ふなやすさんの数字と戦う生活

転職と同時にブログタイトルも少々変更ですよ。

夏姫春秋@宮城谷昌光

2005年10月12日 23時41分21秒 | 読書感想文
もはや歴史小説好きなら誰でも知ってるレベルにまでなった宮城谷先生、その宮城谷先生の出世作(夏姫春秋は直木賞作品)です。
ちなみに夏姫春秋(かきしゅうじゅう)と読みます。


さて本文です。
傾国の美女という言葉があります。
古くは夏の妹嬉,殷の妲己,周の褒似、晋の驪姫、夏姫より後の年代になると越の西施、唐代の楊貴妃・・・
このメンツは実際に国を滅ぼし、もしくは滅ぼすように命じられて実際に滅ぼしました。
このメンツの傾国っぷりをそれぞれ一言で言うと
妹嬉・・よく知らない夏の最後の王傑の妻、
妲己・・殷の最後の王の妻、酒池肉林を実際にやらせる
褒似・・笑わない美女、狼煙台の嘘で周の信頼を地に落とす
驪姫・・晋王の妻申生・重耳という優秀な跡継ぎ二人を殺し自分の子を王座に付けるようとするが春秋の覇者重耳を追い出したのが失敗、戻ってきた重耳に殺される。
西施・・夏姫のすぐ後の時代呉の夫差を倒すため臥薪嘗胆をしている越王句践が夫差に送った美女、作られた傾国の美女として名高い
楊貴妃・・いうまでもないと思いますが超大国唐を滅ぼした張本人

一般に傾国の美女と呼ばれるのはこの辺りですが夏姫はちょっとその中でも趣が違う、西施にもいえるが悲しさを持った女性です。
簡単なあらすじですが、小国鄭に生まれた夏姫だが兄の子夷と関係を持ちそれがばれて鄭を追い出される、嫁いだ先の陳を滅ぼしてしまう原因になってしまう、陳王と関係を持った夏姫を憎んだ自分の息子が陳王に反旗を翻し殺してしまう。陳を滅ぼした自分の息子をも殺されてしまう、ほかの傾国の美女にはない悲しさは自分が原因で息子を殺されるという点でしょうか、しかしまだ悲劇は続く、「三年間鳴かない鳥」楚王荘王により夏姫の息子は殺され夏姫自身も楚に連れて行かれる、ここで夏姫は楚の老将と結婚することになるのだが・・・
最後の最後で大逆転が起こる楚の重臣巫臣が夏姫と晋に駆け落ちする
巫臣は楚の大臣候補の一人その一人がすべてを捨てて亡命したのである、夏姫は最後の最後で幸福を手に入れることになる
と言ったあらすじ
美しさゆえの悲しさ、彼女を守ろうとした兄・息子・息子の親友、すべて命を失う、しかし最後の幸せ、悲しみにあふれる小説だからこそ最後の幸せに感動を覚える、文庫本で二冊、長すぎるというほど長いわけでもないが読み答えは十分にある小説です。

さて、巫臣(フシン)のその後ですが晋に亡命後、荘王の没後ですが巫臣の一族はすべて殺されることになります、これに対し巫臣は次の王に「貴方を忙しくしよう」と、いい自分の息子を楚の対抗国呉に送り込みます。巫臣の息子の活躍で呉は力をつけ孫武(兵法書『孫子』の著者)や伍子胥らの活躍により大国楚は滅亡します。
楚もほろびるって・・・ゴメンやっぱり夏姫傾国かも・・・(; ゜ ~゜ )


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夏姫春秋〈上〉

夏姫春秋〈下〉

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