先日、ある茶の家元の初釜で正客が家元の練った濃茶を
肘をついて飲んでいらしたとの話を伺った。
この作法は「はいぶし」という作法で、
岩佐美代子氏『宮廷文学のひそかな楽しみ』という本に紹介されている。
『枕草子』「五月御精進の頃」
唐絵にかきたる懸盤して物食はせたるを見入るる人もなければ、
家の主「いとひなびたり。かかる所に来ぬる人は、ようせずは主逃げぬばかりなど、責め出だしてこそまゐるべけれ。
むげにかくては、その人ならず」など言ひてとりはやし、
「この下蕨は、手づから摘みつる」など言へば、
「いかでか、さ女官などのやうに、つきなみてはあらむ」など笑へば、
「さらば、取りおろして。例のはひぶしにならはせ給へる御前たちなれば」
とて、まかなひさわぐほどに、「雨降りぬ」と言へば、
いそぎて車に乗るに、「さてこの歌はここにてこそ詠まめ」など言へば、
「さはれ、道にても」など言ひて、みな乗りぬ。
と見られる。
一般には「腹ばいになる」と解釈されてきたのだが、
岩佐氏は古来の目上から頂き物を食べるときの女官の風習として紹介されている。
こちらの本にも出てくるようです。
こういう正客ぶりに出会ったときに「はいぶし」だと気付くのは
なかなか難しいでしょうね。