
6月12日、深夜1時。
彼は車のハンドルに突っ伏したまま動かないようだった。
表情はよくわからないが、
ハンドルに顔を打ち付け、かけていたメガネの
フレームと割れたレンズが顔に刺さってしまっている。
髪は乱れ、頭からは鮮血が滴り、
ハンドルを伝ってギアレバーの上へ流れ落ちている。
ポタポタという音だけが聞こえる・・。
そこで、背後から物音がした。
車の外へ目を向けると、
近くには一人の怯えた男が立っていた。
目と口が引きつり、薄ら笑いにも似た表情を浮かべた、
これ以上ないくらいの醜悪な男。
手には携帯を持っていたが電話する気配もなく、
ただただ立ち尽くしている。
目はギラギラし、不潔に伸びた髪、しわくちゃのグレーの服、
すべてが軽薄で、すべてが醜い。
どこか別の場所で見かけても嫌悪しただろう。
車のなかの彼に視線を戻す。
しかし彼は相変わらず身動きをしない。
呼吸は・・?
そこで、気にかかる。
「彼は誰なのか?」と。
どこかで・・?
ハッとする。
そうだった。
その「彼」とは誰でもない、
「私」だった。
自分の両手を見ようとする。
しかし、そこには手のひらは無く、空間だけがそこにある。
慌てる。
腕、胸、足を見、顔に触ろうとする。
しかし、何処にも実体が感じられない。
いったい、どういう事なのか?
目の前の「彼」はあんな様子なのに、
この「私」には痛みなど、全くないのだ。
そして知ったのだ。
「痛み」はもはや
通り過ぎてしまったものなのだという事を。
いや、納得などできない。
「自分に不備はなかった!」
「交差点で一時停止を無視して、突っ込んで来たあの男が悪いのだ。」
心でそうはいうが、言葉としては出てこない。
「悪いのは、アイツだってば・・」
それは、もはやむなしい。
言葉にならない感情をまくしたてるだけまくしたてる。
そして、言うのだ。
「もうすぐそこが家なんだよ。帰りたかっただけなんだ」
涙はもう、出てこない。
・・・
そうこうしているうちに、視線が高くなったような気がする。
なんてことだ。
「私」は少しずつ地上からはなれつつある・・。
「おい、嘘だろう?おい」
”一度消えることになったなら、消えなくてはならない”
そこに正も悪もない。
真も偽もない。
ただただ、”ツイてない”という事実が横たわるだけだ。
”一度消えることになったなら、消えなくてはならない”んだよ。
と、誰かが耳元で言った気がする。
自分の耳にはもう触れる事はできないのに、だ。
あの醜悪な男は、引きつった表情だったのに
いつの間にやらヘラヘラしている。
どんどん視界は高くなる。
自分の大事な人たちは寝静まっているだろう。
彼らには、何一つ、
一言だって挨拶もできないまま、
この男を唯一の立会人として、空に、昇っていく。
頼むよ、戻りたい・・。
へへへ、駄目さ。ルールはルール。
守ってもらわなくっちゃなあ。ヘッへ。
”一度消えることになったなら、消えなくてはならない”
また、誰かがささやく。
THE END
・・・
冗談みたいなことが現実に起こるのだ。
この話はフィクションである。
だが、1点を除いたら、”ノン”フィクションとなる。
その1点とは、
幸い、事故に遭った「彼」は消える事も怪我をすることも無く、
無事に家にたどり着けた事だ。
Still Alive。
6月22日、TSA#3で元気に歌い、弾く姿をお見せした通り。
しかし、我が愛する車は全損となり、
まさに身代わりとなった。
でも、これが正しいのだ。
人を車が守る。
これこそが真実。
そうでしょう?
そうだよね?
車選びについて。
燃費やエコ、コストというコトバに気をとられ、
一番大事な「安全」を置き去りにしていないでしょうか?
