ダブル ストックは使いよう。
ダブルストックについては、大体肯定派が多いのではないかと思う。
しかし、ストックそのものを否定する人も多い。
脚力を含めて体力がある人はどちらかと言うと
否定論者ではないかとおもうが、
強者ともいえどもいずれ弱者に転落する。
何十年にもわたる登山人生を重ねたいなら、
膝痛にならないためにも、早いうちからシングルあるいは
ダブルストックの使用を勧めたい。
中高年の方には特に薦めたい。
中高年ともなるとバランス感覚の衰えと、
体力の衰えをカバ-する上でダブルストックは欠かせない。
1.ストックでバランスを補う。
試しに「開眼片足立ち」を行って欲しい。30秒以上、
開眼片足立ちが出来れば合格であるが、
さらに開眼でなくて閉眼した場合の片足立ちはどうだろうか。
閉眼片足立ちともなるとなかなか30秒は難しくなるのではないだろうか。
このテストは平衡感覚が正常であるか、
また筋力が衰えているか、のテストであり、
何年かに一度はテストして自らの平衡感覚と筋力のチェツクをしたいものです。
バランス感覚がすでに衰えている人は直ちにダブるストックを使う必要がある。
2.ストックで脚力を補う。
またダブルストックは筋力の衰えを感じている場合で、
登山する際には、脚力を両腕で補うことで、より推進力を得ることが出来る。
まさに両足と両腕で四駆状態で推進力を得ることが出来る。
脚力と腕力を使うことで全身運動にもなり、一挙両得でもある。
3.ダブルストックの長さの調節は常に行う。
使っていて違和感がある場合は、
こまめにストックの長さの調節を行う必要がある。
一般的には登りは短くする。
下りは長くする。
しかし、微調整は常に行い、一番使いやすい長さで使うのがいいだろう。
また、握るところもヘッドをつかんで押し当てるようにして推進力を得るか、
ノルディク スキ-のスケ-ティングに見られようにするか、
あるいは普段はストックの上部を握るか どちらかであるが、
握り方も、握る個ヵ所も常に斜面に対して、握りやすい握り方に変える。
4.冬山で使う。
冬山ではピッケルより、むしろダブルストックの出番が多い。
新雪期でも残雪期でもストックは必携である。
深い新雪ならダブルストックでないと前進は容易でない。
まさにダブルストックの四駆状態で推進することとなる。
ピッケルは堅い雪面では必要となるが、それまではダブルストックの
出番の方が多い。
スノ-シュ-にはダブルストックは欠かせない。
ただダブルストックも使い方次第で、危険な時がある。
岩場では通常ダブルストックもシングルストックもしまい込んで、
手足で岩場に直接触れて登り歩くのは当然である。
ストックをしまわないと岩場では、
ストックが邪魔になって危険な時がある。
また、急下降する狭い幅の山路を下降するときには、ダブルストックを
谷側に突く時、狭いが故に空(くう)をきり、転落の事態を招くことがあり、
充分注意したいものだ。
事例
金副隊長の山岳救助隊日誌 山は本当に危険が一杯
著者/金邦夫/角川学芸出版の
「天祖山の悲劇 Ⅱ」での連続して起きた
遭難二件の遭難者が、天祖山の最後の下りの狭く急下降する登山道でダブ
ルストックを使っていて遭難した事例が紹介されている。
1件目の遭難
「天祖神社の表参道であるハタゴヤ尾根を日原の八丁尾根に
下山中であった。ハタゴヤ尾根の末端から南側の急斜面に付けられた
九十九折れの登山道を八丁橋に下っていたところ、小尾根の稜線で
先頭から2番目を歩いていた遭難者Aさんの足がもつれ、
東側の急斜面を転落いき姿がみえなくなった。」
2件目の遭難
同じ場所で、金副隊長が1件目の遭難救助活動を行っていたときに、
「上の方から男性1名、女性2名のパーティーが下ってきた。
男性が先頭で、ダブルストックの女性は少し後れ気味であった。
私は道を開け、「もう少しで下に着きます。ここから急に
なりますからゆっくり気を付けて下りてください。いいですか、
気を抜かないでくださいよ。」と自分でも少ししつこいかと思うほど
注意を与えた。「わりました、気を付けます」と3人は下りていった。
その直後、ダブルストックの女性は転落し遭難した。
そうして
「この2件の遭難に共通して言えるのは、2人とも登山経験の
長い中高年の女性でてる。
2つのパーティーは、どちらも2日間に渡る縦走で荷も重く、
相当健脚向きのコースであった。」
「ここで私が問題としたいのは、遭難した2人がダブルストック
を使っていたということである。
長期間の縦走などで、私もダブルストックを使うことがある。
登りでは大きな推進力となる。
しかし下りでは、相当なれないとバランスを崩しやすくなる。
疲れてくると、ついストックに頼ってしまう。
とくに急なガレ場、岩場などでは危険が伴う。
これがストックなければ疲れていても自分の両足で下るしかない
から、ゆっくり慎重になる。とっさの時に両手も使える。
賛否両論はあると思うが、私は急な下りでのダブルストック
には賛成できない。」金氏は言う。
私も、天祖山の林道から肩に上がるまでの九十九折れの、
その狭い急な山路をダブルストックで、登り下りした経験があり、
おまりに路が狭く、ダブルストックの突くところが限られていて、
不便を感じたことがあった。
その後、二件の遭難がここで起きている。
この2件の事故では、多分
ストックの突くところが狭くて、
谷側に突いた時、空をきり、
転落したのではないかと推測するものである。
時と所と場合を考えて、ダブルストックを使って
いきたいものである。