのを、
数年にわたって気にしてきたけれど、
ようやく、取り払われて。

増田さんの歌は、
最初、眼窩(がんか)がわからなかったり、
「あぢさゐ」を「あさがお」と間違えて読んでいたりで、
画が全然違っていた(笑)
みなさんは、ちゃんと、吹き上がる「あぢさゐ」をご堪能ください。

大瀬良さんの歌は、
「できるわけないやろ」と思えるようなことを、
部下に命令している人の本当の気持ちに向かって、
カラーの花の耳になって声を聞こうとしている作者。

稲田の歌は、
「盗まれる前から、こういう風に言われるのって、やだな」という、
違和感から。
『責任』という言葉が、
こんなにネガティブな方向にしか使えない世の中って、
例え、これが現実だとしても、
心底嫌だな、と思った。
この、「嫌だな」と思う気持ちを、大切にしたい。
例え、どれだけしんどい思いでも、
表面的には妥協できても、
「そういうもんなんだ」って、安易に片付けたくはない。
抱え続ける力を持ち続けていたいです。

ほしかわさんの歌は、
具体的には『アルフィー』という映画。
不評であることを認めつつも、
駄作だと思えない作者の映画の感想(印象)が、
「口下手で誤解されやすい男」という端的で芯を捉えた表現だったのが、
奥深さを作っているよう。

大西さんの歌は、
90代のおじいさんの歌。
声をかけたい、でも、
きっかけもなく、
どう声をかけていいかわからない。
そんなもどかしさ。

     ★

今回で、東大阪歌会は91回。
8年と9ヶ月……まぁ、9年目だったんだけど。

今回で、店じまいすることにした。

店じまいをする前も、後も、
店じまいすることについて、
いろいろ思いを巡らしたり、
またその思いについて
いろいろ検証したりした。

で、抽象的で、純度が高いところを、
ようやく捕まえたんで(このことについては、後日改めて)、
こうやって、ブログを書く気になれたんだけど。

正直、もっと時間がかかるんじゃないかと思った。
そのくらい、歌会直後の虚脱感はひどかった。

だけど今回、思ったより立ち直りが早いのは、
ある贅沢で、切実な願いが叶ったからだ。

ほとんどの場合は、かなえられない、
「その時」のタイミングと、他でもない「その人」と、
連絡が取れたからだ。

私の場合の、
「その時」の「その人」とは、
白夜ちゃんだった。

     ★

もともと、数日前の仕事中に、
電話をもらっていたというのもあったので、
気持ち的には、私から連絡を取りやすい状況ではあった。

歌会の翌日のお昼、
あんまりご飯も食べれない状況の中、
私は彼女に電話をした。

結局電話がつながったのは、その時ではなく、
夕方のほんの1時間だったのだが。

ほとんど私がしゃべってしまった。
「ぶちまかした」という感じの方が、正しい。

多分、彼女が、同年代で、
歌会の代表さんをしていて、
いろんな理由で、大変だというのが、
よくわかっているから、話し易かったのだろう。

あまりにも自分がしゃべりすぎ、
彼女の話がちゃんと聞けなかったので、
翌日、日帰りで小倉まで行って、
今度は白夜ちゃんの話をちゃんと聞こうと言ったくらいだ。
まぁ向こうの都合もあるので、お断りされたが(笑)

いつかまた、落ち着いたら、
ちゃんと会って、彼女の話を聞きたいと思う。
とりあえず、今は、感謝のしるしだけは示したいので、
お中元を贈ろうかなと思っていたりして(モノかよ!)。

本当に、甘えさせてもらった。

多分、歌会の翌日に、
こんな風に白夜ちゃんと話をしなければ、
少しずつし始めた、
『歌会閉店のお知らせ』に対する、
人々の返信も、
ただ胸に突き刺さるだけに終わっていただろう。

優しい言葉も、励ましの言葉も、いたわりの言葉も、
通り一遍の言葉も全て、
突き刺さるものでしか受け取れなかっただろう。

白夜ちゃんに、吐き出せるだけ吐き出しておいたから、
いつかは多分、他の人々の優しさも、
ありがたく思える日が来るだろう。ぼんやりとそう思っている。

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