囲碁漂流の記

週末にリアル対局を愉しむアマ有段者が、さまざまな話題を提供します。初二段・上級向け即効上達法あり、懐古趣味の諸事雑観あり

突くなら急所を

2020年12月30日 | 雑観の森/芸術・スポーツ

 

文壇本因坊の著書を孫引きとして その13 の巻】

 

 

急所を突くことを、ついぞ忘れて

後代に醜名を残した浅野内匠頭長矩である。

時は天下泰平の元禄年間、江戸城・松の廊下にて、

梶川与惣衛門と立ち話する吉良上野介の背後から

「宿意あり」と叫んで、小刀で肩を斬りつけた。

上野介が振り向くところを、また眉間を斬った。

ところが刀は烏帽子の針金に当たり、少し傷つけただけ。

梶川に抱き留められ、上野介を取り逃がしてしまう。

 

殿中の刃傷沙汰がどういう重大な結果を招くのか

一時の憤激があっても意識の底にはあっただろう。

家門と家臣の犠牲にしての思い立ちに

相手を逃がすなどはあってはならぬこと。

武士の面目に欠ける痛恨事である。

 

幕末の奥羽戦争で、二本松の少年隊のひとりは

「敵を斬ろうと思うな。刀の切っ先を相手のみぞおちに向け

身体ごとぶつかれ」と教えられて出陣した。

教えを忠実に実行して東軍の隊長を見事倒した。

このあたりは、武士の教えのいろはである。

そのいろはを浅野内匠頭が心得ぬはずはなく、

カッとして、つい忘れたとの解釈に首を傾げる。

 

         ◇

 

どんなに上手く打ち回して、優勢となった碁でも

最後の最後のツメが甘く、うっちゃりを食っては

何もかもを失う。負けは負けである。

勝ち碁を勝ち切ることは、永遠の課題である。

「突くならば急所を」

これは万事にあてはまる言葉であろう。

なんとも怪しい「地域碁会五段格」の漂流男だが

首尾よく棋院免状を頂戴できるよう精進してまいりたい。

 

 

 

 

あさの・ながのり 播磨赤穂藩の第3代藩主。江戸城本丸大廊下(通称・松の廊下)での刃傷沙汰による切腹と改易、それに続く赤穂事件(遺臣たちの吉良邸討ち入り)で知られる。

 

 

 



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