発達障害というのは、例えば実年齢は15歳であるのに、ある能力は8歳程度でしかない、
また、ある部分では3~4歳児のような行動をしてしまうということなのではないかと思っています。
15歳、中学三年生くらいになっていればある程度の忍耐力や継続力があるのが普通、
自分の衝動のままに行動することの危険性や反社会的行動の損得などもわかっているはず。
にもかかわらず、3~4歳児のように自分の要求のままに行動してしまうとしたら
それはもう、周囲は大変です。
幼児であれば体力は知れたものですから、オトナであれば押えは効きますが
15歳の体力を伴うとなれば、事件に発展してしまうこともあるでしょう。
昔、公文教室をやっていた頃、確か小学3年生ぐらいの時だったと思うのですが
気に入らないことがあると床に寝転がって泣き叫ぶというコマッタちゃんがいました。
プリントの間違いにミスマークをつけると、その先生の前で
「なんで✕なんかつけるんだよ」と駄々をこねます。
「3+4は8じゃないでしょ」などと✕の理由を説明して納得することもありますが
採点の順番待ちなどで興奮すると、それこそ「買ってぇ、買ってぇ」とお店で泣きわめく幼児のように
教室の床に寝転がって泣きわめくということになります。
最初はびっくりしましたが、幼児のこの手の態度には「無視」が有効なのを思い出して
生徒たちにも先生たちにも、「自分で起き上がるまで知らん顔をしているように」指示しました。
同学年の子達に聞くと、学校でもよくあるそうでした。
うちの教室ではそういう行動をとっても効果がない事がわかってくると、その手の事はなくなりました。
学力の方は6年生での退会時には一応学年相当のレベルはやれていたように思います。
こんなコマッタちゃんを、学年相当のレベルまで進められた理由は
繰り返し学習をさせることができたからにほかなりません。
ご存じのように公文式指導というのは、時間と正答率で進度を決めていきます。
同じプリントを2度3度と繰り返していけば、正答率は上がっていきますから
褒めることができるネタが増えていきます。
コマッタちゃんであればあるほど、普段褒められることが少ないので
「よくできたね」「今日ははやくできたね」などの褒め言葉に敏感です。
「ここ1問だけミスってたよ、惜しかったね」などの励ましも効きます。
人に負けたくない気持ちもあって「駄々こね」につながるので
行き過ぎない程度に競争心を煽ることもありました。
私は本音で言いたいことをズケズケ言う教室運営をしていましたから
たまに生徒を褒める時には、教室の皆に聞こえるように盛大に手放しで褒めます。
反面、よくできる子達はそういう褒められ方をされることは少ないのです。
そのかわり、「次から教室での2回復習はしないで進めるから」とか学習難易度をあげる話をします。
「えーっ、満点がとりにくくなっちゃう」と嘆く振りをするものの、嬉しそうです。
「できると信じている」というこちらの想いがちゃんと伝わっているのでしょう。
発達の遅れている部分については、現在の発達レベルに応じた対応をするのがベストなのですが
学齢では4年生なのに、計算ができないから「+1」からやり直しをさせるというのは
なかなか難しいものです。
学習困難な部分があって学校の授業についていけないとはいえ
感情面では10才並みの感覚をもち、プライドもあるし・・・・・・何より親が、表向きはどうあれ
内心で「そこまでうちの子はアタマが悪いわけではない」と思っている場合がほとんどですから
入会面談などで説明をしても、芯から納得してもらうのが難しく、
そうした親の気持ちは子どもに伝染するので成果が出にくいからです。
ある女の子の場合、この子は発達遅滞というわけではなかったと思いますが
小学校高学年の頃から学校へ行きにくくなり、中一での学校の定期テストで学年最下位だったので
夏休み前に駆け込んできた事例があります。何よりも分数計算が全く分かっていませんでした。
幸いなことに本は好きで国語力はあったので
「足す1」からの特訓に耐え、1年半後には学年順位で真中より少し上ぐらいにまではなりました。
この子の場合、親が本当に困っていて何とかしたいという気持ちが強く
家庭での対応の仕方など、私のお伝えすることを実践していただけたことも成果につながっています。