エコなんて自己満足は、安全に比べたら何の救いにもならない。
いちバンドマンが何を言う、と思うかもしれない。
でも、このブログを読んでいるあなたは
少なくともファズに興味がある人だ。
そして、バンドの音楽を愛するか(もしくは憎むか?)している。
あなたにこんな目に遭って欲しくはない。
持論だが、
軽自動車と「鼻」のない車はやはり危ないと思う。
それにここ数年、ドライバーのマナーは非常に悪化していると感じてます。
「事故を気を付けている」あなたにとって事故は、
「起こすもの」ではなく「起こされるもの」だということを知って欲しい。
また、保険は入っていても、
被害者にとってかなり使えない代物だということが今回わかった。
損でしかない。
まあそこは仕方がない、車は買えばいい。
でも命は買い戻せない。
いざというときに「守れたのに」と
思わなくてはならないのは非常に悔しい事。
自分は勿論のこと、
「愛する人を乗せるに足りる車なのだろうか」と自問を。
大事に考えてくださいね。
nk
彼は車のハンドルに突っ伏したまま動かないようだった。
表情はよくわからないが、
ハンドルに顔を打ち付け、かけていたメガネの
フレームと割れたレンズが顔に刺さってしまっている。
髪は乱れ、頭からは鮮血が滴り、
ハンドルを伝ってギアレバーの上へ流れ落ちている。
ポタポタという音だけが聞こえる・・。
そこで、背後から物音がした。
車の外へ目を向けると、
近くには一人の怯えた男が立っていた。
目と口が引きつり、薄ら笑いにも似た表情を浮かべた、
これ以上ないくらいの醜悪な男。
手には携帯を持っていたが電話する気配もなく、
ただただ立ち尽くしている。
目はギラギラし、不潔に伸びた髪、しわくちゃのグレーの服、
すべてが軽薄で、すべてが醜い。
どこか別の場所で見かけても嫌悪しただろう。
車のなかの彼に視線を戻す。
しかし彼は相変わらず身動きをしない。
呼吸は・・?
そこで、気にかかる。
「彼は誰なのか?」と。
どこかで・・?
ハッとする。
そうだった。
その「彼」とは誰でもない、
「私」だった。
自分の両手を見ようとする。
しかし、そこには手のひらは無く、空間だけがそこにある。
慌てる。
腕、胸、足を見、顔に触ろうとする。
しかし、何処にも実体が感じられない。
いったい、どういう事なのか?
目の前の「彼」はあんな様子なのに、
この「私」には痛みなど、全くないのだ。
そして知ったのだ。
「痛み」はもはや
通り過ぎてしまったものなのだという事を。
いや、納得などできない。
「自分に不備はなかった!」
「交差点で一時停止を無視して、突っ込んで来たあの男が悪いのだ。」
心でそうはいうが、言葉としては出てこない。
「悪いのは、アイツだってば・・」
それは、もはやむなしい。
言葉にならない感情をまくしたてるだけまくしたてる。
そして、言うのだ。
「もうすぐそこが家なんだよ。帰りたかっただけなんだ」
涙はもう、出てこない。
・・・
そうこうしているうちに、視線が高くなったような気がする。
なんてことだ。
「私」は少しずつ地上からはなれつつある・・。
「おい、嘘だろう?おい」
”一度消えることになったなら、消えなくてはならない”
そこに正も悪もない。
真も偽もない。
ただただ、”ツイてない”という事実が横たわるだけだ。
”一度消えることになったなら、消えなくてはならない”んだよ。
と、誰かが耳元で言った気がする。
自分の耳にはもう触れる事はできないのに、だ。
あの醜悪な男は、引きつった表情だったのに
いつの間にやらヘラヘラしている。
どんどん視界は高くなる。
自分の大事な人たちは寝静まっているだろう。
彼らには、何一つ、
一言だって挨拶もできないまま、
この男を唯一の立会人として、空に、昇っていく。
頼むよ、戻りたい・・。
へへへ、駄目さ。ルールはルール。
守ってもらわなくっちゃなあ。ヘッへ。
”一度消えることになったなら、消えなくてはならない”
また、誰かがささやく。
THE END
・・・
冗談みたいなことが現実に起こるのだ。
この話はフィクションである。
だが、1点を除いたら、”ノン”フィクションとなる。
その1点とは、
幸い、事故に遭った「彼」は消える事も怪我をすることも無く、
無事に家にたどり着けた事だ。
Still Alive。
6月22日、TSA#3で元気に歌い、弾く姿をお見せした通り。
しかし、我が愛する車は全損となり、
まさに身代わりとなった。
でも、これが正しいのだ。
人を車が守る。
これこそが真実。
そうでしょう?
そうだよね?
車選びについて。
燃費やエコ、コストというコトバに気をとられ、
一番大事な「安全」を置き去りにしていないでしょうか?
エコなんて自己満足は、安全に比べたら何の救いにもならない。
いちバンドマンが何を言う、と思うかもしれない。
でも、このブログを読んでいるあなたは
少なくともファズに興味がある人だ。
そして、バンドの音楽を愛するか(もしくは憎むか?)している。
あなたにこんな目に遭って欲しくはない。
持論だが、
軽自動車と「鼻」のない車はやはり危ないと思う。
それにここ数年、ドライバーのマナーは非常に悪化していると感じてます。
「事故を気を付けている」あなたにとって事故は、
「起こすもの」ではなく「起こされるもの」だということを知って欲しい。
また、保険は入っていても、
被害者にとってかなり使えない代物だということが今回わかった。
損でしかない。
まあそこは仕方がない、車は買えばいい。
でも命は買い戻せない。
いざというときに「守れたのに」と
思わなくてはならないのは非常に悔しい事。
自分は勿論のこと、
「愛する人を乗せるに足りる車なのだろうか」と自問を。
大事に考えてくださいね。
nk